コラム
公開日:2018.07.20
施設園芸と露地栽培、野菜を作るならどちらが良いでしょうか。
植物生理だけで見れば、施設園芸が有利です。施設園芸の方がより手間をかけ、作物に適した環境を提供することができます。しかし、施設費をかけても儲からない作物もあるため、そのような作物は露地栽培向きといえるでしょう。
ここでは経営的な視点も含めて、施設園芸と露地栽培のどちらが良いのか比較します。
施設園芸とは、ビニールハウスやガラスハウスなどの施設の中で栽培する方法です。
温度などの栽培条件を人為的に操作できるため、夏の野菜を冬に作ることもできます。露地栽培と比較して、一般的に資本集約的・労働集約的な経営がなされることが多いのも特徴です。
ハウス建設費用や設備費用が多額になる上、露地栽培と比較して「手間をかける」ことで収穫量を増やすため、単位面積あたりに必要な労働力が多いというデメリットがあります。
露地栽培とは、ビニールハウスなどを用いず露天の畑で作物を栽培する方法です。
施設園芸とは反対にハウスの建設費用や運用費がかからないため、広い耕作地があればコストをかけず大規模な栽培をすることができます。
しかし、露天で栽培するため季節に合わせた作型となり、収穫時期の調整は限られます。また、天候によって収穫量が大きく左右されるデメリットがあります。
切り花向けの花卉栽培は、”見た目が全て”と言ってよい作物です。露地で雨風に打たれて栽培するよりも施設内で栽培する方が、圧倒的に見た目が良く単価も高くなるため、一般的には施設園芸で栽培されます。
見た目も含めた品質が重要なトマト、いちご、メロン、ピーマン、キュウリ、ナス、スイカ等の作物は一般的に施設園芸で作られることが多いです。
一般的に施設園芸で栽培される品種は青果として販売されますが、加工を前提とした品種(カット用キャベツや漬物用白菜など)を栽培する場合は、広い土地で露地栽培が行われます。青果用と比較して加工向きの品種は安く大量に必要とされるため施設で栽培しても採算が取れなくなるためです。つまり、大量に必要とされる野菜で単価の低い作物は露地で栽培しなければ採算が合いません。
大根、じゃがいも、人参、キャベツやほうれん草などの葉物野菜、玉葱、ブロッコリー等は一般的に露地で栽培されています。
イメージとしては、「少量or大量で高単価」が施設園芸、「大量で低単価」が露地栽培です。
施設園芸と露地栽培、野菜を作るならどちらが良いかは作物と品種によって決まります。市場や小売店で単価の低い野菜は安く大量に求められるため、広い面積で露地栽培を行う方が良いです。逆に単価の高い野菜は見た目を含めた品質の良いものが求められるため、施設園芸が向いているでしょう。
ライタープロフィール
【uen01】
1反のハウスで夏秋ミニトマトの養液栽培(不織布ポットを利用した少量培地栽培)を行なっています。
元営農指導員のベテラン農家指導のもと、様々な実証実験を行いながら生産しております。元金融マンというバックグラウンドを生かして、数字に基づいた栽培及び経営を行なっています。