コラム

菌根菌が作物を強く育てる!その生態と増やし方を徹底解説

公開日:2021.10.07

1.菌根菌とは?

「菌根菌」とは、植物の根にくっついて、植物と互いに助け合って生きるカビの仲間。私たちが普段食べているキノコも、菌根菌のひとつです。植物と共生する菌といえばマメ類の根にコブ(根粒)をつくる「根粒菌」が有名ですが、それとはまったくの別物。根粒菌は細菌(バクテリア)、菌根菌は真菌(カビ)であるという違いのほか、根粒菌はマメ科植物としか共生しないのに対し、菌根菌は陸上の約8割の植物と共生することができます。

さまざまな菌根菌の中でも、農業分野で特に注目されているのが「アーバスキュラー菌根菌(AM菌根菌/VA菌根菌)」です。今回は、そんなアーバスキュラー菌根菌(以下、菌根菌)に関する情報をわかりやすくまとめました。

2.菌根菌の生態と主な3つの効果

菌根菌は、作物の根の内部や土壌中の広範囲にわたって菌糸を伸ばし、作物から光合成でつくられたエネルギーを受け取るかわりに、土壌中の水分や養分を作物に運んでくれます

①リン酸などの養分吸収アップ 

菌根菌は、作物の根が届かない領域にあるリン酸などの養分を効率よく吸収し、作物全体の生育を促進します。有限資源であるリン酸肥料の節約にも有効です。

②水分の輸送機能アップ 

菌根菌によって土壌水分の吸収範囲が広がるので、作物の乾燥ストレスへの抵抗性が高まります

③病害虫に対する抵抗性アップ 

養水分の吸収率向上などによって作物の免疫力が高まり、病害虫による被害が軽減されます。農薬の散布回数を減らすことも可能です。

  • ▼関連記事

高濃度菌根菌資材「マイコジェル」/(株)ハイポネックスジャパン

3.菌根菌資材の使用方法|増やし方のポイントは?

菌根菌を配合した資材は、土壌改良材の一種として一般に販売されています。使用時は、次のような点に注意しましょう。

宿主となる作物に使用する

菌根菌はほとんどの植物と共生可能ですが、アブラナ科やアカザ科など、一部の植物との共生は確認されていません。宿主植物と共生することでしか生きられないので、宿主になれない作物を栽培したり、何も栽培せずに休閑させたりすると、菌根菌の数は減少してしまいます。栽培する作物が宿主になれるかどうか、事前に確認しておきましょう。

種子や根の近くに施用する

菌根菌を定着・増加させるためには、菌と作物の根がいち早く遭遇することが重要です。資材を施用するときは、種子や根に直接触れるように散布してください。

肥料の種類や施用のタイミングに注意

土壌中のリン酸含量が高いと、菌根菌が定着しにくくなってしまいます。菌根菌資材の施用後、菌が定着するまでの2~4週間ほどの期間は、リン酸肥料の施用をひかえるようにしましょう。堆肥などの有機質肥料も菌の定着・増加を妨げることがあるので、同時施用は避ける必要があります。

施用後は潅水をひかえめに

潅水量が多すぎると菌根菌が定着しにくくなるため、施用後2~4週間ほどはやや抑え気味の潅水管理にするのがおすすめです。

殺菌剤の使用には細心の注意を

一部の土壌燻蒸剤や殺菌剤は、菌根菌の密度を著しく低下させてしまいます。菌根菌に影響のない殺菌剤を選び、施用のタイミングにも注意しましょう。

菌根菌は、2019年に初めての純粋培養成功が伝えられたばかり。大量生産が可能になれば、将来ますます身近な資材になっていくことが予想されます。今後の技術の発展にも注目です。



  • ▼関連記事





▼参考文献

○VA菌根菌の農業への利用,「化学と生物」32巻4号, 1994
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/32/4/32_4_238/_pdf/-char/ja
○土壌と植物をつなぐVA菌根菌,「化学と生物」36巻10号, 1998
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/36/10/36_10_682/_pdf
○菌根:リン酸肥料を減らせる根の秘密,平成28年度農研機構シンポジウム 講演要旨集
https://www.naro.go.jp/project/research_activities/files/1AM-kouenyoshi.pdf
○アーバスキュラー菌根菌の接種効果を決定する環境要因,「根の研究」28巻2号, 2019
http://www.jsrr.jp/journal_free/28-02.pdf

ライタープロフィール

【にっく】
農業研究所の研究員として日本全国を飛び回ったり、アフリカ・東南アジアで農業技術普及プロジェクトに携わったり…国内外の農業に関わってきた経験を持つ農学博士です。圃場作業で汗を流すのが大好き。これまでの経験と知識を生かして、わかりやすい記事をお届けします!


    
    


Facebook




Twitter