コラム

【企業インタビュー】「収量予測ソフト」が日本の農業を変える。誠和が目指す農業の流通革命

公開日:2019.05.31

施設園芸業界の先駆的な総合メーカーとして40年以上業界をけん引してきた株式会社誠和が、2019年夏より青果物の生産・販売計画や、高収量栽培のための環境改善に貢献する「収量予測ソフト デモ版」のサービスを開始します。「収量予測ソフト」とは一体どのようなものなのでしょうか?
今回は、企業インタビュー「誠和」の第二弾として、「収量予測ソフト」が発表されたマッチングフォーラムの様子を取材した内容をご紹介します。

1.最大収量を実現する「収量予測ソフト」とは?

発表は株式会社誠和の研究開発部長、大出浩睦さん。
収量予測ソフトの開発経緯について
「現在日本の農業が抱える問題に“食料自給率の低さ”があります。最近ではフードロスも問題になっていますね。今回誠和が着眼点を置いたのは、“従来の勘と経験による農業は具体的な栽培環境の改善が難しく、収量が最大化されていない。また、収量の予測ができず販売計画を立てることができない”こと。そこで、ICT技術の導入が進んでいる現在の農業界において収集したデータを基に将来の収穫量が予測できる収量予測ソフトをプロファインダークラウドへ実装することになりました。」(大出部長)

収量予測ソフトを使うことにより、生産者は栽培上で改善するべき点が分かり、収量を最大化させるための環境作りができるようになる。また、販売計画が立てられるようになるため、安定した供給ができるようになるという。


誠和は2011年に見える化に着眼点をおき、環境モニタリング装置「プロファインダー」の開発・販売を行い、2018年8月にプロファインダーのクラウド化(IOT化、スマート化)に着手した。
このプロファインダークラウドの新しいコンテンツとなるのが今回発表した「収量予測ソフト」だ。植物のもつポテンシャル(潜在的な収量能力)を測り、最大どれくらいの収量が採れるのか知ることができる。

使い方は、収量予測ソフトにハウスのCO2濃度や平均温度を入力。すると、“本来採れるはずの収量(収量予測)”と“現在の収量計画”に、どれくらいの差があるのかを見ることが出来る。そして、“本来採れるはずの収量”に近づけるためには、具体的に何をどのように改善したら良いのか知ることができる。どの環境因子(温度、湿度、CO2など)を変えると、最大収量に近づけられるのかを確認できるツールだ。


「例えば、トマトの生産量が少なく市場価格が高騰すると「ちょっと高いからやめようかな」と購入をためらう消費者もいるでしょう。不安定な生産は消費者の購買意欲にも影響を与えているのです。消費が安定しなければ生産者の経営も安定しません。しかし、計画的な生産ができるようになれば、市場価格も消費安定します。作り手である生産者にとっても、買い手である消費者にとっても喜ばしいことですよね。」
「誠和はこれからも生産者の栽培サポートをするだけではなく、農業経営一貫体系のシステム構築を目指します。」
(大出部長)

2.トマトパークで50トン超え!収量予測ソフトの実証と将来の可能性

次に、この収量予測ソフトを使った実証試験についての発表があった。
試験場は誠和の「トマトパーク」。
トマトパークとは誠和の敷地内にある研究生産農場だ。総面積18000㎡、栽培面積8980㎡を誇る日本で最高レベル設備の農場。トマトパークは「次世代の生産者の教育施設」でもあり、トマトパークアカデミーというトマト施設栽培のスペシャリストを育成する機関では、最先端の施設で世界トップレベルの知識と技術を学ぶことができる。(※一般の方も見学可能)

このトマトパークで実際に「収量予測ソフト」を使った栽培を行った結果、
「2017年の作では大玉トマトが安定して50トン(10aあたり)採れるようになりました。(2作目)最も良い成果は大玉トマト57トン。ミニトマトではトマトパークの研修生が30トン超えの成果を出しました。」
「予測は54トン、実績は50トンでした。もちろん、ハウスの大きさ、フィルムなど細かな要因もありますが、高い精度で予測が可能なのです」
(大出部長)

3.生産者と消費者の安定は”流通革命”にあり

予測収量と目標収量の差が分かり、その差を埋めるためにはどの環境因子を変えたら良いのか分かると、「無駄な設備投資を避ける事ができる」という。また、生産量がある程度読めるようになるため、販売計画が立てられるようになる。これにより、生産者は安定した価格で市場へ供給でき、消費者は安定した食生活を送ることができる。

このように、生産者が具体的な環境改善の気づきを得て、何をどう変えればいいのか分かるようになることで“流通改革の可能性”があるという。



  • ▼農機具情報

4.収量予測【精度95%に】向けて

最後に
「収量予測ソフトも真呼吸も、これから多くの生産者に使っていただき、実際のデータを集め、改良を重ねていく中に収量予測の最終的な精度を95%にもっていく予定です。計画的な高収量が採れるようになれば消費者の安定した食生活につながり、生産者の経営も改善されます。この好循環サイクルを作り出すことが、経済の持続的発展につながるのです。これは、農家や生産者の話だけではなく、消費者の生活に関わってくる可能性の大きな技術なのです。
データ活用が始まったことは日本の農業の夜明けです!変わろう農業、変えよう農業!」
(大出部長)
と力強く締めくくった。






収量予測ソフトの「デモンストレーション版」を体験できます 株式会社誠和(公式サイト) https://profindercloud.seiwa-ecosys.jp/Login/?utm_source=seiwa&utm_medium=hp&utm_campaign=header



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今回取材させていただいたのは…

株式会社誠和 研究開発部
部長 大出 浩睦さん

元銀行マンという異色の経歴。
「農業に変革を!」との大きなビジョンに向けた強い意志と、熱い情熱がひしひしと伝わってくる。社長や部下に対するリスペクト精神も熱い。一方、「おもしろいは正義!」をモットーに自らが先頭をきって明るく何でも言い合える職場の雰囲気作りを大切にしている。ユーモアに溢れ接する人みなを笑顔にしてくれる温かい方だ。
好きなアイドル:乃木坂46

施設園芸.com編集部より

※2019年2月26日(火)<SIP次世代農林水産業創造技術「収量や成分を自在にコントロールできる太陽光型植物工場」マッチングフォーラム>での発表会取材



ライタープロフィール

【施設園芸ドットコム 編集部】
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