コラム
公開日:2024.05.02
ビニールハウスでは、カラスなどの野鳥類による損傷が問題になっています。屋根に軟質フィルムを張っていることが多いため、カラスなどの野鳥が屋根に止まったときに、足爪やくちばしでフィルムに穴を開けられやすいのです。この記事では、鳥害に困っている農家さん向けに有効なカラス対策をご紹介します。
カラスは日本全国の市街地や山地に生息する鳥です。行動範囲が半径10kmほどで、食べ物を探して広範囲を移動します。雑食性で、植物性の食べ物と動物性の食べ物をどちらも食べます。知能が高く、特に視覚が優れているのが特徴です。
カラスによる農作物被害は、野生鳥類の中では最も多く、令和3年度の調査結果では1.6千haあたり13億万円以上の被害が出ています。カラスにビニールハウスが破られると、フィルムの張り替えに資材費と労力がかかります。張り替えせずに放置すれば、ビニールハウスの保温性が下がり、作物の生育環境が悪くなる可能性があります。また雨天時は雨漏りの原因となるため、病気などが広がるリスクが高まります。
ビニールハウスのカラス対策では、カラスを寄せ付けないことが大切です。これまで行われてきた3つの対策法を紹介します。
カラスを寄せ付けない環境を整える対策です。収穫時の残渣やゴミなどを放置すると、エサを求めてカラスが集まってくるため、残渣などは片付けましょう。
音の出るグッズや、光で警戒させる道具などを使い、カラスを脅して近寄らせなくする方法です。タカのカイトや目玉など、さまざまなカラス避けグッズが販売されています。安価で手に入りやすく、手軽に利用しやすい点がメリットです。一方で知能が高いカラスはすぐに危険がないと判断できるため、一時的な対策でしか使えないのが難点です。
侵入防止策とは、テグスやワイヤーを使用して、物理的に鳥を止めないようにする方法です。設置の手間や費用は多少かかりますが、物理的にカラスを寄せつけない方法として有効です。張り巡らされたテグスはカラスから見えづらく、翼に触れると恐怖を感じて寄り付きません。学習能力が高いカラスは、一度恐怖を感じると飛来しない傾向にあります。
ビニールハウスのカラス対策には、テグスやワイヤーを使った侵入防止策がもっとも有効です。数ある商品のなかでも、今「テグス君」に注目が集まっています。
その理由は、実証試験で高い効果が出ているからです。「テグス君」を設置したビニールハウスは、設置していない場合と比べて、損傷した穴の個数が9割も減少しました。さらに穴のサイズも小さくなったので、ビニールハウスのカラス対策に困っている農家にとって、劇的な効果が期待できます。
※ただし、ハウスの大きさが、間口20 m以上、棟高3.5 m以上になると、効果が落ちる可能性があるので注意しましょう。
「テグス君」は、自分たちで設置しやすいこと、設置後の管理がほとんど無いことが魅力です。
現地検証では設置後2年間で張り直し等のメンテナンスが発生していないとの結果が出ています。
弾性ポールや直管パイプなどを使って、釣り用の透明テグスをハウスの上から30cm程度の高さにジグザグに張っていきます。
※地上だけの作業で張れるため、高所作業は必要ありません。
※2人で行う場合、作業時間は1.5時間ほどが目安です。
ビニールハウスのカラス対策は、餌となるゴミなどを放置せず、寄せつけないことが大切です。その上で、屋根に止まらせないようしっかりとカラス対策を施して、ビニールハウスを鳥害から守りましょう。
▼参考サイト
〇愛知県,鳥獣害対策スペシャル,知ってとくとくカラス対策
https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/389789.pdf
〇農林水産省,野生鳥獣による農作物被害の推移(鳥獣種類別)
https://www.maff.go.jp/j/press/nousin/tyozyu/attach/pdf/221202-2.pdf
〇農研機構, ビニールハウスのカラス対策「ハウスにテグス君」標準作業手順書
https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/laboratory/naro/sop/160828.html
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【施設園芸ドットコム 編集部】
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