コラム
公開日:2018.08.27
野菜の苗作りをされる方にとって育苗用の培土選びは悩ましい問題です。販売されている育苗用培土は失敗も少なく、大量の苗を作らない方にとっては有効な選択です。ただし、たくさんの培土を利用する園芸農家にとっては価格が高くなってしまうというデメリットがあります。そこで今回は市販されている育苗培土について整理した上で、トマトを例に育苗培土の配合・作り方を紹介します。
育苗培土とは良質な苗ができるように適切な化学性や物理性を持つように作られている培土です。化学性とは窒素・リン酸・カリの肥料成分が程よく配合されており、作物に好適なpHを維持しているという意味です。物理性とは保水性と排水性がバランス良くなるよう配合されているということです。また、市販の育苗培土の多くは加熱処理がされており、病害菌が殺菌されているという特徴があります。
育苗培土と一口に言っても農家によって必要な培土の条件は異なります。育苗培土を選ぶ際の注意点として下記のようなものがあげられます。
▲「果菜類」「葉菜類」「根菜類」等、自分の栽培する作物に適しているか
▲「ポット」と「セルトレイ」どちらに適しているか
▲育苗する時期はいつか(夏か冬か)
▲育苗日数は何日か
▲保存性はどの程度か
●トマトの育苗培土
市販のトマト用育苗培土、書籍を発行しているトマト農家、育苗技術のある数件のトマト農家を調べたところ、下記の通り肥料成分の割合等についてかなりのばらつきがあることが分かりました。これは上記の注意点(育苗日数やポットとセル等)の違いによるものですが、大まかにこの中に各農家の栽培条件に合った成分割合や培土原料があると考えられます。
(参考)
【肥料成分】窒素:150〜300mg/L リン酸:200〜900mg/L カリ:150〜300mg/L
【培土原料】バーミキュライト、ピートモス、ヤシガラ、灰、焼土、etc…
最後に、簡単につくれるトマトの育苗培土(ポット育苗用)の作り方をご紹介します。
畑土(黒ボク土)(50%)+ ピートモス(50%)
①pH6.5前後になるよう石灰を投入し混ぜ合わせます。
②土壌消毒剤による土壌消毒を行い完成です。
※肥料成分の偏りが極端な場合は化成肥料で調整します。
他にも下記のような配合で育苗される農家もいらっしゃるようです。アイデアの参考にしてください。
田土(30〜40%)+腐葉土(50〜60%) +モミガラくん炭(10〜20%)
赤玉土(60%)+腐葉土(30%)+バーミキュライト(10%)
○まとめ
今回はトマトの育苗培土の作り方を紹介しました。野菜によって培養土の作り方の方向性が違うことはもちろん、同じトマトでも育苗培土の最適解は条件によって異なります。今回ご紹介した例をベースに是非ご自身の栽培方法にあった培養土を探してみてください。
ライタープロフィール
【uen01】
1反のハウスで夏秋ミニトマトの養液栽培(不織布ポットを利用した少量培地栽培)を行なっています。
元営農指導員のベテラン農家指導のもと、様々な実証実験を行いながら生産しております。元金融マンというバックグラウンドを生かして、数字に基づいた栽培及び経営を行なっています。