コラム
公開日:2020.02.19
確定申告をするときに多く人が一番に感じることは、「何をどうしらいいの?」という心配や不安の声です。栽培方法や農機の扱いなど、農業の知識は教わっていても簿記に関する知識はあまり持っていない、という方も少なくありません。
この記事では、新規就農で個人事業主になった方や初めて確定申告をする方のために、「確定申告の基礎知識」について解説していきます。
所得税の確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額とそれに対する所得税の額を計算し、源泉徴収された税金や予定納税額などがある場合には、その過不足を精算する手続です。
引用:国税庁ホームページ
個人事業主として確定申告をするときには、白色申告か青色申告かを選択することになります。
白色申告は簡易帳簿でつけるので比較的手間がかかりません。青色申告は複式簿記で帳簿をつけなければならないので手間はかかりますが、税務上では白色申告よりも多くのメリットがあります。
青色申告・白色申告のメリットとデメリットについては以下のとおりです。
メリット | ・最高65万円の特別控除を受けられる(※翌年3月15日までに提出が必要) ・親族の給与を必要経費にできる ・赤字を3年間繰り越せる ・30万円未満の固定資産が全額経費になる ・自宅などの経費が一部事業費用になる |
・事前の申告が不要 ・青色申告ほど手間のかからない記帳で申告できる ・配偶者は最高86万円、15歳以上の親族は最高50万円が控除される |
デメリット | ・事前の承認申請が必要 ・複式簿記で記帳する必要がり、手間がかかる |
・青色申告ほどの優遇が受けられない |
青色申告をする場合は、青色申告を始めようとする年の3月15日まで、もしくは、その年の1月16日以降に開業した場合は開業後2ヶ月以内に管内の税務署に「青色申告承認申請書」を提出します。
白色申告の場合は申請の必要ありません。
確定申告の基本的な流れは、
(1)売り上げを計算する⇒(2)経費を差し引く⇒(3)控除を差し引く
となります。つまりは、『売り上げ-(経費+控除)』という計算方法から所得が求められます。そして所得から税金が求められます。
この確定申告の流れは個人事業主のみならず、一般的にもこのような流れとなります。ですが、農業の場合は(1)と(2)の勘定項目が農業に関するものとなっているのが特徴です。詳しく見ていきます。
(1)売り上げを計算する
農業で得た収入を合計します。
▼ 収入になるもの
・販売金額・家事・事業消費金額(自分たちで消費した作物分)・雑収入・農産物の棚卸、他
(2)経費を差し引く
収入を得るために支出した金額を収入から差し引きます。
▼ 経費になるもの
・雇用費・小作料・賃借料・減価償却費・貸倒金・利子割引料・租税公課・種苗費・肥料費・飼料費・農具費・農具衛生費・修繕費・雑費、他
※畑作・園芸や畜産・酪農をしているかで該当してくる勘定科目は異なってくるので、該当する科目に経費を記入します。もし、該当する科目がない場合には、経費欄の中に自分で新しい科目を作ることも可能です。
(3)控除を差し引く
控除となる保険料などを差し引きます。
▼ 控除になるもの
・国民年金保険料・国民健康保険料・生命保険
その他の控除項目については国税庁の公式HPで確認ができるのでチェックしてみてくださいね。
国税庁ホームページ
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei.htm
消費税10%引き上げにより、帳簿への記帳方法が変更になりました。
課税事業者となる農家の方は、消費税に関することも併せて帳簿へ記帳する必要があります。
また、”軽減税率対象品目の取引がある場合は、税率ごとに区分して記帳(区分経理)しなければならない”というルールがあります。
令和2年分の確定申告から、65万円の青色申告特別控除を受けるための方法が変わります。
(1)青色申告を行う際、複式簿記による記帳を行い、記帳に基づいて作成した貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付し、期限内に提出する。
(2) (1)を行っており、かつ①e-Taxによる申請、もしくは②電子帳簿保存を行う。
上記(1)と(2)を行うことで、青色申告特別控除を最高65万円受けることが出来ます。
電子帳簿保存法の承認申請書を帳簿の記帳を開始する3か月前、もしくは新たに開業した場合は業務開始の2か月を経過する日までに税務署へ提出する必要があります。
また、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の認証を受けているソフトウェアを利用する場合は、承認申請書の記入事項や書類を一部省略することが可能です。
ここまで確定申告の基本的なことを説明してきましたが、確定申告をするためには普段から記帳をしなければなりません。確定申告の直前になってはじめると、必要な領収書がない、何の領収書か分からない、計算が合わない…なんて事になったら大変です。
もっと簡単に記帳や確定申告をしたい!という方は、確定申告用のソフトやインターネットを使用すると簡単に記帳・確定申告書類作成ができるのでおススメです。
農業の記帳や確定申告書類作成に対応しているソフトは以下の通りです。
◆ 会計freee(freee株式会社)
※30日間無料体験あり
◆ 弥生会計(弥生株式会社)
※デスクトップアプリ版のみ農業所得が対応
※無料体験版あり(使用機能制限あり)
◆ やるぞ!青色申告(株式会社リオ)
※やるぞ!青色申告2020 節税申告フルサポートパックのみ農業所得が対応
◆ FX農業会計(株式会社TKC)
◆ Money Forwardクラウド(株式会社マネーフォワード)
※30日間無料体験あり
◆ らくらく青色申告農業版(株式会社セーブ)
※無期限の無料体験あり(使用機能制限あり)
◆ 農業簿記11(ソリマチ株式会社)
※無料体験版あり(使用機能制限あり)
◆ かんたん農業会計ソフト(出版:農山漁村文化協会)
※CDソフト付の解説書
その他、「エクセル簿記(農業用)」というフリーソフトもあります。
ソフトを使えば、簿記の専門的な知識がなくても簡単に記帳ができます。ソフトによっては勘定項目も自動で振り分けてくれるなど、初めて確定申告をする人にとって嬉しい機能もあります。
無料で使用できるソフトや、“お試し期間”があるソフトもあるため、試しに使用してみて自分に合うソフトを探してみるのもよいですね。
国税庁のHPからインターネットで確定申告をすることができます。
税務署に行く手間もなく、24時間いつでも利用できるところが大きなメリットです。
「確定申告書等作成コーナー」へアクセスし、画面の案内に従って金額などを入力していくだけで簡単に申告書を作成することができます。
作成した申告書はe-Tax(データ送信)または郵送で提出できます。
※e-Tax(データ送信)には、マイナンバーカードを使った「マイナンバーカード方式」と、ID・パスワードを使った「ID・パスワード方式」の2種類あります。
確定申告をすることで、一定期間の売上や経費などの数字を見て、経営状態をきちんと把握したり、次年度の生産計画を立てられるというメリットがあります。ソフトやインターネットでの手続きもあるので、がんばって挑戦してみてくださいね。
▼参考文献
〇令和2年分の所得税確定申告から青色申告特別控除額・基礎控除額が変わります!!,国税庁HP
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/h32_kojogaku_change.pdf
▼参考サイト
〇農業経営,農家の家計簿
https://noukafp.net/2019/01/23/kakuteishinkokukeihi/.html
〇帳簿の記帳のしかた-農業所得者用- ,国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/kichou05.pdf
〇令和元年分青色申告決算書(農業所得用)の書き方,税務署
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2019/pdf/023.pdf
〇No.2072 青色申告特別控除,国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
〇JIIMA認証情報リスト,国税庁
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/11.htm
〇電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】 Ⅲ 申請手続等【提出時期】,国税庁
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07/03.htm#a034
ライタープロフィール
【施設園芸ドットコム 編集部】
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