コラム

アザミウマの見分けるポイントとは?【図解付き】

公開日:2018.06.15

1.小さすぎ!種名が分からず全部「○○アザミウマ」

アザミウマの被害を発見!葉の付け根や花弁に潜っていたアザミウマの捕獲も完了!さあ一刻も早く駆除しよう!!と思ったその時に。そのアザミウマの種名、わかりますか?肉眼では小さすぎてほぼ無理ですよね。顕微鏡や遺伝子解析をすれば確実ですが現実的には難しいことも多いですよね。

2.種名不明では効果的な防除もできやしない

名前が分からなければ効果的な対策を取ることができません。特に農薬を使う場合は種によって抵抗性が異なるので種名が分からなければ効果的な農薬の選択ができません。もちろん複数の種に効くものもありますが、同じものばかり繰り返し使うことは抵抗性の発達に直結してしまいます。
そこで今回は主要なアザミウマ5種類(ミナミキイロアザミウマ、ネギアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ、ヒラズハナアザミウマ、チャノキイロアザミウマ)について、図を交えながらルーペや拡大鏡程度の観察でわかる見分け方を紹介したいと思います。顕微鏡観察に比べると正確性は劣りますが誰でも容易にできることが最大の利点です。

3.君は何アザミウマ?ルーペで見分けてみましょうか

準備

  • 植物に袋を被せ、袋ごと植物を数回たたいてアザミウマを採取する。
  • 採取したアザミウマを観察しやすいようにアルコールで殺虫したり、透明の粘着テープ上に固定したりする。
  • 倍率が20倍程度のルーペか拡大鏡を準備する。
  • 0~2mmの長さがわかる物差しを準備する。
  • 淡黄色、黄色、黄土色、黄褐色、褐色、茶褐色、黒褐色の色見本を用意するか頭に入れておく。

(■の色は大体で厳密ではありません)




1. 成虫を探す(図1)

卵や蛹、幼虫は見分けに適さないので図1を参考に成虫を探す。




2. 雌成虫を探す(図2)

雄成虫は見分けに適さないので図2を参考に雌成虫を探す。
雌成虫は産卵管があるために腹部が太く、腹部先端がとがっている。
雄成虫は腹部が細長く、光に透かすと赤~橙色をしたU字型の精巣が見える。




3. 体の大きさを比較する(図3)

チャノキイロは0.8~1.0mmと小さい。
ミカンキイロやヒラズハナは1.3~1.7mmと大きい。
ネギアザミウマは1.1~1.6mm、ミナミキイロは1.2~1.4mmと中くらい。




4. 体の色を比較する(図3)

ヒラズハナは褐色~黒褐色。
ミナミキイロとチャノキイロは強い黄色。
ミカンキイロは夏の高温期は黄土色、冬の低温期は茶褐色。
ネギアザミウマは夏の高温期は淡黄色~黄褐色、冬の低温期は褐色。




5. 翅の色を比較する(図3)

チャノキイロとミナミキイロは翅をたたんだ時に合わせ目が背中の黒い筋に見える。
チャノキイロは翅全体が黒い。
ミナミキイロは翅の毛が黒い。



この方法で冬のミカンキイロとヒラズハナ以外を見分けることができますよ。(これらを見分けるには50~100倍程度の実態顕微鏡で複眼後方の毛の長さを比べ、毛が長ければミカンキイロ、短ければヒラズハナとわかります。)

これだけでは不安という場合は、作物ごとの加害部位や症状が種によって異なるのでそれら加害状況を併せることで更に正確な種の判定ができます。詳しくは参考文献のアザミウマ防除ハンドブックを参照してくださいね。
慣れないうちは自分の判定結果が正しいか専門家に聞いたりインターネット上の写真と照らし合わせたりすることも重要です。経験を積むことで言葉では表せない、自分なりのアザミウマの判定基準が確立されていきますよ。



ライタープロフィール

【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。








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