コラム

硝酸態窒素とは?安心・安全な野菜をつくるために知っておきたいこと

公開日:2020.04.27

1.植物の生育に欠かせない窒素肥料

窒素は植物の生長に最も必要とされる養分です。野菜を育てるには有機、無機に関わらず窒素肥料の使用が欠かせません。
野菜の多くは肥料中の窒素成分を硝酸態窒素という形で取り込んで生長します。しかしながら多すぎる硝酸態窒素は人の健康や環境にも良くありません。

そこでここからは硝酸態窒素について、安心安全な野菜を作るために知っておきたいことをまとめてご紹介していきます。

2.植物と硝酸態窒素の関係

硝酸態窒素とは化合物の中に硝酸塩として含まれている窒素のことで、水中では硝酸イオンとして存在します。多くの植物は硝酸態窒素を好んで吸収します。
中にはアンモニア態窒素を好む植物もあり、肥料によっては窒素成分のうち全窒素を「TN」、硝酸態窒素を「NN」、アンモニア態窒素を「AN」と区別して表示しているものもあります。

根から吸収された硝酸態窒素は葉に送られ、光合成産物と共に植物の構成成分に使われます。そのため植物の葉に硝酸態窒素が存在することは普通のことです。

硝酸態窒素は葉物野菜で多いことが知られています。また、露地栽培よりも施設栽培で、有機農法よりも慣行農法で多い傾向があります。



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3.安心・安全な野菜作りと硝酸態窒素

亜硝酸態窒素になると健康に悪影響

硝酸態窒素自体は有害なものではありません。しかし、体内で還元されて亜硝酸態窒素に変わるとメトヘモグロビン血症という酸欠状態になることがあります。
硝酸態窒素が多く含まれた野菜を食べたとしても、日常食べる量で問題になることはまずありませんが、後述する硝酸態窒素で汚染された地下水を飲用する場合には注意が必要です。

他にも、亜硝酸態窒素は発がん性物質であるニトロソ化合物の生成に関与している可能性が指摘されています。




地下水の汚染による健康と環境への悪影響

硝酸態窒素は土壌に吸着されにくく、過剰に施肥すると雨や水やりで簡単に地下水や河川水に溶け出てしまいます。
硝酸態窒素が多く含まれる地下水を井戸水として飲用することはメトヘモグロビン血症の恐れがあります。特に生後3ヵ月未満の乳幼児で発生しやすくミルクの調整水に井戸水を使う場合は特に注意が必要です。地下水の基準値は硝酸態窒素と亜硝酸態窒素の合計で10mg/Lと定められています。

一方、畑から流れ出した硝酸態窒素は湖沼や海などの富栄養化を引き起こし、有毒なアオコなどが大量発生する一因となります。安価な硝酸イオン濃度の測定器が販売されていますので、一度圃場の周囲の用排水路や河川などで測定してみてはいかがでしょうか。




害虫の多発による農薬の使用増

窒素肥料の過剰施肥によりアブラムシなどの害虫が発生しやすくなることが知られています。害虫駆除に使う農薬の量を減らすためにも適切な施肥が重要です。






減肥基準を活用した施肥設計

施肥設計は各都道府県の定める施肥基準が基本となりますが、土壌診断などで肥料成分が過剰に蓄積していることが分かっている場合には施肥を減らす必要があります。
その際に役立つのが、土壌診断結果から簡単に減肥量が分かる減肥基準です。診断結果によっては元肥をゼロにできる場合もあるため費用削減となり、経営面からも一見の価値があります。



減肥基準とは💡

減肥基準とは、土壌診断により土壌中の肥料成分が過剰蓄積されていることが明らかになった場合の施肥量を削減する基準です。
野菜・花き・果樹・水稲などの栽培方法や作物の種類によって、どの成分をどれだけ削減すれば良いのかが分かります。
基準が定められていない地域もあるため、その場合は近隣の基準を参考にしてみましょう。
減肥した場合は、作物の生育状況を確認しながら、生育不良などが見られる場合は追肥などの調整が必要になります。




硝酸態窒素は野菜を育てる上で不可欠ですが、安心・安全な野菜を作るのに過剰な窒素肥料は全くもって不要です。窒素施肥を見直して、人にも環境にも優しい野菜を作りましょう。




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▼参考サイト
〇硝酸塩の健康への影響,野菜等の硝酸塩に関する情報,個別危害要因への対応(健康に悪影響を及ぼす可能性のある化学物質),リスク管理(問題や事故を防ぐ取組),消費・安全,農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/syosanen/eikyo/index.html
〇野菜中の硝酸塩濃度,野菜等の硝酸塩に関する情報,個別危害要因への対応(健康に悪影響を及ぼす可能性のある化学物質),リスク管理(問題や事故を防ぐ取組),消費・安全,農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/syosanen/ganyu/index.html
▼参考文献
〇硝酸性窒素地下水汚染対策の啓発について, 中央環境審議会水環境部会(第20回)議事要旨,水環境部会,中央環境審議会情報,審議会・委員会等,政策分野・行政活動,環境省
https://www.env.go.jp/council/09water/y090-20/mat10.pdf
〇土壌診断結果に基づく減肥基準,健康な土づくり技術マニュアル,都道府県施肥基準等,環境保全型農業関連情報,生産局,農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/pdf/tuti502.pdf

ライタープロフィール

【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。

    
   


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