コラム
公開日:2021.03.17
主食用米の消費減少による米価の下落によって、水田からの転作が農業経営の安定のために重要な課題となっています。かつて減反政策で支給されていた転作奨励金も2018年に廃止されたため、転作する際には、確実に収益があがるように計画する必要があります。そのような中で、市場価格の高い時期に合わせて出荷することができるハウス栽培が注目されています。
ハウス栽培とは、ビニールハウスやガラスハウスなどの施設を利用して農作物を栽培する農業を意味しています。一方、露地栽培は、ハウスなどの施設ではなく、屋外の畑で栽培する方法です。ハウス栽培には次のようなメリットがあります。
露地栽培は、自然に近い状態で栽培するため、生産量は天候や気温、降雨などさまざま環境の影響を受けます。一方、ガラスハウスやビニールハウスを利用したハウス栽培では、温度・湿度・土壌水分量などの条件をある程度コントロールすることができます。
ハウスの中の環境を調整することで、野菜の生産時期を調整することができます。出荷する時期を遅らせる栽培方法を抑制栽培、早めるのを促成栽培といいます。市場での価格が高い時期に合わせて出荷することができれば収益が向上します。
ハウス栽培では、外部の環境から隔てられるため、病害虫が野菜につくのを防ぐことができます。これにより農薬の使用を減らすことができるため、野菜の安全性が高まるうえ、薬剤のコストも減らすことができます。
他にも、機械化による効率化、草刈りの手間の削減、雨の日でも作業ができるなどのメリットもあります。一方で、初期費用がかかる、維持のためのコストや手間がかかる、連作障害が起きやすいなどのデメリットもあります。
野菜の栽培では土づくりや排水対策が重要となります。水田からハウス栽培へ転作する場合、水稲と野菜では求められる土壌特性が大きく異なるため土壌改良が必要となります。
また、畑からハウス栽培へ転作する場合にも、ハウス栽培では施設の初期費用や維持管理費がかかったり、栽培面積が減るため、高収益の作物を栽培しなければなりません。そのため作物の選択肢が限られてしまい、連作障害のリスクが高くなります。連作障害のリスクを下げながら収益性を高めるには、栽培する農作物の種類や品種をしっかりと検討する必要があります。
ハウス栽培へ転作する際、一番ハードルが高いのはビニールハウスやガラスハウスなどの施設を建てる初期費用ではないでしょうか。農水省からは農業関係のさまざま補助金や奨励金が出ていますが、年度ごとに内容が変わるので、その都度情報を確認する必要があります。
今後の補助金の情報については、各都道府県にある農水省の窓口や、都道府県や市町村の農業関係の部署、JAなどに問い合わせてみましょう。
▼参考サイト
〇農地コンシュルジュ
https://no-chi.com/greenhouse-cultivation/
〇セイコーエコロジア
https://ecologia.100nen-kankyo.jp/column/single086.html
ライタープロフィール
【都良TORA(田口 忠臣)】
北海道在住のフリーライター。
6次産業化やグリーンツーリズム、農産加工品開発のコンサルティング・ブランディングを行う仕事をしていたことから、その知識を活かして食や観光・農業に関する記事を書いています。
保有資格:北海道観光マスター、食生活アドバイザー、日本酒ナビゲーターなど