コラム
公開日:2019.11.08
水耕栽培ではリーフレタスや葉ネギなどの葉菜類、トマトのような果菜類、バジルのようなハーブなど様々な野菜が栽培されています。庭が無くても栽培できるので家庭菜園でもハイポネックスのような肥料を使って行われています。
培地を使わない水耕栽培は「培地と肥料成分」や「植物根とのやり取り」を考える必要がなく施肥をコントロールしやすいという特徴があります。反面、与えた肥料が生育にダイレクトに影響するため施肥の良し悪しによって栽培の成否が分かれます。
そこでここからは水耕栽培の成功の鍵を握る肥料について、「肥料の見直しに役立つポイント」についてご紹介します。
水耕栽培で何より重要なのは原水です。栽培前に原水のpH、EC、重炭酸濃度などを分析して原水の特徴を把握しましょう。特に井戸水を使う場合には注意が必要です。偏った成分がある場合には肥料の使用量を増減して調整します。重炭酸濃度があまりに高いなど場合によっては他の原水を探した方が良いこともあります。
水耕栽培の肥料バランスは園試処方や大塚A処方など研究機関や民間の肥料会社の処方など様々なものがあります。基本的には対象作物から処方を選べば良いですが状況によって処方を見直してみましょう。
例えば、トマトで汎用性の高い大塚A処方から尻腐れに効果的な大塚SA処方に替えてみる。イチゴでとちおとめを栽培しているから山﨑処方から品種に適した栃木イチゴ処方に変えてみる。他にも肥料代が安くなる処方にするなど、より良い処方が見つかるかもしれません。
水耕栽培の場合2種類以上の肥料を混合して使用する場面が多くあります。
まず①固体の肥料を水で希釈してそれぞれの液体の濃縮肥料を作ってから、②大量の水の入った肥料タンクに濃縮肥料を投入して使用する液肥を作るのが一般的な流れです。
もし②のタイミングで濃縮肥料を混ぜてから水で希釈している場合は今すぐ止めましょう。
濃縮肥料同士を混合すると肥料成分が沈殿して植物が利用出来なくなることがあります。
※肥料の取り扱いはラベルの記載をよく読んで正しく使うようことが重要です。
処方や肥料の混合方法に問題が無くても、肥料の計算が間違っていたら元も子もありません。
メーカーの養液栽培専用の肥料を使う場合は、使う量や使う比率が決まっているので計算は比較的容易ですが、自分でブレンドする場合は計算がかなり大変になるので慎重に計算しましょう。
また肥料の希釈操作が多いので桁数に計算ミスが無いか良く確認しましょう。
便利な水耕栽培用の配合肥料は値が張るため、単肥で代用する際にネックとなるのが計算の複雑さです。
そこでおすすめしたいのが大分県の農林水産研究指導センターが開発した単肥配合プログラム「ベストフレンド」です。処方や作る液肥量、使用時の希釈倍率などを選び、オートボタンを押すだけで肥料毎の投入量が自動で表示されます。微量要素の計算や原水成分結果の反映もでき、肥料金額も表示される優れものです。フリーソフトで日本養液栽培研究会のHPからダウンロードすることができます。
肥料が良くも悪くもしっかり効くのが水耕栽培です。これを機に原水から肥料の処方、使用量や使用方法などを見直してみてはいかがでしょうか。肥料を上手に効かせて上等な野菜を沢山収穫しましょう。
参考文献
〇大阪府立大学 植物工場研究センター【栽培技術者育成支援研修2015】研修資料
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。