コラム

【種苗法改正】何が変わる?農家が知っておきたいポイントを解説

公開日:2021.02.25

種苗法の一部を改正する法律案が、衆参本会議において可決され令和2年12月2日に成立、令和3年4月から施行されます。成立までは問題点などについて賛成・反対それぞれの意見が交わされましたが、今回の種苗法改正では何が変わったのでしょうか。 わかりやすく解説します。

1.種苗法とは?

種苗法は、農産物など植物の新品種の育成者を保護するために、1978年に制定された法律です。新しい品種を開発した人は、その品種を登録することで育成する権利(育成者権)を占有することができると定められています。いわゆる植物における特許制度のようなものです。

なお、名前が似た法律に、都道府県に米や麦、大豆の種子の生産・普及を義務づけた「種子法(主要農作物種子法)」がありましたが、2018年に廃止となっています。

2.種苗法の背景

今回、種苗法が改正された背景には、近年日本で開発したブドウやイチゴ、サクランボなどの品種を、無断で海外に持ち出して栽培し他の国に輸出するなど、日本からの農産物の輸出や農業の発展に支障が生じる事態が起きているからです。

そのため、今回の改正では、育成者権者の意思に応じて海外流出の防止などの措置ができるようにすることと、育成者権を活用しやすくするために、品種登録制度の見直しが図られています。

3.種苗法改正のポイント

今回の改正のポイントは大きくわけて2点です。

①栽培地域の指定

まず1点は、品種の開発者が種や苗を輸出する国や栽培する地域を指定できるようなったことです。これに違反して、それ以外の国に、故意に持ち出すなどした場合には刑事罰や損害賠償の対象になります。

②自家増殖の許諾

もう1点は、農家が収穫物から種や苗を採って、次の栽培に使用する自家増殖を行う際には、品種開発者の許諾が必要になったことです。

これまで改正に反対してきた人たちは、許諾の際に支払う許諾料が高額になったり、手続きの負担が増えることを懸念していました。それに対して農水省は、許諾が必要になるのは、国に登録された登録品種だけで、多く自家増殖が行われているの品種に影響がないことや、登録品種は国の研究機関や都道府県が開発した品種が多いため、許諾料が高額になることは考えにくいと説明しています。また、手続きについてもひな形を用意したり簡素化したいとしています。

改正種苗法で保護される品種は、新たに開発されて登録された「登録品種」に限られます。在来種を含むそれ以外の一般品種の利用は制限されていません。また、登録品種であっても家庭菜園レベルであれば栽培可能です。登録品種については、農林水産省の品種登録ホームページに一覧が掲載されているので、確認してみて下さい。





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▼参考サイト

○種苗法の改正について,農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/shubyoho.html
○サクサク経済Q&A 種苗法の改正で何が変わる?,NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/special/sakusakukeizai/articles/20201207.html

ライタープロフィール

【都良TORA(田口 忠臣)】
北海道在住のフリーライター。
6次産業化やグリーンツーリズム、農産加工品開発のコンサルティング・ブランディングを行う仕事をしていたことから、その知識を活かして食や観光・農業に関する記事を書いています。
保有資格:北海道観光マスター、食生活アドバイザー、日本酒ナビゲーターなど









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