コラム

オレンジの皮をアップサイクル!残渣の活用事例と農業の可能性とは?自販機メーカーを取材しました

公開日:2025.12.02

みなさんは、駅やショッピングモールで見かける「生搾りオレンジジュースの自動販売機」をご存知でしょうか?
水色をベースに大きなロゴが入った、おしゃれな外装が目を引くこの自動販売機は、今回取材したME Group Japan株式会社が、2021年7月に日本で初めて導入した「Feed ME Orange(フィードミーオレンジ)」です。

⽣のオレンジをまるごと使用した、無添加で⾹り⾼い果汁100%のフレッシュジュースは数多くのメディアで紹介され、「搾りたてのフレッシュジュースが飲める!」と老若男女に大人気です。フルーツのカットからプレス、搾汁、カップに注ぐまで、すべての工程を自動で行う次世代の「生搾りフルーツジュースマシン」として注目を集めています。
しかし、搾汁の過程では、果汁として使われない果皮が残渣として残ります。

今回は、このオレンジの果皮の残渣に着目し、アップサイクルの取り組みを取材しました。オレンジの果皮を使った「残渣の活用事例」にも注目です。

1.メディアでも話題!生搾りオレンジジュースの自動販売機とは?

△Feed ME Orange




今回編集部は、埼玉県さいたま市の事業所兼工場を訪問しました。
出迎えくださったのはマーケティングディレクターの柏井さんと社長室の矢野さんです。生搾りオレンジジュースの自動販売機「Feed ME Orange」についてインタビューさせていただきました。

△左奥)柏井さん、右手前)矢野さん




Feed ME Orangeはいつ開発されたのですか?

2021年7月にME Group Japanのオリジナルブランドとして「Feed ME」を立ち上げました。

どのような場所に設置していますか?

大型商業施設やスーパーマーケット、駅構内や観光地など、全国に約400台設置しています。地域によって販売傾向が異なるため、設置場所の選定も販売戦略の一環として慎重に行っています。価格1杯500円~700円(※設置場所による)と安くはないので、大規模のショッピングセンターなど感度の高い方が購入されることが多いです。

また、銀座や秋葉原、京都の清水寺など外国人も多く訪れる観光地は人気が高い。テレビで取材されたこともあるので、それを見た流行感度が高い方が購入してくださることもあります。


オレンジの産地はどこですか?

ネーブルとバレンシアを中心に、オーストラリアから輸入しています。 季節によって品種や産地が変わるため、年間を通してさまざまな味わいのオレンジジュースをお楽しみいただけます。

また、防腐剤についてご心配される方もいらっしゃいますが、当社では仕入れ後にしっかりと洗浄し、防腐剤を丁寧に洗い落としていますのでご安心ください。


△洗浄の様子

フレッシュジュースは栄養価も高いと聞きました。

はい、オレンジジュースは濃縮還元されているものが多いのですが、搾りたてのフレッシュジュースは栄養価が高いのも特徴です。ビタミンC、カリウム、葉酸が含まれています。
私も初めて飲んだ時は、ジュースではなく「オレンジを飲んでいる」ようでした。オレンジの果実がそのまま液体になった味わいです。

2024年3月からオレンジジュースの第二弾として、「Feed ME Apple」を開発し、アップルジュースの販売も開始しました。

△左)Feed ME Apple

リンゴをカットしたあと、プレス、搾汁、ろ過して種や繊維などを取り除きます。丸ごとリンゴを食べているような味わいでとても美味しいです。リンゴそのものの味を楽しんでいただけます。

「Feed ME Apple」は現在20台ほど設置していますが、各所からご要望を受けており、今後も設置を拡大していく予定です。

2.アロマオイルやクラフトビールにも!オレンジの果皮の残渣と活用事例

△オレンジの果皮を使ったクラフトビール(画像提供:ライナー株式会社)




月にどれくらいの残渣が発生していますか?

おおよそ40~50トンほどのオレンジの果皮(残渣)が発生しています。
オレンジは果皮が厚く、果汁を搾ると搾りかすの量が多くなるのです。一方で、果皮には栄養素が豊富に含まれているため、何か有効活用できないかと考えています。

△オレンジの残渣

残渣の活用事例を教えてください。

認知度が上がり、設置台数が増えたことで、2024年頃からは取引先のお客様より、残渣活用に関するお問い合わせをいただく機会が増えました。
「オレンジの果皮でストローを作ってみませんか?」「コースターとして活用できませんか?」など、様々なアイデアやご提案をいただきました。

その中で、社長の「まずはできることから取り組んでみよう」という一言をきっかけに、パートナー企業様と協力しながらプロジェクトを進めた結果、最初に誕生したのが“オレンジの果皮を使った紙”です。ほんのりオレンジの香りが感じられます。

その後も、オレンジの石鹸、アロマオイル、クレンジングオイルなどを作りました。
中には、オレンジに含まれる「リモネン」という成分を取り出して活用したいという企業様もいらっしゃいました。 多くのご提案をいただいた中で、実現できたのは全体の約3割でしたが、一つひとつの挑戦が新たな可能性につながっています。

ー 御社で商品化をしているのですか?

これらの商品化は、パートナーシップを結んだ企業様たちが開発されており、当社はオレンジの残渣を提供しています。

人気だった商品は何ですか?

ベクター様のオレンジの果皮を使ったクラフトビールは大変人気があり、この10月に第二弾が製品化されました。第一弾はあっという間に完売してしまったので、今回の第二弾は増量したそうです。
醸造責任者の方が猫好きということもあり、かわいらしい猫のイラストが描かれています。

△画像提供:ライナー株式会社




パートナーシップ企業は何社あるのですか?

2025年夏時点で7社いらっしゃいます。すでに商品化されている企業様やまだ研究中の企業様もいらっしゃいます。

使ってみたいと思ったらどうしたら良いですか?

浦和、名古屋、大阪、広島、福岡、沖縄の各拠点に取りに来ていただければお渡しできます。自動販売機内のオレンジの補充や残渣の回収は自社メインで行っており、ほぼ毎日10~20袋(1袋約20㎏)オレンジの残渣があるので、比較的すぐにお渡しできると思います。

最近ではヤマトのクール便で発送するケースもありますので、ご相談いただければと思います。

△自動販売機内


△補充前のオレンジ

オレンジの残渣は鮮度も大事なのですか?

製品化するためにはフレッシュな残渣でなくてはなりません。オレンジオイルを開発されている企業様は、搾ってから2~3日以内のオレンジの果皮しか使用されません。そのため毎日補充がある事業所から残渣を引き取られています。

他にも、香料に使用される場合は1週間、クラフトビールは最大2週間など、企業様が定めている品質基準に則り対応しています。

3.農業で堆肥化も視野に|残渣10%の削減を目指して

今後どれくらい残渣を削減したいと考えていますか?

月間40トンに対して10%の削減を目指しています。
クラフトビール、美容オイル、石鹸など、オレンジの残渣には色々な使い方があると思うので、今後もその可能性を模索していきたいと考えています。

その中のひとつに、「堆肥として畑に還元できないか?」という構想があります。オレンジを自然に返す循環が作れたら、と思っています。

オレンジの果皮には、ビタミンCやフラボノイド、ペクチンなどの栄養素が豊富に含まれているため、植物の成長促進に役立つとの話を聞きました。オレンジの果皮を堆肥化することで、栄養価の高い肥料を作ることができるかもしれません。

△イメージ画像

まだ無い取り組みなので、土づくりに使ってみたい、土壌改良剤に加えてみたいと思っている企業様や研究機関、農業大学の方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にお問合せいただければと思っています。個人の農家の方や学生の皆さまからのご相談も歓迎しています。

オレンジの果皮を使った堆肥化や農業での活用、実証実験に挑戦してみたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。




今回取材させていただいたのは…

ME Group Japan株式会社
証明写真機(Photo ME)をはじめ各種自動サービスマシンを世界20カ国で展開する英国ME Group International plcの日本法人。
昭和38年(1963年6月)に設立。日本に初めて証明写真機を導入したパイオニアで、全国約14,000カ所に自動証明写真機を設置。世界No.1のシェアを持つ。
今回取材したFeed ME 食品マシン事業の他に、自動洗濯乾燥機(Wash MEコインランドリーサービス)や各種アミューズメント機械の製造、設置、保守等を展開。 自動マシンのサービスを通して「人々の生活をよりシンプルで便利にする」がコンセプト。

※2022年11月25日に日本オート・フォート株式会社から社名を変更


ライタープロフィール

【施設園芸ドットコム 編集部】
農家さんへのお役立ち情報を配信中!
新しいイベントの企画やコラム記事の執筆、農家さんや企業様の取材を行っています。みなさんに喜んでいただけるような企画を日々考案しています♪








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