コラム
公開日:2019.07.23
バラは好きな花ランキングでいつも上位に入る人気の花です。姿、香りの華やかさや品種の豊富さなどが人気の理由で、どの花屋でも切り花や鉢植えなどで並んでいる姿を目にしますね。
人気のバラですが栽培の難易度は高く、周年に渡り美しい花を咲かせることは至難の業です。土づくりや水やりなど大切なことは色々ありますが、美しい花を長く収穫するにはいかに上手く肥料を与えるかということが特に重要になります。
そこでここからはバラの肥料について、与える時期や肥料のやり方、おすすめの肥料などをお伝えしていきます。バラは土耕栽培と養液栽培のどちらも行われていますが施肥方法が異なるので分けてみていきます。
施肥は大きく分けて植え付け時や改植時に行う「基肥」と生育中に不足する養分を補い1番花以降もしっかりと咲かせるための「追肥」に分けられます。
施肥量は県や各ほ場の養分条件によって異なりますが、ここからはバラの栽培が盛んな静岡県での肥料の与え方を参考に見ていきます。
時期:植え付け前や改植前。
与え方:10aあたり【たいきゅう肥20t、N 15kg, P 10kg, K 10kg】を与えています。たいきゅう肥にはピートモスやバーク堆肥を主体に牛糞堆肥を2~3割投入します。肥料は有機配合肥料やコーティング肥料のような緩効性肥料を用います。バラ専用の化成肥料やボカシ肥料などが便利です。
時期:生育期の3~11月に毎月1回 程度。
与え方:1年目には合計で10aあたり【N 32kg, P 32kg, K 32kg】、2年目以降は毎年合計で10aあたり【N 46kg, P 46kg, K 46kg】を与えます。
バラは年間に何度も収穫するため多くの肥料を必要とします。1年目は化成肥料や有機配合肥料を、2年目以降は有機配合肥料を与えます。肥料の過多症状として根が傷んで枯れる肥料やけが出やすいので過剰施肥は禁物です。過剰施肥対策にはECの測定が有効で0.5~0.8mS/cmになるように管理します。
養液栽培の場合には施肥は一定濃度の液体肥料(養液)を掛け流し続ける方法が広く行われています。
時期:定植時から栽培終了時まで継続して行う。
与え方:肥料を溶かした養液を栽培ベッドに掛け流します。吸収されなかった養分は捨てられてしまいますが、常に一定の養分を含む養液が供給されるため生育や開花に必要な養分をしっかりと与えることができます。養液の作り方は目的の濃度に必要な量の肥料を水に溶かすだけで、肥料は養液栽培用の化成肥料を用います。
肥料濃度:肥料濃度は県によって異なりますがここからはバラの栽培の盛んな愛知県での肥料濃度を見ていきます。夏と冬で濃度を変えます。土耕栽培と同様に過剰施肥に気を付け、ECは夏には1.0~1.5dS/m、冬には1.4~1.8dS/mになるよう管理します。
夏の肥料濃度(me/L):11.0 NO3-N、1.0NH4-N、3.0P、5.0K、6.0Ca、2.0Mg
冬の肥料濃度(me/L):12.5NO3-N、1.3NH4-N、3.0P、5.5K、7.0Ca、2.0Mg
土耕栽培でも養液栽培でも良い花を咲かせるには必要な養分をしっかり与えつつ過剰施肥による肥料やけに気を付けることが重要です。定期的にECを測定して肥料の過不足を判断して美しい花を沢山咲かせましょう。
▼参考サイト
●アイリスガーデニングドットコム、メディア、園芸、人気のお花ランキング2018
<https://www.irisplaza.co.jp/media/A13968698649>
▼参考資料
●静岡県土壌肥料ハンドブック 3花き、静岡県、2017.
●主要作物の施肥基準 花き、宮崎県、1999.
●農作物の施肥基準 花き、愛知県、2016.
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。