コラム
公開日:2025.12.17
※硫安は皮膚刺激を感じる場合があるため、施肥作業の際は手袋の着用をおすすめします
※本記事は2018/8/17に更新した記事をリニューアルした記事です
硫安(りゅうあん)という資材は、野菜作りをしていると、使ったことは無くとも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。硫安は、賢く使えば、「安価で即効性の期待できる優れた窒素肥料」です。
一方で、普段使っている肥料に不満がなければ、わざわざ調べて使う機会は少ないかもしれません。
そこでこの記事では、硫安の特徴や効果的な使い方についてわかりやすく紹介します。

硫安(りゅうあん)とは、硫酸とアンモニウムが結合した硫酸アンモニウムの結晶から成る化合物で、窒素20.5%(質量)が成分保証されている「アンモニア態窒素肥料」です。
農業現場では、安価で即効性の期待できる優れた窒素肥料として使用されています。
単肥なので施肥設計が容易です。価格は、20kgあたり1,000円程度(※地域・時期により変動)と、比較的安価な点もうれしいポイント。
一方で、施肥後は土壌に硫酸根が残るので土壌pHの低下に注意が必要です。また、空気中の湿気を吸収して溶け出すため、密閉して保管します。

ここからは硫安の特徴を分類別にご紹介します。
無機質肥料:無機質からなる肥料で一般に化学肥料と呼ばれています。紛らわしいものに化成肥料があり、こちらは肥料取締法の1分類で数種類の肥料を化学的に加工して製造した肥料です。
普通肥料、単肥:化学合成された普通肥料に大別され、硫酸アンモニウムという単一成分からなるので単肥に細分されます。
生理的酸性肥料:肥料成分を植物が吸収した後に酸性の副成分を残す肥料です。硫安の場合は硫酸根(硫酸イオン)が残ります。
即効性肥料:施肥後すぐに効果が現れます。

窒素は植物が最も必要とする肥料成分であり葉や茎の成長に欠かせません。
硫安は元肥として使っても良いのですが、即効性があるため、追肥に使うと効果的です。
粒のまま用いるのはもちろん、500倍に希釈(※1)して液肥として用いるとさらに即効性が増します。
また、作物の生育が悪く下葉が黄色っぽくなるような窒素不足のサインが出ている時に使うと生育回復に効果的です。
その反面、使いすぎると根の傷みによる生育の悪化や病虫害の発生を招く恐れがあります。
加えて、炭酸カルシウム(石灰)などアルカリ性の肥料と混ざると肥料成分がアンモニアガスとして揮散してしまうため、同時に施用しないよう注意しましょう。
硫酸根による土壌pH低下の畑地では、十分な石灰施用が行われていることが多いため、それほど心配ありませんが、施肥量が多く、降雨の無い施設栽培では問題となることがあります。
硫酸根が気になる場合は事前に炭酸カルシウムのような中和資材を用いるか、硫安の代わりに即効性の窒素肥料で生理的中性肥料の尿素を使うのも1つの手です。
※1.作物や生育段階によって適正濃度は異なるため、少量から試すようにしましょう。
農業では肥料として大活躍の硫安ですが、実は医療の分野でも血液から抗体を精製するのに一役買っています。
塩析という手法で、硫安の飽和水溶液に血液を少しずつ加え、濃度に応じて血液中のタンパク質を沈殿させることで目的の物質を回収しています。硫安以外にも様々な塩が使われていますが、水によく溶け安価な硫安が最もよく使われています。
硫安は、即効性を活かし、追肥や窒素不足時に適切な量で使用することで、安定した生育管理に役立つ肥料です。野菜の顔を見てちょっと窒素が足りなさそうだなと思った時にはぜひ一度使ってみてください。見る見る大きく成長してくれることと思います。
▼参考サイト
肥料の農家購入価格情報・無機肥料単価(一般財団法人肥料経済研究所)
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。