コラム
公開日:2025.11.21
近年、国内外のレストランや高級果実市場で注目を集めている柑橘類の一種「フィンガーライム(Citrus australasica)」をご存じでしょうか。小さな粒状の果肉が果実から溢れ出るユニークな見た目が特徴で、別名「キャビアライム」とも呼ばれています。
この記事では、話題のフィンガーライムについて品種や育て方をご紹介します。販売時のポイントもチェックしてみましょう。

フィンガーライムはオーストラリア原産の柑橘類です。品種が豊富で、果皮、果粒ともに色、形などさまざまな種類があります。緑色の果粒が鮮やかな「クリスタルグリーン」、気温が下がると赤みが増す「ピンクアイス」、透明感のある「サンシャインイエロー」、赤色が美しい「ジャリレッド」などのほか、果皮と果肉の色が異なる品種も多数。
爽やかな酸味とプチプチとした食感は魚介との相性が良く、スイーツやカクテルのトッピングとしての食べ方にも人気が高まっています。


フィンガーライムは樹高2m~2.5mと小柄ですが、十分な収量が期待できるため、鉢植えやハウス栽培にも適しています。苗の植え付けから実がなるまでの年数は3年~6年ほどで、温暖な地域では露地でも栽培できます。ただし耐寒性は-5℃程度が限界で、霜に弱い点には注意が必要です。安定した栽培には、施設環境による周年管理が理想的です。
土壌は水はけと通気性の良い弱酸性~中性の用土が最適です。樹勢が強く枝が混み合いやすいため、風通しを確保しながら枝を整えることが重要です。剪定時期は春の萌芽前と秋の収穫後に行い、作業時には長いトゲに注意しましょう。
開花から収穫までは約5~6か月。成長期には肥料を切らさず、ハウスでは生育の最適温度である20℃~30℃に保つことで、より安定した生産が可能になります。

フィンガーライムの販売では、収穫後すぐに出荷できる体制づくりが鍵となります。
高級レストランやパティスリーでは鮮度の高い商品が求められますが、フィンガーライムは完熟すると割れやすいのが難点です。収穫後すぐに冷蔵すれば1週間程度は保存できるため、果皮の色づきと弾力で熟度を判断し、注文を受けたらすぐに配送できる体制を整えることがポイントです。
フィンガーライムは希少性が高く、市場では1kgあたり10,000~20,000円で取引されることもあります。味だけでなく、さまざまな色や形の品種を揃えられれば、高級フルーツギフト市場やスイーツ業界への販路拡大も期待できます。
とくにSNS映えする果粒は話題性があり、プロモーションとの相性も良いため、ギフト需要を見込む販売方法の1つとしておすすめです。

フィンガーライムはまだ国産の商品流通量が少ない果物です。市場へ早期に参入すればブランド化のチャンスが大きくなります。また、省スペース、高単価、長期収穫が可能なため、施設園芸農家にとって新しく高収益を望める作物として魅力的です。
品種選定や品質管理を徹底し、飲食業界やスイーツ業界との連携販売を実現できれば、安定した収益につながる可能性を秘めています。
今まさに、挑戦する価値のある“次の一手”と言えるでしょう。
▼参考サイト
〇株式会社吉岡国光園(苗木屋)
https://www.ykken.jp/fingerlime
〇JA長野県
https://oishii.iijan.or.jp/products/noutiku02-20230927
〇フィンガーライム直販サイト「Finger Lime Japan」
https://fingerlime-japan.com/pink-ice/
〇苗木部
https://naegibu.com/
〇Plantia
https://www.hyponex.co.jp/plantia/
〇ガーデンガーデン
https://www.gardengarden.net/blog/topics/p523/
ライタープロフィール
高橋みさと
自然に近い場所を求めて2021年に都内から郊外へ移住。
ライター業をしながら米や野菜づくりを実践しています。
趣味は登山と外遊び。
発酵に興味があり、コンポストを利用して生ごみを捨てない生活にはまっています!