コラム

ハウスでイチジク栽培!露地栽培との違いやメリット・デメリットを紹介

公開日:2020.07.28

夏の長雨や猛暑、冬の寒波など、農作物は異常気象によって大きな影響を受けますが、特に影響を受けやすい作物の1つにイチジクがあります。しかし、ハウス栽培であれば異常気象からイチジクを守ることができるかもしれません。

今回の記事では、イチジク栽培についての基本情報や、ハウス栽培するメリットやデメリットについてご紹介します。

1.アダムとイブの下着がわりにも?紀元前から栽培されていたイチジク

イチジクは、クワ科イチジク属の植物です。原産国はアラビア南部あたりだといわれているので、温暖な気候を好み、逆に寒さや多湿には弱い植物です。

紀元前から人類が栽培していた果樹で、旧約聖書では、アダムとイブが神の怒りに触れて楽園を追放されたとき、腰にまとったのがイチジクの葉だと記されています。それだけ当時の人類にとっても身近な作物だったのでしょうね。

2.イチジク栽培の基本をおさらい

イチジク栽培では、年間の作業暦を掴んでおくことが大切です。11月頃に肥料をあげて、植え付けは12~3月頃苗は挿し木で増やす方法が一般的です。剪定は基本的に冬の休眠期(12~2月頃)に行い、樹形は手入れがしやすい一文字仕立てがおすすめです。


※栽培暦は地域の気候によって異なります。厳冬地の場合は最も寒い時期(大寒の頃)の剪定は避けましょう。




収穫期は夏と秋の2回あるのが特徴で、品種によって夏果専用種秋果専用種兼用種があります。日本でいちばん栽培されている品種は桝井光次郎が創始者の「桝井ドーフィン(ますいどーふぃん)」ですが、その他にも様々な特徴の品種があります。

3.ハウス栽培のメリット・デメリットは?

露地栽培と比較して、ハウス栽培では大きく3つのメリットが期待できます。



メリット1【収穫期の早期化・長期化が可能】

露地栽培の場合は6~10月ぐらいが出荷時期ですが、ハウス栽培では工夫によって3~11月といった長期での収穫が可能になります。売上のタイミングが収穫に左右される農家にとって、周年に近い形で出荷と現金化ができることは経営的に大きなメリットがあります。








メリット2【農薬の使用量削減が期待できる】

雨の影響を受けやすいイチジクは長雨や多湿に弱く、果実にカビが生えたり、収量や品質が大きく落ちることがあります。それに伴って農薬の使用量も増加します。ハウスでかん水や湿度をコントロールすることでイチジクが弱るのを防ぎ、収量の増加、品質の向上、農薬の使用量削減などの効果が見込まれます。








メリット3【害虫による食害を減らすことができる】

寒さの影響を受けにくいイチジクは、寒さに弱い植物です。雪や霜で樹が弱ると、カミキリムシの食害を受けることが増えてしまいます。ハウス栽培であれば冬の寒さからイチジクを守ることができるので、結果的に食害も減らすことができます。







一方で、ハウス栽培のデメリットもあります。



デメリット1【暑さ対策が必要】

夏の暑さには注意が必要です。いくらイチジクが中東の出身とはいえ、極度な暑さは得意ではありません。また、農作業をする私たちも夏のハウス内の暑さには弱いので、ハウス内換気などの十分な対策が必要です。








デメリット2【初期投資の費用がかかる】

必要果樹を植えることができる大きさのハウスが必要になるので、どうしても初期投資が必要です。融資や補助金をうまく使い、無理なく導入しましょう。


ハウスでイチジクを栽培するメリットやデメリットを紹介しました。他にもイチジク農家さんがやっているブログやYoutubeなどもあるので、情報収集してハウス栽培を検討してみましょう。



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▼参考サイト
〇志田金賞蘇生いちじく栽培暦概要,いちじくの志田ファーム
http://www2.tokai.or.jp/shida/ichijiku/saibai_koyomi.htm
〇イチジクと砂丘を渡る風
http://sennin2008.blog61.fc2.com/
〇イチジクの無加温ハウス栽培,平成8年度,研究成果情報,農研機構
https://www.naro.affrc.go.jp/org/tarc/seika/jyouhou/H08/tnaes96072.html
〇イチジクの基本情報,育て方がわかる植物図鑑,みんなの趣味の園芸
https://www.shuminoengei.jp/m-pc/a-page_p_detail/target_plant_code-109
〇イチジクの育て方,ヤサシイエンゲイ
http://yasashi.info/i_00022g.html
▼参考文献
〇株本暉久(1996),イチジク―栽培から加工・売り方まで (新特産シリーズ), 農山漁村文化協会

ライタープロフィール

【内村耕起】
宮崎県の牛農家生まれ。大学院で植物工場での廃棄物利用に関する研究に従事したのち、全国の農家を訪ね歩いてファームステイ。岩手県の自然栽培農家で2年間の農業研修を経て、現在は宮崎県の山間部の村で自給的農業を営む傍ら、ウェブライターなどもしています。








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