コラム

AI(人工知能)×農業ってこんなにすごい!活用事例と未来の農業

公開日:2020.02.25

近年のIT技術の急速な進化に伴い、様々な分野で技術革新が起きています。もちろん農業も例外ではなく、日々新しいテクノロジーの研究が行われています。今回はその中でもAIにフォーカスを当て、農業の未来について考えてみましょう。

1.AI×農業

「スマート農業」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?ロボット技術や情報通信技術を活用し、作業の省力化や精密化を推進する新しい農業のスタイルのことです。日本の農業界は労働力不足や生産者の高齢化が大きな問題となっており、こうした課題を解決する糸口になるのではと期待を集めています。
AI技術の農業への応用は、このスマート農業の中のひとつとして位置づけられています。一般にAIというと「人工知能」のことを指しますが、農業においては「アグリインフォマティクス」という意味合いも持っています。Agri(農業)informatics(情報学・情報処理)からくる言葉で、膨大な量の情報から最適解を導こうとする技術です。
作物の状態や気象条件といったデータをもとに、人工知能とアグリインフォマテイクス両面から課題を分析して最適な解決策を提案するのが、農業におけるAI技術の活用と言えるでしょう。


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2.農業におけるAI技術の活用事例

現在様々な企業や団体が農業におけるAI技術の活用に乗り出しています。ここからは実際の事例やサービスをご紹介します。

AI×ドローン「いろは」

※イメージ画像


空中を自在に飛行しながら撮影を行えるドローンは、AI農業との相性が良いとされています。ドローンの撮影技術とAIの画像解析技術を組み合わせたのが、葉色解析サービス「いろは」です。
これまで、広い圃場を回り作物の生育状況を観察するのは、時間も労力もかかる大変な作業でした。しかし「いろは」であれば、ドローンで圃場を上空から撮影・解析を行うことで、作物の生育状況を短時間で確認できるようになります。

また、撮影した画像データをもとに、収量予測や収穫適期の判別、圃場の高低差診断など様々な有益情報を受け取ることができます。



圃場モニタリングシステム「みどりモニタ」

※イメージ画像


施設園芸と特に相性が良いのが、圃場モニタリングシステム「みどりモニタ」です。温度や湿度はもちろん、日射量やCO2濃度など様々なデータを計測・記録できるシステムです。
日々のデータを記録・蓄積することで、圃場の問題点にいち早く気づくことができます。課題の迅速な解決は、収量や品質維持に直結する重要なポイントです。これまで経験や勘に頼っていた日々の管理作業も、データの見える化によってより高い次元での意思決定に役立つはずです。

また、データはクラウド上に保存されるので、PCやスマートフォンなど、様々なデバイスからアクセスできるのも嬉しいポイントです。同社から展開している圃場管理ツール「みどりノート」と連携することで、その利便性はさらに向上するでしょう。

3.農業×AIのメリットとデメリット

やはり新規で新しい技術を導入する際は、導入コストの問題が付いてまわります。しかし、導入により収量や品質が向上すれば収益アップも期待できるので、検討の余地は十分にあるのではないでしょうか。

4.未来の農業を考える

AI技術は日々進化しています。現在実用化に向けて動き出している「最新のAI技術」についてご紹介します。



Panasonic 「トマト収穫ロボット」

※イメージ画像


パナソニックが現在研究を進めているのが、AIを搭載したトマト収穫ロボットです。農作業の実に2割を占めると言われる、収穫作業の負担を激減させてくれるかもしれません。

収穫ロボットの研究は以前より行われていましたが、茎や葉の陰に隠れた実をロボットがトマトとして認識できないなどの問題がありました。しかしAIを搭載することで、トマトの一部分でもカメラが捉えることができれば、収穫対象として判断できるようになりました。また画像診断の質も向上し、トマトの色味から収穫適期かどうかも判別してくれます。
同社は近い将来の一般への販売を目指しています。収穫は機械が夜間に行い、人間は朝起きて出荷の準備をするだけ。そんな未来がやってくるかもしれませんね。


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静岡大学 「ハッピークオリティ」

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静岡大学が研究を行っているのが、AIによるトマトの自動潅水制御システムです。トマトは適度な水分ストレスを与えることで、高糖度な実を付けることで知られています。その絶妙な水加減はまさに匠の技とも言えるものでしたが、それをAIのデータ分析で実現できるシステムです。 トマトの画像診断と、温度、湿度、明るさなどのデータをもとに、水分ストレスの度合いを判別します。

実験農場ではこのシステムを使うことで、平均糖度8.87のトマトを生産することに成功しています。 このシステムが実用段階に入れば、高品質のトマトを安定的かつ大量に生産することが可能になります。また、このAIシステムと温室システムを連携するなどの汎用性もあり、とても可能性を感じる研究と言えそうです。


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5.まとめ

今回ご紹介した事例はあくまでごく一部にすぎません。AI技術の農業への活用はこれからも急速に進んでいくことでしょう。 未来の農業、ひいては食糧生産のため、こうした新しい技術は上手に利用していきたいですね。



▼参考サイト
〇スマート農業とは、どのような内容のものですか。活用によって期待される効果を教えて下さい,農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/17009/02.html
〇AI(アグリインフォマティクス)農業の展開,農ledge
http://nou-ledge.com/2017/06/20/agri_infomatics/
〇葉色解析サービス「いろは」,株式会社スカイマティクス
https://smx-iroha.com/
〇みどりモニタ,みどりクラウド
https://info.midori-cloud.net/production/monitor/
〇【農業AI注目企業9選】人工知能で農家の働き方改革は実現するか?,Ledge.ai
https://ledge.ai/agriculture_ai/
〇AI農業,TASC MONTHLY,公益財団法人 たばこ総合研究センター
https://www.tasc.or.jp/educate/monthly/article_2/pdf/article_2_1812.pdf

ライタープロフィール

【オオタニ コウスケ】
北海道出身。
酪農経営について学んだ後、大手農業機械メーカーにて勤務しました。現在は機械メーカーで培った経験と知識を元にライターとして活動しています。得意分野は酪農、トラクタ、作業機、噴霧器やポンプに関することです。








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