コラム
公開日:2018.03.07
農薬の調整を行う際に、単剤で散布することはほとんどなく、2~3剤の混合散布を行うことが一般的です。(栽培指導上は単剤散布ですが)その際問題となるのは①農薬の散布量、②希釈倍率の計算方法、③展着剤の可否・種類、④希釈する農薬の順序ではないでしょうか?
これらについて栽培指導をしてきた経験を踏まえて、順番に解説していきたいと思います。
作物ごとの「必要な」農薬散布量は様々です。イチゴ、地這い作物など葉面積が少ない作物は10アールあたり150~200リットル程度。ナス、ピーマン、トマトなどは葉面積が大きくなるので300~400リットル/10aなど、散布対象(葉面積)に十分な散布量と散布ムラがない方法を選択することが重要です。
(農薬に散布量基準が定められている場合はそれに準じます。)
例えば殺菌剤の場合、効果が高い農薬を散布しても、ムラがあるような散布方法であれば農薬が届いていない部分の菌は農薬から蒸発する水蒸気でさらに繁殖を旺盛にすることとなります。ここで「この農薬は効かない」という誤解をしてしまいがちです。
とくに「浸透移行性」がない農薬の場合は葉の表・裏から十分量をムラなく散布することが必要です。そもそも、葉が込み合いすぎて通風が悪く、農薬がかかりにくいような状態を改善することが病害を減らす大前提です。
最近は静電噴霧機の普及で農薬使用量は半分~2/3程度となり葉面の付着ムラは大幅に低減し、コスト、防除効果の両面で、さらには生産者の農薬被ばく量の減少、ハウスでは農薬散布による湿度過剰の回避効果も併せてメリットが出ています。
ポジティブリスト制度の徹底、トレサビリティの普及から農薬散布倍率(濃度)、散布時期、回数の基準遵守は必須となっています。ここではとくに希釈倍数について、最近では希釈計算が簡単にできる無料アプリが多く使われています。
単純に希釈倍数と水量から薬量を計算するだけであれば別添の希釈表を参考にしてください。
一度希釈した農薬は保存ができませんので必要量+5%程度が適量です。
作物によってはせっかく農薬が噴霧されても作物表面のロウ物質や毛茸(細かい毛)により付着が悪い場合があります。その場合農薬の表面張力をなくし、隅々まで拡散・浸達するよう展着剤を添加する必要があります。展着剤は一般的な台所洗剤と似たような性質があるため代用が効くと誤解する方がおられますが、農薬の防除効果を上げるための様々な特性が付加されていますので専用の展着剤を使用してください。
展着剤には単純に拡散・展着を向上させるだけのものと、「浸透性」を高める機能性展着剤、「耐雨性」を高める固着性展着剤などがあります。作物・使用目的に合わせて使い分けてください。
また、乳剤、フロアブル剤には展着剤が入っているので、改めて展着剤は不要との意見もありますが、これらは希釈の際に成分が溶けやすくするために添加されているものですので、散布後の浸透性を高めるものとしては不十分といえます。
農薬を希釈する順序は「て・に・す」と覚えてください。
はじめに水の表面張力をなくし薬剤が溶けやすくするために「て・展着剤」、次に溶けやすく製剤されている「に・乳剤」、最後に単体では溶けにくい「す・水和剤」となります。これを試しに逆順にしてみると、この順序の必要性がお解りいただけます。