コラム

ケーブルテレビ会社が”だれでもできる農業”に挑戦!【前編】未経験から始めるミニトマト・いちご栽培を取材しました

公開日:2025.05.22

入間ケーブルテレビが手掛ける新事業「スマート農業」を取材しました!
2018年に「株式会社ICTVスマイル農場」を設立し、2020年には埼玉県東松山市にリーフレタスなどの葉物野菜を栽培する植物工場を建設しました。さらに、2021年には埼玉県入間市にいちご農園を、2022年にはトマト農園をそれぞれ開設し、事業を拡大しています。 栽培された野菜は、「スマイル農場直売所」にて販売されており、地域住民に新鮮で安心な農産物を提供しています。

実は、スマイル農場で育てられている野菜は、農業未経験のケーブルテレビ社員たちが、日々試行錯誤を重ねながら栽培管理をしています。ケーブルテレビ会社が“だれでも栽培できる農業”を目指したきかっけとその取り組みとは?

前編の記事では、トマト農場とイチゴ農場の取り組みをそれぞれご紹介します。

1.地中熱を利用した空調設備でエコな農業を実現【トマト農場】

△提供:入間ケーブルテレビ(株)



トマトの栽培管理を担当されている大山さんにインタビューしました。
トマト農場は約20a(20連棟)のハウスで赤い高糖度トマト「TY千果」とオレンジ色の「オレンジ千果」2種類のミニトマトを栽培しています。

大山さん:今年は2/17に定植しました。全部で5,000株あります。
当初は外部から苗を購入していましたが、「せっかく植物工場があるのだから活用していこう!」という会社の方針のもと、現在は東松山にあるグループ会社の植物工場で播種・育苗した苗を使用しています。今回が2作目の挑戦です。

△栽培担当:大山さん




実は大山さん、中途採用で入社したため農業は未経験。

大山さん:ここで働くスタッフはみんな農業未経験からのスタートなんですよ!自然に囲まれた地で農業に携わることができて、毎日がとても充実しています。山が近いためか、国の特別天然記念物であるニホンカモシカを見かけたこともありました。

農業未経験者でも安定した栽培ができるよう、ITシステムの導入や栽培の自動化を積極的に進めています。なるべく人の手をかけずに栽培を行えるよう工夫することで、日曜休みや就業時間内に作業を終えられる就業体制の実現に成功しました。
こうしたスマート農業の活用は、「働き方改革」と「地域活性化」を両立させる、入間ケーブルテレビならではの取り組みです。

設備には、化石燃料を使わない「環境にやさしい施設園芸」を目指し、地中熱利用栽培システムを導入しています。

△地中熱利用栽培システム




このシステムは、地下約100メートルの井戸に熱交換用の採熱管を挿入し、井戸内の水と管との間で熱交換を行うことで、地中熱を活用します。ひとつの熱源から水資源と熱エネルギーを同時に取り出せるこの仕組みは、再生可能エネルギーの活用と省エネを可能にした、次世代型の持続可能な農業技術です。

△提供:(株)イノベックス




スマイル農場では、空調対象面積2,000㎡に対して、年間削減コストは約380万円、CO2削減量は約140ton-CO2(※いずれも測定値)です。

※1ton-CO2= スギ約71本が1年間に吸収できる量




導入の効果により、冬場でも夜間の温度が10℃を下回ることが少なく、安定した栽培環境をつくることができました。

大山さん:「入間ケーブルテレビで作ったトマトはおいしいね!」って言ってもらえるように、 味にこだわった“美味しいトマト”を目指して日々取り組んでいます。直売所までわざわざ足を運んでくださるお客様のために、まずは安定した供給体制の確立が目標です。

2.一番人気は『おいCベリー』栽培品種が年年変わる【いちご農場】

次に、同敷地内のいちご農場を取材。
栽培管理を担当されている高星さんにインタビューしました。

650平米のハウスでは3種類のイチゴを栽培しています。品種は毎年選定しており、今年は『さちのか』、『おいCベリー』、『紅ほっぺ』の3品種を育てています。中でも『おいCベリー』は一番人気のイチゴで、初年度から継続して栽培しています。

栽培にはジャット式いちご高設栽培システムを導入。この設備は培土の量が多く、有機肥料にも対応しているのが特徴で、土耕に近い環境で栽培できます。高星さんによると、「食味がよく、育てやすい」とのこと。味にも育てやすさにもこだわった設備選びが、美味しいイチゴづくりを支えています。

△栽培担当:高星さん




高星さんも中途採用で入社したため農業は未経験からのスタートでした。

高星さん:前職は病院の事務員でした。農業の知識も経験もなかったのですが、興味があったので思い切って応募しました。以前とは全く異なる業種でしたが、実際にやってみると本当に楽しくて、気づけば1日があっという間に過ぎてしまいます。もちろん大変なこともありますが、それ以上に今の仕事がとても楽しくて、「農業は自分に合っていたんだな」と感じています。

ケーブルテレビ会社だからこその雇用形態も特徴です。

高星さん:会社員なので、農家さんの時間サイクルとは違うことが特徴です。農家さんは早い時間から収穫を始めると思うのですが、ここでは就業開始が9時なので、かなり遅い時間から収穫しています。そのため、収穫したイチゴはパック詰めしてから、一晩冷蔵庫で保存し、翌日直売所で販売します。

大人気のイチゴは、完売することが多いそうです。

高星さん:次のシーズンからはもう1棟ハウスが立つので、収量も1.5倍になる予定です。
天候に左右されることもあり、同じ味を保つことは簡単ではありません。それでも、一つ一つの経験を大切にしながら、少しずつ学びを重ねて自分なりに納得できる“おいしさ”を追求していけたらと思っています。
品種については、今年と同じく『おいCベリー』と新しく『ほしうらら』、そしていよいよ埼玉県のオリジナル品種「あまりん」を栽培します。スマイル農場のイチゴの味を求めて買いに来てくださる方が増えてくれたらうれしいです。

3.新鮮野菜から加工品まで豊富なラインナップが魅力【直売所】

入間農場の敷地内にある「スマイル農場直売所」は、2024年10月5日にオープンしたばかり。
入間ケーブルテレビの社員たちが、看板のデザインからドアの材質に至るまで細部にこだわって仕上げた、おしゃれな外観が特徴です。

農園で収穫したミニトマトやいちごのほか、「地域を盛り上げたい!」という思いから、就農したばかりの地元生産者が育てた新鮮な野菜も販売されています。

さらに、ミニトマトやいちごを使ったジャムやソース、羊羹、ジュース、和紅茶、わたあめ、アイスなど、バラエティ豊かな加工品も豊富に取り揃えられており、見ているだけでワクワクするラインナップです。

店内には、社員の手作りによるかわいらしいポップが飾られており、商品の魅力を引き出しながら、思わず手に取りたくなるような工夫がされています。

中でもイチオシの「ベジコーラ」は、レタス、ルッコラ、ゆずを使ったクラフトコーラで、その斬新な発想はコーラ界に衝撃を与えました。そのユニークさと味わいが評価され、埼玉県新商品AWARD2021にも入賞した注目の商品です。

△ベジコーラ




実はこの「ベジコーラ」は、東松山市の植物工場で栽培したレタスを使用しています。コロナ禍の苦境の中で、野菜を廃棄しないために開発されたそうです。

後編では『スマイル農場 植物工場の取り組み』をご紹介します。
お楽しみに!

取材動画




今回取材させていただいたのは…

スマイル農場
スマイル農場は入間ケーブルテレビ(株)が運営する地域密着型の農園です。入間市の農園ではミニトマトといちごを、東松山市の植物工場ではリーフレタスなどの葉物野菜を栽培しています。
農業への参入は、耕作放棄地の活用と地域貢献を目指し、新たな事業の柱としてスタートしました。また、食品ロスの削減にも力を入れており、レタスを使ったクラフトコーラや、いちごを使ったジャムやソースなど加工品づくりにも積極的に取り組んでいます。
2025年には創立35周年を迎え、地域に貢献できる新たな事業の展開を目指しています。


ライタープロフィール

【施設園芸ドットコム 編集部】
農家さんへのお役立ち情報を配信中!
新しいイベントの企画やコラム記事の執筆、農家さんや企業様の取材を行っています。みなさんに喜んでいただけるような企画を日々考案しています♪









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