コラム
公開日:2023.08.24
パッションフルーツは夏が旬の果物です。とろんとした果肉と種のプチプチとした食感が楽しく、そのまま食べたり、ジュースやヨーグルトにかけたりとカットするだけで手軽に食べられます。育て方のポイントを押さえれば、鉢植えやプランターでも栽培可能です。この記事では、パッションフルーツのハウス栽培について紹介します。
パッションフルーツは、南アメリカ大陸を原産地とするトケイソウ科トケイソウ属の植物です。つる性の多年草で、日本には明治中期頃に伝来しました。熱帯・亜熱帯地域で栽培が盛んですが、日本国内でも沖縄や鹿児島のほか、東京や千葉でも栽培されており、国内産のパッションフルーツを購入できます。
品種は主に在来系やムラサキクダモノトケイソウなどと呼ばれる紫色系統のものと、キイロトケイソウと呼ばれる黄色系統、そして両者を交雑したものがあります。日本では「サマークイン」「ルビースター」「紫100g玉」など、耐寒性の強い紫色系統の栽培がメインです。
紫色をした果実をカットすると小さな種の詰まった鮮やかな黄色いゼリー状の果肉が現れます。糖度は17%~20%。熟したパッションフルーツは酸味が消え、芳醇な香りと濃厚な甘さが楽しめる果物です。
パッションフルーツは日本でも地植えの露地栽培が可能ですが、ハウスで栽培すれば台風や大雨の被害を受けにくいというメリットがあります。また、パッションフルーツは気温が20℃になると開花するため、ハウス内を加温調節することで栽培時期をコントロールできるのも魅力です。 ここからはハウス栽培の方法を「定植前」と「定植後」に分けてみていきます。
苗は3月の中旬から下旬に定植します。圃場には黒ぼく土など排水性、保水性ともに優れた土壌が最適です。
パッションフルーツはつる性のため、栽培には架線(棚)が必要になります。
棚仕立て法は、人工受粉や整枝・せん定がしやすく、収穫や防除も簡単です。棚は逆L字仕立て、T字仕立てなどがあります。栽植距離は畝間2m、株間は2mから3mの1条植えがおすすめです。高さ20cmから30cm、幅1mの畝を作り定植します。
新梢が棚線の上に届くまで誘引を繰り返します。誘引した主枝が隣接する苗の主枝に近づいたら摘芯し、発生した側枝を各節1芽になるように芽かきをしてから横に垂らします。 葉と枝が混み合い、薄暗い状態になると着花や結実がしづらくなるため、こまめな芽かき作業が大切です。また、過度な土壌乾燥は結実した果実が大きくなりません。敷草や敷わらで乾燥を防ぎ、適度にかん水します。
人工授粉をした後は、1結果枝に4、5個を目安に結実するよう小玉や不良果を取り除きましょう。
パッションフルーツは直接霜が当たるような場所だと葉が枯れてしまい、越冬できません。加温できるハウス栽培であれば、関東でも冬越しが可能です。最低気温を5℃~10℃に保てるよう、ハウス内を管理しましょう。また、パッションフルーツは極端な乾燥が苦手です。ハウス内をこまめに加湿し、乾燥を防ぎます。
南国の果実、パッションフルーツは中部地方や関東地方でも栽培できる作物です。ハウス栽培であれば収穫時期のコントロールや冬越しも可能です。果樹と違い、栽培から短期間で収穫できるのも嬉しいポイントです。
まだまだ珍しいパッションフルーツを育ててみてはいかがでしょうか。
▼参考文献
〇農研機構,地域戦略(亜熱帯果樹)コンソーシアム,アボカド・パッションフルーツ「栽培の手引き」リーフレット集
▼参考サイト
〇みんなの農業広場,パッションフルーツ栽培(露地栽培1年1作型)
https://www.jeinou.com/benri/vegetable/2018/04/031145.html
〇(株)川平ファーム,パッションフルーツの栽培方法
パッションフルーツの栽培方法
ライタープロフィール
高橋みさと
自然に近い場所を求めて2021年に都内から郊外へ移住。
ライター業をしながら米や野菜づくりを実践しています。
趣味は登山と外遊び。
発酵に興味があり、コンポストを利用して生ごみを捨てない生活にはまっています!