コラム

スマート農業技術の開発・実証プロジェクト始動!農研機構や誠和など9機関によるコンソーシアム設立

公開日:2019.09.10

農研機構や株式会社誠和など9機関で構成される「施設園芸コンテンツ連携によるトマトのスマート一貫体系の実証公開見学会」が2019年7月31日、(株)誠和の本社内及び実証農場トマトパークにて開催されました。
本プロジェクトは農林水産省が委託した平成30年度の補助事業「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」であり、2019年4月1日に開始しています。
本発表会は公募2週間で満員になるほどの人気。多く農業関係者やメディアが高い関心を示しました。

1.「測定したデータを活用」!農業も数字の時代へ

まず始めにプロジェクトの実証代表である農研機構の礒崎氏の挨拶。
>>20年前、三重県でトマトの生産目標を40トンだというと、失笑をかうレベルでした。しかし今40トン採るといっても誰も驚かないレベルに達しています。
と同時に、新たな課題も見えてきました。データをどう取り扱うのか?最近の施設はとても優秀で平均温度やCO2濃度、窓の開閉など分刻みでデータが出ます。また、雇用が拡大されたので、多いところは100人ものパートさんを雇っている。すると気持ちよく働いてもらうための職場環境を整えることにも時間を使うようになってきました。また、生育調査を真面目にやる方が多いので毎週草丈を測ったり、契約栽培をしている方は数字に追われたり、色々な意味で数字に囲まれて仕事をしている状況です。この“数字”について私の実感としてはまだうまく使いきれていない。そこで、本事業ではこの“数字をうまく使いこなすこと”を目標にしています。

2.加速化プロジェクトとは?概要・メンバー・目標及び13の取組み

次にプロジェクトの進行管理役である株式会社誠和の統轄本部長大出氏より、プロジェクト内容やその現状と実証事例の紹介、今後の課題について発表がありました。
>>施設園芸とは人間の知恵や新しい技術を用いて、天候に左右される野菜や果物といった成果物を安定生産すること。昨今、環境の可視化が浸透してきているが、今回の取組みはさらに前に進める“データの活用”。測定した環境データをどう環境の改善に活かしていくのか、どう販売に活かしていくのかということに取り組んでいきます。

>>私たちコンソーシアムにおけるスマート農業の定義とは、技術の可視化、作業の数値化、ロボットなど作業の自動化をITとAI技術を用いて発展させていくことです。これにより国のソサエティ5.0の実現します。これはまさにデジタルトランスフォーメーションです。AI技術を活用することによって従来の産業そのものを、あり方を変えていきます。





本コンソーシアム立ち上げの目的

「さらなる高収穫量、コスト削減、生産性の向上」




コンソーシアムのメンバー

代表機関:農研機構
メイン実証農場:(株)トマトパーク
補助農場:(株)トマティーナ、日本デルモンテアグリ(株)、(株)東馬場農園
IT技術:(株)KCS
AI技術:みずほ第一フィナンシャルテクノロジー(株)
栽培コンサルタント:(株)デルフィージャパン
進行管理役兼補助農場:(株)誠和




本実証プロジェクトの目標

生産から販売までの一貫体系において、収量10%の増加、秀品率5%の増加、販売単価20%の向上、労働時間約10%の削減及び生産コスト10%の削減、労働生産性20%向上

※今回の実証は2017年作(2017/8/17~2018/7/20)と比較




13のテーマに沿ったコンソーシアムの取組み

1.インフラコンテンツ、プロファインダークラウドの強化
2.【世界初の技術】ハウス内のCO2収支で光合成量を推定
3.ハウス内の環境や生育などのデータをもとに収量予測
4.ハウス内環境データをもとに病害虫発生予測
5.ハウス内環境を均一にするための多点計測(環境ムラの可視化)
6.環境制御機器ネクスト80のIOT化で他コンテンツとの連動・遠隔動作でさらなるスマート化
7.【農林水産省も注目】人の管理を可視化・数値化
8.2020年の食品衛生法「ハサップ」の義務化を見据えた成果物の流通
9.気象データから市場の販売需要を予測(日本気象協会の「売りドキ!予報」をベース)
10.会計専門企業(株)TKCと連携した経営コンサルティングサービス
11.【農業から他産業への革新】石油残量の可視化
12.人工知能AIによる分析・アドバイス等の各種自動化
13.ロボット(プリバ社開発)を使った手作業(摘葉作業)の自動化、労働時間の削減

図にすると以下のようになります。

※参照:発表会配布資料

※青が生産(供給)植物に密接する話。グレーは需要、市場でどれくらいのトマトが必要とされているのか。

このように生産現場のみならず、販売・流通、会計まで「一貫体系」の様々な取組みが行われます。

3.スマートウォッチで労務管理!農家必見<気になる4選>

ここからは13のテーマの中から生産者の方々に関連する“気になる取組み”について詳しくご紹介していきます。




<気になる💡1>
2.【世界初の技術】ハウス内のCO2収支で光合成量を推定する技術

施設園芸では植物の光合成に必要なCO2を(炭酸ガス)発生器を使って与えます。
しかし、CO2は空気と同じで窓が空けば流出してしまいます。目に見えないものなので植物が吸って減ったのか、外に流失してしまったのか、人の感覚では分かりません。
そこで、今回東京大学と協力し、CO2の施用量と換気による排出を基に光合成量を推定する技術が開発されました。

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<気になる💡2>
4.ハウス内環境データをもとに病害虫発生予測

農業に害虫や病気はつきもの。多くの農家が頭を悩ませます。しかし、もしこの病害虫の発生が予測できたら?とても助かりますよね。農薬を減らすことができます。また、減農薬で作物の単価を上げることも可能かもしれません。今回のテーマではトマト栽培において致命的な「コナジラミの発生予測」について取り組みます。農家にとってはとても期待値の高い取組みです。

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<気になる💡3>
7.【農林水産省も注目】人の管理を可視化・数値化

従来の農業現場で人の管理・労務管理は「収穫作業は、何時にスタートして何時に終わったか」を紙に記録して、PCに打ち込んでいました。
この作業が簡単になればもっと多くの人が労務管理を行うのではないか?そこで目を付けたのが今多くの方が身につけているスマートウォッチです。作業時間を簡単に登録でき、データもPCに送ることができるため、従来の紙に書く作業もPCに打ち込むといった面倒な作業もなくなります。農業界における働き方改革になりそうです。

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<気になる💡4>
10.会計専門企業(株)TKCと連携した経営コンサルティングサービス

昨今、農林水産省が進めている“農業の法人化”が非常に増えています。法人化に伴い、会計の知識がより一層必要になってきますよね。また、会計ソフトだけあっても日々変化していく金融情勢についていくのは困難です。そこで(株)TKCと協力して、「FX農業会計」というソフト(TKCが2018/10発売済)を使い、全国の税理士がサポートしてくれる「経営コンサルティングサービス」を展開します。金融関係の人でも“金融情勢を把握するのが難しいという”時代に、農業に特化した経営サポートが受けられるのは魅力的ですね。

まさに農業が進化していくための取組みですね。今後の成果に期待できるのではないでしょうか。
説明会の後、実証農場であるトマトパークの見学会が行われました。

4.実証農場「トマトパーク」がすごい!最先端の設備を見学

今回の実証農場である「トマトパーク」は研究、教育、情報発信の目的で建てられた(株)誠和の研究生産農場です。トマトパーク内には栽培室が5部屋あり、現在栽培されているのは大玉トマト、ミニトマト、高濃度トマトの3種類。1番の魅力は“日本で最高レベルの設備がそろった施設”だということです。
一般公開の見学会も行われているため、興味を持たれた方は足を運んでみてはいかがでしょうか。
栽培室や設備についての案内をしてもらえるので、最新設備を体感できますよ。

※作物がある10月以降の見学がおすすめ(有料)詳しくは(株)誠和まで。





今回取材させていただいたのは…

「株式会社トマトパーク TOMATOPARK Co,Ltd.」
◆所在地:〒329-0414
 栃木県下野市小金井1963(農場)

※「施設園芸コンテンツ連携によるトマトのスマート一貫体系の実証」に関するお問い合わせ





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【施設園芸.com編集部】