コラム
公開日:2018.10.26
バラ科に属するイチゴは涼しい環境を好み、暑さや乾燥を嫌います。しかし、花芽分化を調整するため日が短い季節の植え付けは適しておらず、春から初夏にかけて行うのが一般的です。生育適温が18~23℃と極端に寒い環境も適していないので、冬春どりのイチゴは冬季でも暖かい地域で生産されることが多いです。
寒冷地:
《春植え》5月下旬~6月上旬 《秋植え》9月下旬~10月上旬
中間地:
《春植え》6月上旬~6月中旬 《秋植え》10月上旬~10月中旬
暖地:
《春植え》6月中旬~6月下旬 《秋植え》10月中旬~10月下旬
通常の冬春どりのイチゴは、促成栽培により11月から5月頃まで収穫と出荷が続き、冬の味覚として流通します。
国内のイチゴ生産量は1位が”とちおとめ”や”スカイベリー“で有名な「栃木県」、2位は”あまおう”で知られる「福岡県」で、次いで”ひのしずく”が有名な「熊本県」が3位です。
この3県で国内生産量の約3割のシェアを誇っています。他にもランキング10位以内をみると「佐賀県」や「長崎県」など九州地方や、「静岡県」「愛知県」などを中心とした東海地方にて、盛んにイチゴの生産が行われていることが分かります。
1位 栃木県
2位 福岡県
3位 熊本県
4位 静岡県
5位 愛知県
6位 長崎県
7位 茨城県
8位 佐賀県
9位 千葉県
10位 宮城県
※参照:農林水産省 大臣官房統計部 農林水産統計 平成30年8月28日公表
宮城県生まれの「もういっこ」は、思わずもうひとつ食べたくなる味わいであることから命名されました。果実は綺麗な円錐形で大きく、果肉まで赤いのが特徴。病気にも強く、育てやすいように改良された品種です。
尚、「もういっこ」は県のオリジナル品種となっており、無許可で栽培することが禁止されています。
東日本では大きく細長い形をしたイチゴ「章姫(あきひめ)」が広く作付けされています。糖度が高く柔らかいのが大きな特徴で、ほとんどのイチゴ農家が「章姫」を生産していましたが、箱詰めがしにくいことや味が単調だといった理由から別品種に移行する生産者もいます。
静岡県の試験場で育成された「紅ほっぺ」は、文字通り”ほっぺが落ちるほどの美味しさだ”という意味が込められています。地元のJAではこの「紅ほっぺ」を主力品目として猛プッシュして、知名度と共に各地へ流通しています。
愛知県の種苗会社が育成した「アイベリー」は、発表から30年以上経つものの高級品としての位置付けをキープし続けています。程よい酸味と高い糖度、鮮やかな紅色のとても美しいイチゴですが、難易度が高く生産量が少なくなってきています。
群馬県で育成された「やよいひめ」は、通常のイチゴの旬が終わる弥生(3月)でも味が変わらないことが最大の特徴です。また果肉がやや硬めなので日持ちする上に、箱に詰めた状態での輸送にも適しています。
また、隣接するイチゴ生産量第一位の栃木県産のイチゴとの差別化を図るため、ドライフルーツとしての販売にも力を入れています。
三重県の試験場で生まれた「かおり野」は、イチゴ生産の大敵である炭疽病に強い珍しい品種です。病気に強い頑丈さと、程よい酸味で飽きがこない味わいから生産者にも消費者にも好まれる品種として人気です。三重県のオリジナル品種なので、他県で栽培したい場合には県へ申請を出す必要があります。
兵庫県で生まれた「宝交早生」は栽培が容易で、露地栽培や家庭菜園にも適している西日本で人気のある品種のひとつです。しかし、休眠期間が長く収穫時期が春になってしまうことから、市場での流通は少なくなっています。
香川県の「さぬき姫」は、丸みを帯びた円錐形でサイズはやや大きめです。果実は柔らかく輸送しにくいため、地元周辺に流通している品種です。
徳島県の「さくらももいちご」は緩やかな円錐形で濃い赤色をしています。酸味が少なく高い糖度が特徴的で、味だけではなく、見た目を含めた厳しいチェックをクリアしたものだけが商品として出荷され、高級品として取り扱われています。
「さがほのか」は全国的に知名度もある佐賀県の有名な品種のひとつです。甘みが強く、酸味が弱いためイチゴの甘さが際立ちます。果肉が丈夫で輸送しやすく、断面はきれいな白色で細長い形をしています。
出蕾時期が揃うことで栽培しやすいため、九州地方では広く栽培されています。全国的にも「とちおとめ」に次いで多く作付けされている品種です。
鹿児島県の生産者が「さがほのか」の突然変異株を増殖し、5年前に登録された「白いちご淡雪」。主に九州管内で生産されています。酸味はほぼ無く、強い甘みがあります。まだ生産者が少ないものの、珍しい品種にチャレンジしてみたいといった生産者にオススメのイチゴのひとつです。
イチゴには多くの品種があり、日々新しい品種が誕生しています。栽培する地域や条件に合った品種を見つけて栽培しましょう!
ライタープロフィール
【Sandersonia(サンダーソニア)】
花とスケートボードを愛するフリーライター。サンダーソニアとは好きな花の名前。
IoT技術による農業生産の革新と農協改革の今後に関心を寄せる。花屋、JA営農指導員を経て独立。生産から流通、花束やフラワーアレンジメントまで花の知識ならお任せを。