コラム
公開日:2019.07.16
接ぎ木(つぎき)苗とは普通の苗の一部を切ってそこに別の苗を繋ぎ合わせた苗を指します。元々の根のある苗を台木、繋ぎ合わせた実のなる苗を穂木と呼びます。接ぎ木は種子や挿し木で増やすことが大変なリンゴ、モモ、マンゴーなど多くの果樹の増殖方法として古くから行われてきました。
現在では接ぎ木は果樹のみでなく野菜、特に果菜類でも広く行われています。野菜の場合には苗の増殖より台木と穂木の両者の良いところを持った苗を作ることに主眼があります。例えば台木に土壌病害に強いけれど味がイマイチな苗を、穂木に土壌病害に弱いけれど味が抜群に良い苗を接ぐと土壌病害に強くて美味しい実の成る接木苗ができます。
接ぎ木苗を上手く利用すれば普通の苗を使うより簡単に美味しい野菜を作ることができます。そこでここからは接ぎ木苗のメリットとデメリットについてお伝えしていきたいと思います。
1. 連作障害に強い
連作障害に耐性のある台木に接ぐことで連作障害に強い苗ができます。青枯れ病に強いトマトやミニトマト、ネコブセンチュウに強いナス、つる割れ病に強いキュウリやゴーヤなど連作障害に強い接ぎ木苗を使うと輪作や土壌消毒をしなくても連作が可能になります。
2. 病害虫に強い
病害虫に抵抗性のある台木に接ぐことで病害虫に強い苗ができます。接ぎ木苗の台木には野生種のような栽培種に比べ病害虫に強い品種がよく用いられます。疫病に強いピーマンなど病害虫に強い接ぎ木苗を使うと病害虫に対する心配が減り農薬の散布量を減らすこともできます。
3. 環境ストレスに強い
寒さや暑さ乾燥など環境ストレスに強い台木に接ぐことで環境に強い苗を作ることができます。例えば寒さに強いキュウリの接ぎ木苗を使うと地温が低い春先でも根の伸びが良く普通の苗より早い生育を得ることができます。
1. 価格が高い
病害虫に強いなど付加価値の高い接ぎ木苗は普通の苗に比べて2倍程の高値で販売されています。接ぎ木苗を購入する場合には普通の苗のチェックポイント(病害虫に侵されていない、葉の色が濃いなど)に加えて、接いだ部分がよく密着してしいるかを確かめましょう。
2. 自分で接ぐには技術や時間が必要
接ぎ木苗を作るにはそれなりの技術と手間を要します。台木と穂木の用意、苗の切り方や接ぎ方、接いだ後の養生管理など接木苗の作成には沢山の重要なポイントがあります。初めて接ぎ木を行う場合には十分な作業時間を確保して熟練者の指導を受けることをおすすめします。
3. 台木の芽かきが必要
台木には草勢の強いものがよくあります。台木から出てきた腋芽をそのままにしておくとどんどん生育して仕舞には実が成ります。これでは穂木に十分な栄養が行きわたらないので台木から出た芽はすぐに取り除くことが大切です。
連作障害や病気などに強い優れた長所を持つ接ぎ木苗ですが、販売価格が高く自分で接ぐのは大変という短所もあります。病害虫の発生状況などに応じて接木苗を上手く利用して美味しい野菜を沢山収穫しましょう。
▼参考サイト
●ベルグアース株式会社、接ぎ木苗紹介
<http://www.bergearth.co.jp/homegarden/graft.html>
●タキイ種苗株式会社、【野菜】品種カタログ、〔台木の上手な使い分け〕トマト
<http://www.takii.co.jp/tsk/hinshu/daigi/atm.html>
●タキイ種苗株式会社、【野菜】品種カタログ、〔台木の上手な使い分け〕きゅうり
<http://www.takii.co.jp/tsk/hinshu/daigi/acu.html>
●タキイ種苗株式会社、【野菜】品種カタログ、〔台木の上手な使い分け〕ナス
<http://www.takii.co.jp/tsk/hinshu/daigi/ana.html>
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。