コラム

施設園芸における環境制御のすすめ~装置導入のメリット・デメリット~

公開日:2020.04.14

無人トラクター、農薬散布ドローンなど、ICTを使った新しい農業の技術は日々進歩しています。そんなICT農業の先駆けといえるのが、ビニールハウス内の環境をコントロールする環境制御装置です。色々な利点がありそうですが、同時にコストもかかるため、導入にあたっては詳しく知っておきたいですよね。

今回の記事では、環境制御装置を導入する際のメリット、デメリットについて解説します。

1.農業の生産性を高める環境制御システム

ビジネスの生産性を高めるためには、①コストを下げる②売り上げを増やす、という2つの方法がありますが、これは農業でも全く同じです。資材費の削減や労働時間の短縮、収量の増加や生産物の品質向上により、規模拡大をせずとも農業の生産性を高めることができます。

資源を上手に使ってランニングコストを下げつつ、収量や質の向上を図る方法の一つが、環境制御装置の導入です。

2.環境制御とは具体的にどんなもの?

環境制御装置は、ビニールハウス内の環境をコントロールすることにより、農業の生産性を高めることを目的として開発されました。具体的には、温度や湿度、日射量などの環境要素をモニタリングし、ハウス内の栽培環境が最適になるよう、換気窓や暖房機、潅水装置、ミスト噴霧器などを作動させます。環境制御がよく用いられている例としては、トマトのハウス栽培が挙げられます。

環境制御をするためには、基礎知識として植物生理を学ぶことが不可欠です。これについては、前回記事でも解説しているのでご覧ください。
※基礎知識や教材として使えるおすすめ書籍などを紹介しています。

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3.環境制御のメリット・デメリットは?

環境制御には多くのメリットがありますが、もちろんデメリットもあります。

メリット↑ ●光合成速度の最大化による収量増

植物の光合成速度は、日射量の強さだけでなく、気温やCO2濃度によっても変化します。これらの要素は環境制御装置を使いコントロールすることで、収量を増加させる理想の光合成速度に近づけることができます。



●資源の効率的な利用によるランニングコスト削減

継続的なモニタリングによって、潅水や液肥の量を過剰に使わずに済みます。また、作業自体も自動化することで人件費を削減することができます。農薬についても、病害の一番の要因となる湿度をコントロールすることで、必要最低限の使用量に抑えることが可能です。



●データの見える化

各種データを測定して蓄積していけるのは、ICT農業ならではの強みです。このデータをもとに、農作業の改善や他者との情報共有、また遠隔での操作も可能になります。


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デメリット↓ ●安くはない導入コスト

ICTシステムは、一般的に高価なものが多いです。値段の幅は広いですが、大がかりなものでは1,000万円以上するものもあります。ICT農業の導入に対する補助金もあるので、うまく使って導入コストを抑えたいですね。



また、一部では環境制御システムの安価な自作キットや、環境制御システムを自作できる方法を紹介した書籍も発売されています。中小規模ハウスでもICT農業ができると話題です。
▷2018年8月発売 書籍「ICT農業の環境制御システム製作」(発行:誠文堂新光社)





導入コストさえうまく抑えることができれば、環境制御にはデメリットを上回るメリットがたくさん期待できそうです。みなさんも是非、検討してみてはいかがでしょうか。

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ライタープロフィール

【内村耕起】
宮崎県の牛農家生まれ。大学院で植物工場での廃棄物利用に関する研究に従事したのち、全国の農家を訪ね歩いてファームステイ。岩手県の自然栽培農家で2年間の農業研修を経て、現在は宮崎県の山間部の村で自給的農業を営む傍ら、ウェブライターなどもしています。








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