コラム
公開日:2022.03.02
マメ科の植物であるスイートピーは、甘い香りと可愛らしい見た目が特徴的で、切り花として流通している中でも特に人気のある花のひとつです。結婚式のブーケや誕生日祝いの花束にするなど、祝福の贈り物としても人気があります。
宮崎県や岡山県など温暖な地域が栽培に適している植物ですが、最近では栃木県など比較的冷涼な地域でも栽培され始めています。そこで今回は、ハウス栽培で新しい品目を増やしたいと考えている方向けに、スイートピーの栽培時期と育て方のポイント、おすすめ品種を紹介します。
イタリアのシチリア島原産のスイートピーは、温暖な気候に適したマメ科レンリソウ属のつる性植物です。スイートピーの品種は開花する季節ごとに分類されていて、 4~6月に開花する「春咲き品種」、冬〜早春に開花する「冬咲き品種」 の2つに分けることができます。
赤色、ピンク色、白色、水色、紫色など色のバリエーションが豊富で、 現在では約50色 あると言われています。 各産地のオリジナル品種 が数多くあり、とくにスイートピーの一大産地である宮崎県では産地オリジナルの品種開発が活発です。「式部(しきぶ)」というスイートピーの中では珍しい褐色の品種や冬季の日射量を活かした鮮紫色で春咲きの「逢初(あいそめ)」など新しい品種が数多く誕生しています。
△一番右の褐色が「式部」
スイートピーの「スイート」は、甘い香りを意味しているため 香りが良く、品種によっても違いが楽しめる というのも特徴のひとつです。
スイートピー栽培では、開花促進や生育調整といった目的のために 「春化処理」 を行う必要があります。ここからは、スイートピーの栽培時期をはじめ春化処理の方法や栽培を行う上で知っておきたい育て方のコツを紹介します。
● 種まき:8月下旬~9月上旬頃
● 栽培管理:9月中旬~11月上旬頃
● 収穫出荷:11月上旬~4月中旬頃
スイートピー栽培では、春化処理として 0〜2度で種子を管理する「種子冷蔵」 を行うことで本来の開花時期より早く採花ができるようになります。冷蔵期間は開花時期のタイプによって異なり、 春咲き品種では25~30日間、冬咲き品種では10~14日間 行います。
春化処理(しゅんかしょり)とは、冬の一定期間、種子を人工的に低温状態にすることで、春の開花を促進すること。
スイートピーはつる性植物のため、伸びたつるを管理しやすいように下ろして留める「つるおろし」という作業が必要となります。つるおろしのやり方は、伸びたつるを平行移動させて管理しやすい高さまで下ろす 「横ずらし」という方法が代表的 です。
スイートピーは、日射量や日照時間が不足すると 落蕾や落花が起こりやすい 植物です。蕾を正常に発達させるためには、 十分な日照時間 と 土壌の養分が不足しない ように気を付けましょう。
スイートピーの品種の選び方は、 ステム(茎)の硬いもの、花弁の厚いもの が望ましいとされています。品種選びで悩んでいる方のために、出荷量日本一を誇る宮崎県で誕生したオリジナル品種の中から厳選した3つを紹介したいと思います。
「美々」は、宮崎県の神話をもとに名づけられた「神話シリーズ」のひとつで、神武天皇が8月1日早朝に美々津から船出した時の朝日と花の色を重ねて名づけられました。春咲き性で鮮やかなピンク色が特徴。 安定した出荷 が見込めます。
「ムジカラベンダー」は、宮崎県の音楽を広めたいという思いからラテン語で音楽という意味のムジカを品種に名づけた「ムジカシリーズ」のひとつで、淡い紫色が特徴的なスイートピーです。春咲き性で、花落ちしにくく安定した出荷が見込めます。ムジカシリーズのスイートピーは、 管理作業の1/4を占める巻きひげ取りが不要 になり、労働時間の削減が期待できます。
宮崎県の尾鈴地区で誕生した「ロイヤルホワイト」は、名前の通りの美しい白色と芳香が人気のスイートピーです。春咲き性で小花が大きく、他の品種よりも 茎が太くて長い のが特徴で 希少性の高い品種 となっています。
この記事では、スイートピーの育て方のポイントやおすすめ品種を紹介しました。栽培品目を検討中の方はぜひ参考にしてみてください。
▼参考サイト
○株式会社大田花き品質カイゼン室「花のソコが知りたい!スイートピー編」
https://www2015.otakaki.co.jp/s/qc/life/20150120_01.pdf
○みやざきブランド推進本部「みやざきオリジナルスイートピー品種カタログ」
http://www.miyazakibrand.jp/brand-list/20-sweet-pea/catalog.html
○農業屋.com「スイートピー ロイヤルホワイト」
http://www.nogyoya.com/fs/nogyoya/5205448
ライタープロフィール
かくやさゆり
種苗会社で培った経験と知識を活かしライターとして活動。
家庭菜園とアウトドア遊びが趣味の半農半ライターです。農業を中心にアウトドアをテーマにしたメディアでも執筆中。