コラム
公開日:2018.05.14
ピーマン、トマト、イチゴ等どんな野菜を栽培していても必ずと言っていい程現れるアブラムシ。ハウスだからといって油断禁物。体調数ミリ程のアブラムシの侵入を防ぐことは至難の業です。強い繁殖力を持ち吸汁性害虫の代表格であるアブラムシにかかれば、手塩にかけてきた野菜たちもあっという間にその餌食になってしまいます。
もちろん農薬を使えば簡単に駆除できます。農薬は正しく使えば人にも作物にも安全で病害虫に対して優れた効果を発揮します。間違った使い方による薬害は後を絶たず、そのためか農薬に悪いイメージを持っている消費者も多くいます。また農薬の多用は抵抗性害虫の出現という深刻な問題を抱えており、農薬に頼り切るのは考えようです。
できるだけ農薬を使わずにアブラムシを駆除したいと思う方も多いのではないでしょうか。そんな方におすすめするのがアブラムシの天敵であるテントウムシを使った方法です。
アブラムシが発生する前から放飼することで大量発生を予防し、農薬使用量の削減が期待できます。テントウムシを自分で採ってくるのは大変だしすぐに何処かへ飛んでいってしまうじゃないか、と思った方。ちょっと待ってください。天敵製剤として飛ばないテントウムシが市販されていることをご存じですか?
(国研)農業・食品産業技術総合研究機構によって遺伝的に飛翔能力を欠くナミテントウが開発されました。既に「テントップ」という商品名で販売されており誰でもネット上から簡単に購入することができます。このナミテントウ、1頭で1日あたり100匹以上のアブラムシを食べることもあるほど食欲旺盛です。見た目は普通のナミテントウと変わらず羽ばたかないだけで成虫は翅もありますよ。
【株式会社アグリセクト】
※「テントップ」製剤は、幼虫を封入している商品です。
施設栽培においてアブラムシ虫数密度の1割程度の幼虫を放飼しましょう。
1m2あたり10~13頭の密度になるように放飼しましょう。
どちらの場合も効果を保つには7~10日間隔で数回放飼することが重要です。面倒に感じるかもしれませんが天敵も正しく使わなければ効果は期待できません。この作業さえ終われば勝手にアブラムシをモリモリ食べて増えてくれますよ。
テントウムシ導入後に農薬を使うとテントウムシも死んでしまうこともあるので注意してくださいね。特に、アブラムシへの特効薬的に使われているネオニコチノイド系の農薬や、家庭菜園でおなじみのオルトラン水和剤などは影響が大きいです。各種薬剤の影響は農研機構の飛ばないナミテントウ利用技術マニュアルで確認できますよ。
たかがテントウムシとあなどるなかれ。アブラムシをむしゃむしゃ食べている姿はスカッとするものがありますよ。ぜひ一度試してみてくださいね。
アブラムシの駆除には、今回ご紹介したテントウムシを活用した方法以外にも効果的な方法があります。
※この記事の参考文献
北上達・大久保憲秀 (2004) ナミテントウ及びナナホシテントウによるイチゴのワタアブラムシ防除 第1報 幼虫放飼による防除効果、三重県科学技術振興センター農業研究部報告、30号, 19-24.
農研機構近畿中国四国農業研究センター(平成26年)飛ばないナミテントウ利用技術マニュアル(研究成果集付き)
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。