コラム
公開日:2025.07.17
施設栽培は作物にとって最適な生育環境をコントロールできるメリットがある一方、ひとたび害虫が侵入すると繁殖しやすくなるため、事前の対策が必須です。この記事では、施設栽培で気をつけたい、代表的な害虫と防除のポイントを解説します。
アブラムシは特に警戒が必要な害虫のひとつです。発生すると被害が広範囲にわたり、深刻化する場合があります。
アブラムシの発生は3月から11月頃までと長く、環境によっては通年発生する場合もあります。春と秋の暖かく、雨の少ない時期に集団発生するため、注意が必要です。 野菜の葉や果実に害を及ぼす吸汁性害虫であり、アブラムシの出す多量の排泄物が「すす病」の発生原因になることもあります。
春先の3月から5月にかけて外部からの飛来が増加するため、早期の侵入防止対策が有効です。0.4mm以下の防虫ネットをハウスの開口部に設置する、黄色粘着シートを設置して侵入をこまめにチェックするなどの対策を実施します。最近ではアブラムシの天敵として飛ばないテントウムシが商品化されるなど、高い防除効果を持つ資材の開発が進んでいます。
コナジラミは高温で乾燥した環境を好みます。薬剤抵抗性やウイルス媒介能力もあり、施設栽培において非常に厄介な害虫です。
コナジラミの中でも施設栽培の強敵といえるオンシツコナジラミは、4月から10月に多く発生します。越冬が可能なため、冬から初夏にかけて発生します。早めの侵入防止対策として防虫ネットやエアカーテン、粘着トラップの利用がおすすめです。
早期発見には、発生密度の低いうちからトラップの利用や葉裏観察を怠らないことが防除につながります。黄色粘着板で発生を定期的にモニタリングすることも有効です。
さまざまな農作物に発生する害虫、アザミウマ。葉や花、果実の組織から汁を吸って植物にダメージを与えます。
アザミウマは温暖な気候と乾燥した環境を好むため、ハウス内では特に春から秋にかけて発生が活発になります。そのため、気温が上がり始める3月頃からの防除が必要です。 また、アザミウマは多くの病原ウイルスを媒介することが知られています。発生密度が高くなってからでは駆除が困難となるため、都道府県の発表する発生予察情報等を参考にほ場をきめ細かく観察し、発生初期に防除しましょう。
薬剤対候性が発達しやすいので、同一系統の連用をさけるなど、薬剤の選定が重要です。
高温で乾燥した環境を好む害虫、ハダニ。葉の裏側に寄生して細胞の汁を吸い、作物に被害を与える生物です。微小なため発見が遅れやすく、気がついたら葉が黄色くなってる場合も。被害が広がると収量や品質に大きな影響を及ぼします。
ハダニ類は例年5月頃に発生する害虫です。10月頃までの高温で乾燥した環境が整うと繁殖を繰り返します。対策には5月頃からの防除が欠かせません。また、暖房設備が整った施設内では冬季も発生する可能性があることに注意が必要です。葉の裏側に白く細かな白点の被害が出始めたら、ハダニ感染を疑いましょう。
ハダニ類の発生対策は、早期発見と湿度管理がカギになります。葉の裏を定期的に観察し、初期の段階で発見できるよう努めましょう。ハウス内を加湿する、葉水を利用するなどの対策が有効です。
ハダニは薬剤抵抗性を持ちやすいため、効果の異なる薬剤でローテーション防除を活用するほか、天敵利用による防除も有効です。カブリダニ類を放飼し、薬剤使用をコントロールすることで生育環境を整えると、捕食によるハダニの防除が可能になります。
施設栽培では、害虫を施設内に侵入させないこと、そしてこまめな観察で異常を早期に発見することが大切になります。また、薬剤に頼るほかにも天敵による捕食を利用するなど、生育環境全体に配慮した複合的防除を心掛けるといった対策が害虫を遠ざけるポイントです。
病害虫発生予察情報は農林水産省のHPで確認できます。毎年の発生時期を確認して、早めの防除で大切な作物を病害虫から守りましょう。
▼参考
〇協友アグリ株式会社,コナジラミ類
https://www.kyoyu-agri.co.jp/GAICHU-ZUKAN/vermin/konazirami.html
〇農研機構, 「旬」の話題,天敵でアブラムシ退治
https://www.naro.go.jp/publicity_report/season/052796.html
〇茨城県, 施設野菜共通-アザミウマ類
https://www.pref.ibaraki.jp/nourinsuisan/nosose/byobo/boujosidou/shiryoshitsu/shiryo-t-azamiuma.html
〇農林水産省, “<w天>防除体系”~薬剤抵抗性が発達しにくい、天敵が主役の新しい果樹のハダニ防除
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kihyo03/gityo/new_tech_cultivar/2020/2020seika-13.html
〇グリーンな栽培体系マニュアル, 天敵を活用したキュウリのハダニ類防除
https://www.pref.nagano.lg.jp/nogi/midori/documents/06-2_naganomanual.pdf
ライタープロフィール
高橋みさと
自然に近い場所を求めて2021年に都内から郊外へ移住。
ライター業をしながら米や野菜づくりを実践しています。
趣味は登山と外遊び。
発酵に興味があり、コンポストを利用して生ごみを捨てない生活にはまっています!