コラム

土づくりが要らない!誰でも美味しい野菜が作れるANSポット栽培の魅力

公開日:2022.02.08

栃木県那須市の株式会社関東農産は、自然豊かな那須地域の良質な土を原料に、自社内の3つの工場で「水稲培土」「有機肥料」「園芸培土」「ANS培地」を製造・販売している培土メーカーだ。中でもANS培地は理想的な根を張らせるために開発した関東農産のオリジナル。透水性と保水性のバランスに優れており、植物の根が一番必要な環境を作り出すことに成功した。
今回は30年以上にわたり根の環境を考え研究し続けてきた関東農産が、独自製造に成功した「ANS培地」とこれを使った「ANSポット栽培システム」について、開発に携わった佐藤さんにお話を伺った。

1.フライパンから生まれた「ANS培地」とは?

△当時:開発の様子



●ANS培地とは?

ANS培地とは、理想的な根の環境を作るために独自開発した『人工団粒構造培地』です。
特徴は、透水性と保水性のバランスが非常に良いこと。作物や生育ステージに応じた養水分管理が可能なことです。
養水分を必要とする作物とそうではない作物がありますが、トマトは水を切りながら栽培できるし、イチゴやキュウリ、ナスのように水分要求率が高いものについては水分量を増やして栽培することができます。
比較実験を見てもらうと大変わかりやすいですが、ANS培地(左)と既存の培地(右)、原料は一緒ですが、透水性と保水性がまったく違います。

※詳しくは記事下にある動画をご覧ください。




その理由は、ANS培地は特殊な製法で団粒構造化をしているからです。団粒といってもただ丸めているだけではありません。たとえば、赤土は単粒構造といって同じ形の物質が丸まっているだけの土。一方ANS培地は、大小様々な粒子が一つの形になっており、顕微鏡で見るとたくさんの穴が開いています。この構造が透水性も保水性もよい理由です。


△イメージ図


同じ原料を混ぜ、比率やバランスを変えたとしても、「保水性」を出すことは非常に難しい。保水性=粒子が水を吸着する力は、原料には含まれていないのです。通常はバーミキュラを混ぜ保水性を出しますが、当社は独自の技術で保水性をもたせることに成功しました。また、乾燥しても繰り返し水を吸うことができ、比重0.2gと超軽量、土壌消毒も雑草防除も不要、これも他にはないANS培地の大きな特徴です。



●ANS培地の開発秘話


△共同開発者:向井さん


ANS培地は、もともとの開発者がいます。その方は手作りで行っていたため、当社が特許を譲り受け、生産設備を作り、困難であった大量生産を成功させました。世界のどこにもない当社だけのオリジナル培地です。
最初は「どんな配合でどんな熱量だったらうまく丸まるのか?」と、フライパンでの手作りから始まりました。団粒化されていく過程のイメージ作りを含め、腱鞘炎になるほど毎日フライパンをふって試作を繰り返し、半年かけて完成しました。次に大量生産に向けてドラム缶を使った実験を開始したのですが、それがとても大変で、生産設備ができるまでに2年かかりました。


△関東農産:自社工場


最も苦労したのは、コストと性能のバランスです。同じ原料(ココピートやゼオライト)でも、国や地域によって種類は様々。それらを取り寄せ、最適な原料を見つけ出すまでに時間がかかりました。また、農家さんに使っていただくためには理想ばかり追いかけて高価なものにはできません。



●自社研究施設




当社には農学博士が2名、修士が3名もいるため、ただ培土を作るだけではなく、理論的に、科学的に考え、作ることができます。
社長の郡司は、慶応大学の工学部に進学しましたが、会社を継ぐにあたり30歳を過ぎてから東北大学の農学部に入学しました。開発への思いがとても強く、ここまで研究施設や設備が整っている培土メーカーは珍しいと思います。

2.誰でも美味しい野菜が作れる「ANSポット栽培システム」


△ANSポット栽培システム



●トマトの栽培からスタート

ANS培地を使った『ANSポット栽培システム』の開発にあたり、品目は「トマト」と決めていました。日本は土地が少ないため、同じ面積の中でたくさん収穫ができる、密植可能なトマトが“これからの時代に合っている”と考えたのです。



●夏場でも「糖度が高いトマト」が栽培できた

自社の実験ほ場で最初に栽培した大玉トマトは、一作目から非常に味のよいものが作れました。もちろん様々な環境要因が影響しますが、根がたくさん張ることで、他の栽培よりもおいしいものが作り易いのです。
トマトの旬である2~5月には甘くて味の濃い、美味しいフルーツトマトが作れますし、夏場でも11~12度の糖度がある非常に美味しいトマトが作れます。たくさんのトマトを試食してきたので、最近では“トマトの顔を見ただけで”味がわかるようになりました。





農家さんによっては、冬場は味にこだわった美味しいトマトを栽培して、夏場のような味がしぼりにくい季節(しぼりすぎると生理障害などが出てしまう)は、水を十分に与え、収量(重量)を重視して販売する方もいらっしゃいます。このように狙った生育にコントロールができるのもこのシステムの特徴です。
既存の培地やロックウールは乾燥すると水を吸わなくなり、上手にコントロールができずに地面が水浸しになってしまうことがあります。しかしANSポット栽培システムは、必要なときに必要な量の潅水ができるのです。



●導入実績

このシステムは、様々な農家さんが導入してくださいました。とくに多いのが、新規就農の方と、長年トマトを作って来たけど連作障害で困っている方。連作障害がでた畑でも、ポットを並べるだけなので同じ場所でトマトの栽培が続けられます。他にも、水稲の空きハウスで何か栽培したいという方も多いですね。


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3.ポット栽培で葉物野菜!?トマトだけじゃない栽培品目

●色々な作物が栽培可能

現在はトマト、ナス、イチゴへの導入実績があります。自社の実験ほ場では、ピーマン、花き、パプリカ、メロン、おくら、唐辛子などを栽培し、成功しています。色々な品目を試してみましたが、今では根菜類以外どんな品目でも栽培できるようになりました。



●地域性に合わせた栽培ができる

新潟県の農家さんは、春と秋にトマトを栽培し、(栽培が終わる)10月からは土を再利用してほうれん草やレタスといった葉物野菜を無加温で栽培しています。普通、冬の時期に新潟でレタスは作れませんから、12月末に出荷するレタスはとても良い値段がつきます。日照が少ない冬の時期でも、独自の栽培方法で上手にブランド化されています。






●「農家に育ててもらった」豊富な栽培知識

私たちは「有機肥料」「ANS培地」「ANSポット栽培システム」を開発する中で、農家の方々に沢山の事を教えていただき、今では栽培指導ができるまでに育てていただきました。 当社の営業担当も研究開発員も、春先はお米の苗も作るし、種まきもするし、田植えもします。とくに社長の郡司は農作業が大好きで、一緒に野菜を植えたり収穫したりしています。

4.環境にやさしい農業で「日本の農業を強くしよう!」





●関東農産のこだわり

私は以前、農業とは関係のない商社で働いていましたが、「一次産業に携わりたい」と思いから農薬会社に転職しました。しかし、社長の郡司に出会い、有機栽培に魅了され「原料はとにかくいいものを使う!安全・安心が一番!米ぬかなど人が食べられるもので肥料を作ろう!」という信念に共感して関東農産に入社しました。
ANSポット栽培システムは土壌消毒が不要です。ハウス内のカビ予防などに農薬は必要ですが、使用量を削減することができます。また、小さなポットの中で、廃液を出さずに肥料と水を完結させているため、他の栽培と比べ“ムダ”がありません。コスト削減はもちろん、 限りある資源を大切にしないといけません。



●今後の展望

昨今の新型コロナウイルスの影響や船の減便により海外原料が輸入しにくく、保水性に必要なバーミキュラも入手が難しい状況が続いています。そこで、当社のANS培地がその代わりにならないかと考えています。原料として各メーカーさんに提供できれば、国内で循環できるようになります。






土耕栽培だとわかりにくい効果も、「ポットの中だと分かり易い」と、色々なメーカーさんが土壌改良材や微生物資材を持ち込んでくださいます。興味をもってくださるメーカーさんがいらっしゃれば、ぜひお声がけいただきたいですね。日本の農業が強くなっていくためには企業同士の協力体制も必要なことだと感じています。農家さんに喜んでいただける結果を出すため、様々なコラボが出来たら嬉しいです。





紹介動画

▲画像をクリックすると動画が再生します。





記事内で紹介されている農機具

   

関東農産(株)


「ANSポット栽培」



   商品詳細はこちら   

今回取材させていただいたのは…

株式会社関東農産 佐藤康久さん
全国各地の現場を飛び回り、“生産者の声を聞く”ことにこだわっている。新しいことへも積極的に挑戦し、「今の時代にあった農業」を追求。「新規就農をされた方も、きちんと生計が立てられるようサポートしなければならない」との言葉は力強く、農業への熱き思いが伝わりました!
●趣味:ゴルフ、スキー
アクティブな性格で、スキーにおいてはインストラクターを育てる指導員資格をもっているという凄腕!

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ライタープロフィール

【施設園芸ドットコム 編集部】
農家さんへのお役立ち情報を配信中!
新しいイベントの企画やコラム記事の執筆、農家さんや企業様の取材を行っています。みなさんに喜んでいただけるような企画を日々考案しています♪









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