コラム
公開日:2023.08.17
こんにちは、施設園芸.com編集部です!今回は埼玉県入間郡毛呂山町(もろやままち)でマンゴーを栽培している中村さんを取材しました。中村さんが作るマンゴーは「さいたマンゴー」と命名され商標権を取得。栽培したマンゴーの9割は、近隣地域のお客様にご購入され愛されています。
マンゴーは、東南アジアが原産の熱帯地域の作物で、世界三大果物と言われ品種の数は500種類以上とも。日本だと宮崎県や沖縄県などの暖かい地域で多く栽培されていますが、近年関東地域での栽培も広がってきました。
今回は、中村さんに埼玉県でマンゴー栽培を始めた理由と育て方を伺いました。
なぜ埼玉県でマンゴー栽培を始めたのですか?
元々、金融系の企業に勤めていましたが何か形に残る仕事がしたいという思いがあり、考える中で農家を志すようになりました。しかし、実家が農家というわけではなかったので、限られた土地とお金で効率よく稼ぐためにはどうしたらいいのかと考えたときに、人口が多い関東圏で商売をするのがいいと思いその中で、関東ではまだ珍しい作物かつ高単価で売れるマンゴーに着目しました。
また、埼玉でマンゴーを栽培することでブランディングがしやすいと考えたため、埼玉県内で栽培することを選びました。そのため、私が栽培しているマンゴーは「さいたマンゴー」と名付け、商標も取得しています。
新規でマンゴー栽培したいという考えに毛呂山町の方にも共感していただき、ご協力いただけたのでこの地で栽培することを選びました。
マンゴー栽培はどこで学ばれたのですか?
インターネットを使い関東でマンゴー栽培を行っている農家を検索して見つけた農家さんに直接アポイントを取って教えていただいています。マンゴーは樹の生長に合わせた作業が必要なこともあり、師匠に農園に来ていただいて剪定方法など、必要な作業などを学んでいます。
今年で何作目になりますか?
3作目になります。マンゴーは樹になる作物なので、どうしても実がなるまでに時間がかかります。種から栽培すると収穫するまでに6~7年かかるので、私の農園では沖縄からの苗を購入し育てています。苗から育てると1年目はマンゴーを収穫することはできませんが、2年目は1つの樹から2玉ほど収穫できるようになります。3年目の今年は2,000玉収穫予定で、来年は4,000玉の収穫見込みです。
ハウスの大きさや設備を教えてください。
ハウスの大きさは15aです。ビニールハウスのプロであるメーカーにマンゴー仕様とお願いし、マンゴー栽培に適したハウスを建てました。
マンゴーはハウス内の温度が35度以上になると実が日焼けしやすくなったりするなど、品質が低下する可能性が高まります。ハウスの軒高が低いとハウスの中に空気がこもり暑くなりやすいため、ハウスの軒高を高くし空気を循環させ、ハウス内の温度が高くならないようにしています。設備は、暖房機、循環扇、カーテン、潅水などごく一般的な設備しか入れていません。
どんな品種のマンゴーを栽培していますか?
アーウィン種のマンゴー(通称:アップルマンゴー)を栽培しています。ほかにも黄色いマンゴーや、緑のマンゴーなど多くの品種があるのですが、日本では赤いマンゴーが甘くて美味しい良いマンゴーとされているので、アップルマンゴーを栽培しています。
マンゴー栽培の特徴を教えてください。
マンゴーは元々20mぐらいの大きな樹になるので、鉢植えで育てるか地中に柵や杭を入れて根域制限を行い、高く育たないようにします。私の農園では土壌水分をコントロールしやすい鉢植えで栽培しています。
マンゴーは植えてから10年ぐらいで枯れてくる樹が出てきますが、長いと30年経っても現役の樹もあります。
8月(収穫が終わり次第)~9月:誘引作業
10月~12月:潅水量を徐々に減らしてき、樹を休眠状態にする。(最終的には週1回程度の潅水のみ)
1月~2月:休眠状態から起こすために、ハウス内の温度を徐々に上げる
2月~6月:摘果
6月末:収穫用のネットを掛ける
7月~8月:収穫
冬場どのような温度管理をしますか?
マンゴーは5度以下になると樹が枯れる可能性がありますが、私は6度ぐらいまで攻めた温度管理をしています。1月から2月にかけてゆっくり温度を上げて休眠状態から起こしてあげて3月には20度ぐらいで管理します。暖房をつけるのは3月~6月の頭ぐらいまでです。
元々マンゴーは甘く育ちやすいと言われていますが、根域制限を行い根っこに刺激を与え、攻めた温度管理と潅水管理を行うことで、糖度18度~20度の甘いマンゴーが出来ているのかなと思います。(※マンゴーの平均糖度は12度~14度)
どんな病害虫が発生しますか?
害虫だとアザミウマとカイガラムシです。アザミウマはハウスに赤いネットを設置している影響か、今のところ被害は少ないです。カイガラムシは農薬が効かないため手で取るしかなく葉についているものはなんとか駆除しましたが、まだ枝につくタイプのカイガラムシには困っています。
病害はかいよう病という樹が枯れてしまう病気があるため、防除のために“ICボルドー66D”を散布しています。本当はもっとしっかり予防するために計画的に散布する必要がありますが、作業工数の削減のために1回しか散布していません。
なぜ高いところにマンゴーがなっているのですか?
マンゴーの花が生った段階で、“花吊り”という花穂が十分に日光に当たるように紐を使って重なっている部分を吊り上げる作業を行うためです。マンゴーは花の段階から日光に当てないと甘くなくなるといわれているため、できるだけ日光に当てるようにしています。
受粉が進むと小さいマンゴーが出来てくるので形のいいものを探してそれ以外を摘果していき、最終的に1つか2つにします。実が生り始めてからも“実吊り”という作業を行い、常に日光に当たるようにしています。
マンゴーはどのように収穫するのですか?
マンゴーの実が大きくなってくる6月下旬ごろにネットを掛け、赤く完熟したら自動でネットの中に落ちるので、その落ちたマンゴーを回収します。ネットの中で落ちているマンゴーを回収するだけなので半自動で収穫ができ、非常に楽です。
さいたマンゴーはどんな方が購入されますか?
元々は、東京や川越、大宮などの人口が多い地域で販売しようと考えていたのですが、9割が毛呂山町、坂戸市などの近隣地域の方々に購入いただいています。販売する7月~8月の間に何回も購入してくださるリピーターの方も多くいて嬉しい限りです。
今後の目標を教えてください。
今はアップルマンゴーしか栽培していないので、今後は他の品種も試験的に栽培してみる予定です。
有難いことにさいたマンゴーは毛呂山町とその周辺の地域では認知度が高まり、購入していただけることが増えてきました。これからも地道に宣伝活動を行いながら埼玉県全体や関東圏での認知度を高めていきたいです。
また、6次化にも挑戦しようと考えています。マンゴーは生で食べた方が美味しいと思うので、タルトやパフェなどに加工し販売してみたいです。
※2023年度の販売は終了しました。
今回取材させていただいたのは…
さいたマンゴー 園主:中村 奨平さん
元証券マンという経験を生かし、常に「いかに楽して稼ぐか」を考えながらマンゴー栽培に日々取り組む。
遠隔管理システムを活用し、天気や温度、日射の状況を見極めてハウスの環境を管理している。
目指すは埼玉で1番有名なフルーツブランド!
趣味:X(Twitter)、漫画を読むこと、Jリーグ観戦
ライタープロフィール
【施設園芸ドットコム 編集部】
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新しいイベントの企画やコラム記事の執筆、農家さんや企業様の取材を行っています。みなさんに喜んでいただけるような企画を日々考案しています♪