コラム
公開日:2021.06.16
「ココピート」とは、ココヤシの実(ココナッツ)の殻である「ヤシ殻」を発酵・粉砕して作られる有機培土のこと。ブロックのように圧縮された状態で販売されているため、水をかけて膨張させ、やわらかくほぐしてから使用します。軽くて扱いやすい等の優れた特性から近年人気が高まっており、ホームセンターや園芸資材店で見かけることも多くなりました。
この記事では、そんなココピートの特徴と使い方について、わかりやすく解説します。
ココピートの粒子は、表面にたくさんの細かい穴が空いた多孔質構造。作物の生育に必要な水分を保持しつつ、余分な水分はしっかりと排出してくれる、水持ちと水はけのよさを兼ね備えた培土です。空気と水分のバランスがとれた、作物にとって最適な土壌状態を保つことができます。
同じくヤシ殻から作られるベラボンも同様の特性を持っていますが、こちらはココピートより大きめの粒子やチップに加工された製品で、主に観葉植物やガーデニングに使用されています。
製品によって多少の差はありますが、ココピートの酸度はpH5.5~7.0程度とされています。多くの作物が好む弱酸性~中性の範囲なので、pHを調整する必要がなく、そのまま使用することができます。ココピートと同様に軽い園芸培土として知られるピートモスは、pH4.0前後の酸性。そのため、多くの場合アルカリ性の資材で酸度を調整する必要があります。
ココピートは、通常は捨てられてしまうヤシ殻から作られたサステイナブルな培土です。虫が大量に発生する等の問題がなければ繰り返し使うことができるだけでなく、培土として使用した後も土壌改良材や堆肥として再利用することができます。
採掘時の環境への影響が懸念されているピートモスや、使用後は産業廃棄物として処理されるロックウールに比べて、より環境に配慮した培土といえます。
ココピートは、トマト・パプリカ・いちご・きゅうりなどの養液栽培の培地として多く利用されています。そのまま隔離(ベッド)栽培に使える、ビニールバッグ入りのココピート製品も比較的低価格でお手軽です。このほか、レタスなどの各種野菜、マンゴーやブルーベリーをはじめとする果樹など、幅広い作物の育苗用や栽培用の培養土に配合されています。使用時には、ココピートの粒子の大きさやヤシ殻繊維の配合量などをチェックして、栽培する作物や用途に適したものを選択することが重要です。
ココピートは、天然素材ゆえに、製品よって品質のばらつきが見られることが欠点です。製造工程や塩分濃度などの成分がきちんと管理されたものを選ぶように心がけましょう。
以上、有機培土のココピートについてご紹介しました。さまざまな作物の栽培で活躍する便利な資材なので、ぜひ使ってみてください。
▼参考文献
○ヤシ殻(ココピート)のビジネスモデルの概要,公益財団法人 国際緑化推進センター
https://jifpro.or.jp/bfpro/wp-content/uploads/2016/06/business-model_cocos.pdf
▼参考サイト
○日本地工株式会社
https://www.chiko.co.jp/
○株式会社トップ
http://www.cocopeat.co.jp/index.html
○ココカラ合同会社
https://cococara.jp/
ライタープロフィール
【にっく】
農業研究所の研究員として日本全国を飛び回ったり、アフリカ・東南アジアで農業技術普及プロジェクトに携わったり…国内外の農業に関わってきた経験を持つ農学博士です。圃場作業で汗を流すのが大好き。これまでの経験と知識を生かして、わかりやすい記事をお届けします!