コラム
公開日:2024.08.29
こんにちは、施設園芸ドットコム編集部です!2024年7月24日~26日に東京ビックサイトで開催された「施設園芸・植物工場展GPEC」を取材しました!
施設園芸、植物工場に特化した唯一の展示会であるGPECは今回で8回目。今年は、施設園芸・植物工場展と同時にスマートアグリジャパン~スマート農業機器・技術展~、アクアポニックス・陸上養殖設備展も同時に開催され190を超える企業・団体が集結しました。
今年も、編集部が注目した出展商品をご紹介していきます。展示会に行けた方も、行けなかった方もぜひ本記事で最新情報をチェックしてみてください。
目次
有光工業株式会社のブースでは、常温煙霧機や静電ノズルといった農薬散布機器が出展されていました。農薬散布は時間と手間がかかる作業のため、省力化したいと思っている農家さんが多いと思います。
今回編集部が注目したのは新商品の常温煙霧機「FNLV7」です。
常温煙霧機といえば同社の「ハウススプレー」が有名ですが、大規模ハウス向けの商品でした。新型の「FNLV7」はハウスに設置している循環扇の風を利用してハウス内全体に農薬を循環させることができます。単相100Vの家庭用コンセントで使用でき、より導入しやすくなりました。
制御ボックス内のタイマーで散布時間を設定するため、農薬散布の手間や時間を削減できます。また、ハウスの大きさに合わせて最大3つまで(21a)増設できるのも嬉しいポイント。
手散布と常温煙霧機を比較した結果によると、「葉表への付着量」は手散布のほうが多かったが、「葉裏への付着量」、ベト病(きゅうり)での「防除果」共に常温煙霧機のほうが多かった。何より「省力効果」は、約12時間(計8回散布)の作業時間を削減することができた、とのことです。
散布できるの農薬は農薬取締法に準拠した「登録農薬」のみ。近年は登録農薬数が増えたことで、農薬散布機の導入が進んでいます。 より手軽に導入することができるようになった農薬散布機で、散布作業の省力化・無人化を目指してみてはいかがでしょうか。
サンホープのブースでは「日本初上陸!」の文字が目立つ最新のクラウド型かん水コントローラ「GALILEO CLOUD」に注目しました。潅水だけではなく窓の開閉や液肥の制御、暖房、CO2、冷却システムなども制御可能な、イスラエル製の複合環境制御装置です。フィルター洗浄機能も搭載されています。 この1台でハウスの環境制御ができる点が大きなメリットです。
他にも、ハウスの暑さ対策資材として「屋根散水」が注目されていました。
ヤンマーのブースで注目したのは自動供給付き光センサー選果機「スマートソーター」です。光センサーとカメラで糖度とサイズを測定し、選別します。果実(トマト含む)は光を吸収する作用があるため、透過されて残った光量を測定するのです。
他にも、酸度・熟度・内部障害を識別し、その情報をもとに糖度・果径・等級・階級・排果を数値化し、画面に表示させます。
会場ではミニトマトの選果を実演。高速で流れるミニトマトはテンポよく糖度(等級)・果経(階級)ごとに分別されていました。選別能力はなんと最大約200kg/時(平均20g/個の場合)高糖度ミニトマト・ミディトマト生産者におすすめです。(その他温州系のみかんも対象)選別作業の省力化が目指せます。
他にも、イチゴの暑さ対策資材として自社オリジナルの高温対策装置「断熱送風栽培槽DN-1」が注目されていました。
スナオ電気のブースでは、多くの来場者が足を止め注目していたナノバブル発生装置「FU11 型」を取材しました。
土中は深くなるほど酸素が無くなってしまうため、奥深くまで酸素を供給できるように、水の力を使って空気層を作ります。すると微生物が活性化できる環境が作れるため、土が柔らかくなり、根張りが良くなります。
また、ナノバブルのマイナス因子と(液肥など)根から吸収する栄養素のプラス因子が吸着して養分の吸収率が上がるため、収量や品質の向上が見込めます。
実際に使用したきゅうり生産者からは「生育が早くなった」「曲がりが少ない」といった声が届くなど、品質向上の実績もあるそうです。
4年ほど前、スナオ電気は自社の潅水タイマーと組み合わせることができる“水に関連する装置”を探していたところ、シャワーヘッドのCMでも一世を風靡した「ナノバブル」に注目しました。
設置のしやすさや価格帯など、農家が導入しやすい条件がそろったナノバブル発生装置を見つけ、自社で2年以上実証試験を行い、効果があると確信できたことで、今年5月から発売を開始。今回が初展示となりました。
水中の溶存酸素を上げることができるナノバブル発生装置は、農業分野だけではなく海洋生物やエビの養殖など様々な分野で注目されています。
GPEC初出展の株式会社いと が展示していたのは、有機活性乳酸「LACTy(ラクティ)」を使ったナノバブル発生装置やハンドスプレーです。
LACTyはトウモロコシなどの穀物を発酵させた乳酸から作られた植物由来の成分で出来ており、長年サプリメント食品として愛用されていました。これを植物に使用すると、農薬や化成肥料をなるべく使わずに病気やカビの対策ができます。さらに、「超微細バブル生成装置」と組み合わせると、より細かく高質な泡を生成することができ、秀品率や収穫量を向上も見込めます。泡が消えにくくなるため、土壌に散布すると作物が均一に育ち生育がアップします。
夏場に使用することで高温対策の効果も見込めます。バジルでの比較を見ると、葉が青々と元気に育っていることがわかります。トマトなどの果実では、大きな実を作ることができるそうです。
△バジル生育比較(左)通常栽培、(右)LACTy含有
いちご生産者への導入実績では、化成肥料の使用が40%、病気の発生が50%(※1)下がり、収穫量は18%アップ(※2)しました。
※1:うどんこ病の発生が500パックあたり30個から3個に減少(昨年比)
※2:収穫時期が早くなり成り疲れも起きず、12月頭~5月までLサイズを収穫
株式会社いと は有機活性乳酸「LACTy」の魅力を広めたい!との思いから一念発起、2022年11月に設立した新会社です。社長の青木拓也さんと父親の吉兼さんは、共に脱サラして農業の世界に飛び込みました。「素材の力で日本を、世界を、変える」がモットーです。
他にも、福井シードではUV-Bも照射できるLEDライト「防病UV-B LED」を初展示。人工光を使った植物工場などの栽培現場で、紫外線不足による苗の生理障害が回避できます。
アキレス株式会社は、生分解性マルチフィルム「ビオフレックスマルチプラス」を展示。生分解性マルチフィルム従来の弱点であった「土の乾きやすさ」を改善するために保湿性を上げ、従来製品と比べて約20%土の渇きが改善しました。
生分解性マルチフィルムは使用後にほ場へすきこむと、微生物によって水と二酸化炭素に分解される環境に配慮された資材です。使用する生産者にとっても、マルチのはぎ取りや片付け作業が楽になるメリットがあります。
一方、一般的なポリエチレンマルチに比べて高価なことや分解されやすいため長期栽培には不向きといった課題も残っています。
農林水産省の「みどりの食料システム戦略」でも推奨されている生分解性マルチフィルムは、グリーンな栽培体系の転換に向けて今後ますます注目される資材だと思われます。
以上、3日間で4万人以上が来場したGPECは大盛況のうちに会期を終えました。取材動画も公開しているので、ぜひチェックしてみてください。
ライタープロフィール
【施設園芸ドットコム 編集部】
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