コラム
公開日:2018.12.12
オオタバコガの幼虫は葉を食べるだけでなく、茎や果実、花蕾などに1cm程の穴を開けて中身をどんどん食べていく嫌らしい害虫です。しかも植物内に潜り込むので、発見が遅れたり農薬が効き難くかったりするという厄介さを併せ持っています。
オオタバコガには、よく似た害虫としてタバコガやハスモンヨトウなどのヨトウムシ類がいます。特にオオタバコガとタバコガは見た目だけでなく生態もそっくりですが、害虫ごとに防除方法は異なり、使用する農薬も変わってくるので、しっかり見分けることが重要です。
そこで今回はオオタバコガとよく似た害虫の見分け方と、オオタバコガの具体的な防除方法について紹介していきたいと思います。
オオタバコガの成虫か、タバコガの成虫かをパッと見で判断することは困難ですが、よく見ると翅(はね)の模様が異なります。翅を広げた状態で見た時に、前翅の外側にある黒い縦線(前翅亜外縁線)の下方がギザギザしている場合はタバコガ、縦線が不明瞭な場合はオオタバコガです。
また、一ヵ所に両種のフェロモントラップを置くと、正しいトラップに誘引されるので、この方法で見分けることもできます。
幼虫はオオタバコガもヨトウムシ類も共通して、後ろ足の数が4対あります。
体に黒色の点が並び、そこから太い毛が出ていればオオタバコガやタバコガです。
毛が出ていなければヨトウガやシロイチモジヨトウ、黒色の点が頭の後ろに1対だけあればハスモンヨトウです。
タバコガとの見分けは、タバコガがナス科(トマトなど)のみを食害するのに対し、オオタバコガは他の野菜や花も広く食害する点がポイントになります。
肉眼での見分けは困難で顕微鏡観察が必要になるので、県の農業試験場などで確認してもらうと確実です。
オオタバコガの卵は直径0.4mm程で淡黄色をしています。
ヨトウムシ類の卵との見分けは困難ですが、ヨトウムシ類が沢山の卵を一塊に産むのに対し、オオタバコガやタバコガは卵を1つずつ葉裏などに産み付けていきます。
ハウス栽培の場合には4mm以下の防虫ネットで侵入を防ぎ、見つけ次第すぐに補殺します。
補殺が追い付かないようならば、多発する前に農薬を使いましょう。薬剤に対する抵抗性の発達を防ぐために、複数の農薬でローテーションを組むことが基本です。
卵や土中の蛹、植物内に潜り込んだ幼虫には農薬は効き難く、老齢幼虫ほど効きが悪くなるので、早期発見が特に重要です。
天敵には寄生蜂などがいますが市販されていません。地域に生息する土着天敵になりますので、利用する場合には土着天敵を殺さないよう心がけましょう。
生物農薬としては、バチルス・チューリンゲンシス(BT)という細菌を利用した各種BT水和剤が販売されています。BT毒素によって殺虫します。人畜には安全性の高い農薬です。
また露地栽培での使用が原則的ですがフェロモン剤を利用した成虫の交尾阻害も効果的です。フェロモン剤は農薬の一種ですが有機JASでも使用が認められている人や環境に優しい農薬です。
農薬以外の方法としては、夜に黄色蛍光灯を点灯することで成虫による夜間の吸汁や産卵を抑えられます。
植物に潜り込むオオタバコガは駆除が難しく、大量発生すると作物に甚大な被害をもたらします。大切に育てた野菜や花を穴だらけの無惨な姿にされないように普段から入念な観察を心がけ、早期発見と防除の徹底に努めましょう。
▼参考文献
・オオタバコガの発生と見分け方、農林水産省、植物防疫害虫情報、vol.55, 1998, p.4-5.
・ヨトウムシ類の見分け方と防除、大阪府、大阪府病害虫防除、2001.
・愛知病害虫情報、野菜・花き共通、タバコガ類、愛知県農業総合試験場 環境基盤研究部 病害虫防除室
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。