コラム
公開日:2018.09.18
近年の夏場の気温の高さは、もはや異常気象ですね。三大都市(大阪・名古屋・東京)では50年前より最高気温が4度以上も上昇しており、地方でも農作業中の熱中症による死亡事故が毎年のように発生しています。
とくに日中のビニールハウス内の温度は軽く40度を超え、ハウスサイドを巻き上げていてもサウナのような湿度と暑さを感じます。
もちろん影響が出るのは人体だけではなく作物にも及びます。高温状態が続くと果実が傷んだり、開花の遅れや最悪の場合枯れてしまうこともあります。
ビニールハウスを、より効果的に冷却する方法とは一体どのような方法なのでしょうか。
効率的かつ省力的に冷却をするなら“濡れない霧”ドライミストが効果抜群です。公園や駅、店舗の入り口などで高温対策としてドライミストが設置されているのを見かける機会が増えてきましたが、その原理は気化熱を利用したものです。
まず、ポンプで加圧した水を口径の小さいノズルから放出し細かな霧を発生させます。この霧は粒が細かく地面に届く前にすぐ気化しますが、その時に周囲から熱を奪います。ミストの粒子が細かいほど効率よく気化し、冷却効果が上がっていきます。
また霧が細かいので触れたものが濡れず、人通りが多い場所で利用しても不快感を感じさせないところもドライミストの優れた点の一つです。
そんなドライミストの資材はもちろん農業用にもあります。潅水用ミストよりも粒子が細かく揃っていて、高い冷却効果が見込めます。
設備費用をかけて制御盤を用い、“ハウス内部が高温になる時だけ自動で噴霧する方式“と、簡易的な装置で“手動によりドライミストを散布する方式“の2種類が一般的で、いずれもハウス内の温度を5度~10度前後下げることができます。(季節や条件により効果は変わってきます)
ドライミストは動力噴霧器のような原理でミストを作るため、専用のノズルには高い圧力がかかり、安価なものだと耐久性がない場合もある為、注意が必要です。
様々なタイプが販売されており、「水道につないだホースの先端からミストを散布するタイプ」、「潅水チューブのように広範囲を同時に散布するタイプ」、「循環扇とセットで冷風とともに冷却するミストファン」などがあります。
冷房+加湿+防除自動化システム「CoolPescon®」/(株)いけうち
この他、気化熱を利用した商品として水を含んだフィルターに風を通して冷やす「冷風扇」なども販売されています。
狭いビニールハウスの場合は、家庭用のキットでも十分実用性があり、値段も2万円前後と経済的です。また移動式のミストファン(10万円前後)は強力な風に乗せてミストを循環させるので、ハウス内をさらに効率よく冷却できます。
ミストは水圧が高いほど細かくなり、チューブが伸びるほどより高い圧力が必要です。そのため、温室内全体など広範囲をカバーするためには高圧ポンプを導入する必要があります。導入費用がかさんでしまいますが、ヒートポンプを利用した冷房装置と比較すると、ドライミストの水道代と電気代のほうが安く抑えることができます。
しかし、ドライミストは周囲の作物や作業者を濡らさない代わりに気化した蒸気が周囲に溜まり、湿度が高くなってしまう欠点を持っています。温室内で湿度が上がると気化できず水滴が周囲を濡らしてしまうので、ドライミストを使用する際には換気が必須となってきますので注意してください。
夏場の高温対策として上手く利用してみてはいかがでしょうか?
ライタープロフィール
【Sandersonia(サンダーソニア)】
花とスケートボードを愛するフリーライター。サンダーソニアとは好きな花の名前。
IoT技術による農業生産の革新と農協改革の今後に関心を寄せる。花屋、JA営農指導員を経て独立。生産から流通、花束やフラワーアレンジメントまで花の知識ならお任せを。