コラム

ハウスの高温対策ができる「外気導入システム」を取材!反収40トンを目指すミニトマト生産者の導入事例を紹介

公開日:2025.08.05

△左)大門商店 専務取締役:大門政紀さん/右)石井ファーム 代表:石井哲也さん

近年農業界でも大きな課題となっている「ハウスの暑さ対策」について取材しました。
今回は千葉県旭市で鉄骨ハウスや農業用ビニールの加工など施設園芸分野の設備工事を得意とする(株)大門商店の大門政紀さんに「コリドーを用いた外気導入システム」について仕組みと効果を教えていただきました。“コストをかけずに今すぐ取り組める方法”も教えていただきましたので、ぜひ参考ください。

1.コリドーを用いた外気導入システムとは?

大門さん:コリドーは直訳すると「通路」や「回廊」という意味になりますが、今回は「空調室」という意味になります。

ハウス内の暖房機をさらに囲ってコリドー(空調室)を作り、暖房機の送風機能を利用して、外気を積極的に取り入れる仕組みです。ハウス側の換気窓を閉じ(下記図左側)、屋外側(下記図右側)の換気窓を開けてハウス内に外気を送ります。

ハウス内の空気が1時間に4回転すると、外気に近い温度になると言われています。

旭市でミニトマトを栽培している篤農家:石井哲也さんのハウスで、実際にコリドーの工事を行いました。石井さんは暖房機だけではなくヒートポンプや炭酸ガス発生機もコリドー内に設置し、暖房機の送風機能を使って均一に炭酸ガスや冷風を送っています。

今回は先進的な取り組みをされている石井さんのハウスをご紹介します。

2.実際にコリドーを導入したミニトマト生産者の石井さんにインタビュー

△石井ファーム 代表:石井哲也さん



コリドーはどのように活用されていますか?

石井さん:越冬作のハウスなので7月後半に定植します。養液栽培なので、翌年6~7月上旬頃まで収穫しています。そのため春から冬までの間、換気をするために使用しています。
外気導入のタイミングは、換気制御盤で外気温が20℃を超えると(換気窓が)開くように設定しています。そのため開閉幅は少しだけ空いている時もあれば、全開のときもあります。時間で設定していることもあるため、たとえば春は昼間だけ換気を行います。

暖房機が外気を吸って、ハウス内に(風を)強制的に送り込んでいるため、上や横など開いている窓から風が抜けていくサイクルを作っています。

コリドーはどこにあるのですか?

石井さん:ここは100mのハウスなので、南と北の両側(妻面)にコリドーを作りました。定植から収穫が終わるまで、年間約350日送風機が稼働しています。

ハウスの平均気温は何度ですか?

石井さん:昨日は28.1℃、今日は28.2℃です。24時間平均は26℃です。
ダクトから出ている風は外気と同じ温度ですが、夜間は冷房を使っているため24時間平均は若干低くなっています。

コリドーを設置したきかっけは何ですか?

石井さん:有名な生産者や企業が取り組んでいるのをみて、自分もやってみようと思いました。3年ほど前に、自作でコリドーを作りました。最初は暖房機だけを囲ってみたのですが、理想とする動作をさせるためには“ちゃんと作ったほうが良さそうだな”と感じたため、ハウスを新築する際にコリドーを設置し、システムを整えました。
暖房機2台、CO2発生機2台、ヒートポンプ2台を設置しています。

CO2発生機も設置したのはなぜですか?

石井さん:もともと暖房の送風機能を使ってCO2(炭酸ガス)を施用していたため、その流れ一緒にコリドー内に設置しました。しかし、実際に外気でCO2を循環させてみると、CO2の粗熱が若干取れて温度が少し下がったので、夏場の施用がしやすくなりました。

暑さ対策として効果はありましたか?

石井さん:このハウス(新築ハウス)はまだ1作目の栽培が終わるところですが、夏の暑さ対策として十分効果があると思います。

3.コリドーの施工条件と”今すぐ取り組める”外気導入の方法

コリドーはどんなハウスでも施工できますか?

大門さん:おおよそどの鉄骨ハウスでも施工可能です。方法次第では既存のハウスでも施工できます。



△既存ハウスへ設置したコリドー


△既存ハウスへ設置したコリドー(内部)



ただし、暖房機が妻面や巻き上げフィルムに近い場所に設置してることが大前提です。

また、暖房機とカーテンの距離を開ける必要があるため、ハウスは高いほうが良いです。石井さんハウスは4mありますが、2m50㎝ほどあれば十分可能と思います。誘引の棚の高さとの兼ね合いもあるため、詳細は施工業者と打ち合わせしてみてください。

工事費用はどれくらいかかりますか?

大門さん:それなりの費用がかかります。もしお金をかけずに始めてみるのであれば、ご自分でフィルムを使って暖房機を覆ってみることだと思います。



石井さん:一番簡単な外気導入の方法は、妻面の換気窓を開けることです。南側の換気窓を開けるとハウス内に風が入ってくるので、その風を暖房機が吸ってハウス内に送れば、外気を循環させることができます。この方法ならお金も一切かかりません。
暖房機を囲うのであれば、パイプとビニールで夏の間だけ暖房機の周りに仕切りを作ればよいのです。冬になって暖房機を使用するときにも簡単に取り外せます。

まだやったことがない方は、まず妻面の換気窓を開けて試してみるのが良いと思います。

石井さん:ただ、突き詰めていくと、外気導入も暖房もどちらも使いたい時が来ます。例えば、夜は少し暖房を回して、日中は外気を入れたい…とか。
細かく管理をしたい、最大限機能を使いたいと思ったら、お金をかけてコリドーを設置するほうが良いと思います。

最後に、今後の目標を教えてください。

石井さん:現在石井ファームの目標は反収40トンです。 今作は曇天が続いたことも影響し、目標にはわずかに及ばず38トンでした。
収穫量を増やすためには設備の拡充も必要だと考えています。同時に、環境に配慮した栽培に取り組むために、化石燃料ではない代替燃料を試験してみたいと思っています。 これからさらに色々試験してみることが楽しみです。

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【施設園芸ドットコム 編集部】
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