コラム
公開日:2019.03.05
2020年に開催される東京五輪の経済効果は30兆円とも言われており、約1ヵ月の開催期間中に選手村の食堂では1500万食が提供される見込みです。食材として自分達の生産した農産物を売り込むことで大きなビジネスチャンスを手にすることも可能です。
しかし食材の調達基準として課題になっているのがGAP(Good Agricultural Practice、農業生産工程管理)認証の取得です。
内容は後述しますがGAP認証を得るには多くの基準を満たす必要があり、それなりの労力や費用、時間がかかります。東京五輪に間に合わせるには取得に向けてすぐにでも動き出したいところです。
そこでここからは東京五輪【2020】で農産物を使ってもらうために必要なGAP認証について紹介していきたいと思います。
東京五輪【2020】では農産物にも持続可能性が求められます。持続可能性と言われるとわかりにくいですが、具体的には食材の安全確保、周辺環境や生態系と調和のとれた農業生産活動の確保、作業者の労働安全の確保の3点になります。
GAPとは、農業において、食品安全、環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の取り組みを指します。GAPを正しく行っていることを証明するためには第三者機関の審査を受けGAP認証を取得する必要があります。
GAP認証には世界基準でありヨーロッパを中心に120か国以上で普及しているGLOBALG.A.P.、日本発でアジア圏のマーケットで広がりを見せるASIAGAP(旧:JGAP advance)、日本の標準的なGAPであるJGAP(旧:JGAP basic)があります。GLOBALGAPはドイツのFoodPLUS GmbHが、ASIAGAPとJGAPは一般財団法人日本GAP協会が運営しており、認証審査は民間の審査会社が行います。
東京五輪の食材調達基準として農作物ではGROBALG.A.PかASIAGAPの認証を取得する必要があります。都道府県が作成したGAPの中にも第三者機関の確認を受ければ認められるものがあります。取得の難しい順にGROBALG.A.P<ASIAGAP<都道府県版GAPとなります。
では、どのGAP認証を取得したらよいのでしょうか?
既に大きく安定した経営体であり東京五輪を足掛かりに世界へ農産物を輸出したい、特にE.U.を狙いたいという人はGLOBALG.A.Pを取得しましょう。取得するには200以上の項目をクリアする必要があり取得までに半年~1年程かかります。費用は審査だけでも22~55万円程かかり、専門のコンサルタント費用や環境検査費用などを含めると100万円以上かかることを覚悟しましょう。
行く行くはGLOBALG.A.P取得を目指したいけれどすぐには難しいという場合にはASIAGAPを取得して段階を踏んでもよいですね。こちらは120以上の基準項目をクリアする必要があり、費用は審査費用が10万円程度と加えてコンサルタント費用や環境検査費用などが必要になります。
輸出云々よりもまずは東京五輪で農産物を使ってもらって一旗揚げたいというような場合には、農林水産省が策定したGAPの共通基盤に関するガイドラインに完全準拠した都道府県版GAPがおススメです。この場合は認証の代わりに都道府県等の第三者機関によって取り組み状況の確認を受けることで食材調達基準を満たすことができます。グローバル市場では通用しませんがGAP指導や取り組み状況の評価を県職員に無償で行ってもらえる場合もあり、経営規模が小さくても取り組みやすくなっています。その他ガイドラインに準拠しているGAPとしてJAの十勝型GAP、生協の産直品質保証システム 生協版適正農業規範があるので状況に応じてこれらを選択してもよいですね。
開催日の迫る東京五輪【2020】でビッグスチャンスを掴むため、今からGAP認証取得に向けて動き出しましょう。さらにその先には世界の市場が待っていますよ。
●参考サイト
・日本GAP協会
<http://jgap.jp/>
・GAP普及推進機構/GROBALG.A.P協議会
<https://www.ggap.jp/>
・国際水準GAPの推進について、農林水産省 生産局農業環境対策課、2017.
<http://www.maff.go.jp/hokkaido/suishin/28kankyouhozen/attach/pdf/gap_event-5.pdf>
・GAP共通基盤ガイドラインに完全準拠したGAPの掲載について、農林水産省 生産局農業環境対策課.
<http://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/gap/junkyo.html>
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。