コラム
公開日:2021.12.16
農作物を病気や害虫から守り健全な状態で育てるために欠かせない『農薬散布』。しかし作物や農薬の剤型によっては、普通に散布しただけでは作物に薬剤が付着せずに流れ落ちてしまうことがあります。そんな時は薬剤の付着性や浸透性を助ける「展着剤(てんちゃくざい)」を併用してみるのがおすすめです。そこで今回は展着剤の種類や上手な活用方法についてご紹介します。
展着剤は界面活性剤を主成分として作られた農薬の一種で、散布した薬剤が作物に均一に浸透するのを補助する役割を持っています。展着剤は農薬の一種ではありますがそれ自体に
防除効果があるというわけではありません。展着剤の代表的なものとしては、付着性・固着性に優れた「ダインⓇ」、即効性のある「ブレイクスルーⓇ」、農薬の効果を最大限に高める「アプローチⓇBI」といった商品が販売されています。
作物の中には薬剤が付着しやすいものとそうでないものがあり、特に農薬が付着しにくい作物の代表であるキャベツ、ネギ、サトイモ、イネ、ムギなど
濡れ性の悪い作物に散布をする際は展着剤を使用することで農薬の効果をしっかりと発揮することが可能になります。
「一般展着剤」は、最も種類が豊富な展着剤です。作物への付着性、湿展性、懸垂性、濡れ性などを強化するため被膜面を広げる効果は高いのですが、濃度をあげすぎると逆効果になってしまうことがあるため注意が必要です。
「機能性展着剤」は、作物への浸透性、浸達性を強化することで薬液を積極的に浸み込ませることができます。また、病原菌や害虫の細胞といった標的部分に付着しやすくなるといった効果もあります。
「固着性展着剤」は、薬剤の被膜層を厚くすることで作物への付着性を高める効果を持つ展着剤です。主に雨の前に散布する保護殺菌剤や予防剤などに混ぜて使用します。
ここからは、薬液の作り方や使用する際に注意しておきたいポイントを説明します。
①まず始めに、タンクに水を張ります。
②水を張ったタンクに展着剤を入れ、製剤を水中に分散させやすくします。(展着剤の中には最初に入れることを推奨していない製品もあります)
③最後に水和剤を入れます。
乳剤は作物に農薬が付着しやすくなるように乳化剤が添加されているため、展着剤を使用すると作物への付着性が悪くなる可能性があります。
・フロアブル剤フロアブル剤は農薬を微粒子状にして、水に分散をさせた薬剤です。界面活性剤を含んでいるため展着剤を使用する必要がありません。
・使用前に必ずラベルをよく読んでから使用してください。
・展着剤は入れすぎると薬害を起こすことがあるため、希釈倍率などの使用条件や使用上の注意事項を厳守してください。
・農薬の中には展着剤との相性がよくないものもあります。必ずラベルを読んで用法用量を守って使用してください。
展着剤は正しく使えば農薬の効果を上げ作物の品質や収量アップにもつながります。展着剤使用する際は農薬や栽培している作物などに合った製品を選ぶようにしましょう。
▼参考文献
○全国土壌改良資材協議会「農薬の安全で上手な使い方を確認し効果的な防除を行いましょう!」
http://www.akita-furusato.or.jp/einou/pdf/one/25-6.pdf
○「展着剤の役割と使い方」
https://www.akita-furusato.or.jp/einou/pdf/one/29-8.pdf
▼参考サイト
住友化学園芸「展着剤って何ですか?」
https://www.sc-engei.co.jp/qa/y_qa/18.html
ライタープロフィール
かくやさゆり
種苗会社で培った経験と知識を活かしライターとして活動。
家庭菜園とアウトドア遊びが趣味の半農半ライターです。農業を中心にアウトドアをテーマにしたメディアでも執筆中。