コラム

話題の食用花「エディブルフラワー」を水耕栽培するeco農園を取材!自家発電・自家消費でエコな農業

公開日:2022.07.13

こんにちは、施設園芸ドットコム編集部です。健康意識が高まる今日この頃、「写真映えして栄養価も高い!」と話題になっているのが、食べるように作られた花(食用花)である『エディブルフラワー』です。約70種類以上あると言われているエディブルフラワーの中でも、『ビオラ』にはポリフェノールが多く含まれており、含有量はワイン、アサイー、ブドウの約3倍!栄養価が高い食材です。 今回は、滋賀県甲賀市でエディブルフラワーをはじめ、リーフレタスなどの水耕栽培を行っている「eco農園~(株)ソーラーアグリイノベーションズ~」を取材しました!eco農園では自社蓄電池システム『ソーラーバンクシステム』を使い、太陽光+LEDを活用した、スマート農業に取り組んでいます。環境にやさしい、エコな農業への取組みにも注目です!

1.LEDを活用した室内栽培施設『eco農園』とは?

まずは栽培担当の坂本さんにお話を伺いました。



●ECO農園について

有限会社本郷工業が、“自社の太陽光蓄電池システムを使ってスマート農業を始めよう”と考えていたときに「100%人工LEDを活用した農薬不使用で栽培ができる農法がある」と知り、植物工場「eco農園」を建設しました。 2020年の6月から試験栽培を始め、今年で2年目になります。私たちはもともと本郷工業の従業員なので栽培経験は一切ありませんでしたが、水耕栽培設備のメーカーからも丁寧な指導をいただくことができ、安定した栽培ができるようになりました。




●エディブルフラワー栽培をはじめたきっかけ

通常の花き栽培では農薬使用が必須と聞きますが、eco農園は限りなく隙間をなくした室内栽培型の施設なので、外部からの害虫侵入を防ぐことができています。ゼロではありませんが、露地栽培やハウス栽培に比べるとかなり少ないので、栽培時農薬不使用で安心・安全な栽培が可能です。

この特性を活かして、今注目のエディブルフラワーの栽培を始めることにしました。エディブルフラワー以外にも、リーフレタスを中心にベビーリーフやラディッシュ、ハーブ類を中心に30種類ほどの野菜を栽培しています。

2.食用花「エディブルフラワー」の栽培方法と販路

eco農園ではビオラ、なでしこ、バーベナなど5種類ほどのエディブルフラワーを栽培しています。園内は3つのフロアに分かれており、全部で200平米。5段の栽培棚で多段栽培することによって800平米の広さを確保することができています。



●エディブルフラワーの栽培方法について

室内は常に20~25℃、春の気候に設定しているため周年栽培が可能です。播種から約2ヶ月で花が咲き、収穫できるようになります。品種によっても異なりますが、収穫期を迎えてから約1~2ヶ月収穫し続けることができます。野菜は一度収穫したら終わりですが、花は収穫が続くため弱っている花や背が伸びてしまった花の剪定をこまめに行っています。

栽培管理では、温度や湿度、土の代わりとなる養液の濃度を毎日チェックして一定になるように管理しています。室内の環境は自動制御しているため大きな苦労はありません。しかし、植物は生き物ですので人の手で管理することも沢山あります。何より「愛情をもって世話をしないと元気できれいな花は咲かない」と日々感じています。上手く発芽しなかったり、花の元気がないと「愛情が足りなかったのかな?」と反省し、次の成功に活かすようにしています。

※発芽率は60~80%。品種によって異なります。





●LEDの効果や重要性について

植物が光合成するために必要な光は、波長の長い赤い光と、波長の短い青い光ですが、LEDはこの波長の光を出しやすいのが特徴です。また、白熱電球や蛍光灯に比べて消費電力が少ないため、電気使用量を抑えられます。



●収穫量について

野菜は1日300袋、エディブルフラワーは1日100パック程度の収量を確保することができています。 最初は思い通りにいかず、失敗することもありました。室内栽培とはいえ、外気温の影響を受けるため夏場や冬場の温度・湿度の管理が難しかったです。設定温度を見直しながら栽培を重ね、安定的に収穫できるようになりました。



●販売先について

ホテルや飲食店、製菓店や結婚式場を中心に県内を中心に販売しています。他にも収穫した野菜は大津市内の自動販売機で販売したり、自社で加工したオリジナルサラダの販売も行っています。また、現在はWEB販売も行っているため全国への販売が可能です。見た目の華やかさもありつつ、栄養価も高い!と注目されています。

※左)オリジナルサラダ 右)エディブルフラワーのケーキ(提供:ラ パティスリー ナチュール)



eco農園のエディブルフラワーを使った可愛らしいケーキは、滋賀県大津市の「ラ パティスリー ナチュール」で購入できます!


3.ソーラー蓄電システムで電気使用量80%削減!エコな農業の取組み

ここからはシステム担当の田坪さんにお話を伺いました。



●『ソーラーバンクシステム』について

eco農園の屋根には120枚の太陽光パネルが設置されており、約40KWの出力があります。園内には蓄電池を5台設置しているため、全部で約200KWの蓄電容量があります。年間約380万円の電気を使用しているのですが、このシステムにより約310万円(約80%)の削減ができています。

もし停電が起きた場合は(蓄電状況にもよりますが)、満充電で約10時間園内の設備を稼働させることができます。



●ソーラーバンクシステムの導入がおすすめな場所

電力需要がある場所ならどこでもお使いいただけます。工場や高齢者の介護施設、中でも新規農業参入を考えている企業さんからのお問い合わせが多いです。大規模になるほど多くの電力需要があるので使用いただくメリットはありますが、小規模でも導入を検討されている方はいます。参考としては、eco農園が200平米の大きさなので、これくらいの広さがあると削減効果が大きく見込めると思います。
電気代の節約だけではなく、環境への配慮といったところに着目して検討される方も多くいらっしゃいますよ。




●導入費用について

設置場所や電力需要環境によって異なりますので、都度システム設計を行っています。蓄電地システム(×必要台数)+ソーラパネル(×必要枚数)になります。eco農園は電力供給が多かったので、なるべく多くのパネルを設置するため屋根にぎっしりと120枚敷き詰めました。パネルは太陽の光度に合わせて一番発電効率のよい角度を設計し、施工します。既存の建物に設置する場合も同じです。このシステム設計も自社で対応していますのでお気軽にお問い合わせください。

※ソーラーパネル1枚あたり:90cm×1.8m

※太陽光パネルは20年以上の寿命がありメーカーの補償もついています




●ソーラーバンクシステムの魅力

ソーラーバンクシステムの魅力は、電力会社の供給に頼らずに自家発電・自家消費できるところです。自家消費というのは、eco農園のように太陽光パネル(自然エネルギー)だけで電力を作り、その場所で使用することです。これからの時代は、環境にやさしい“エコな農業”に取り組んでいくことが大事だと考えています。

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取材動画

▲画像をクリックすると動画が再生します。

記事内で紹介された施設

eco農園


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今回取材させていただいたのは…

eco農園 ~株式会社ソーラーアグリイノベーションズ~
eco農園を運営しているのは有限会社本郷工業。20年以上にわたり土木、建設事業で養った確かな施工管理技術と太陽光発電を結びつけ、新たに再生可能エネルギー事業をスタートさせました。太陽光パネルの設置と同時に蓄電池システムを開発。この再エネ事業推進のために、2020年4月にECO農園(法人)を開設しました。
安心・安全な野菜の人気は高く、現在は栽培したリーフレタスやエディブルフラワーをネットで販売したり、自社で加工したオリジナルサラダを販売するなど様々なアイデアで販路を広げています。「施設栽培+再生可能エネルギーモデル」の構築に取組む本郷工業の今後の活躍にも注目です。

ライタープロフィール

【施設園芸ドットコム 編集部】
農家さんへのお役立ち情報を配信中!
新しいイベントの企画やコラム記事の執筆、農家さんや企業様の取材を行っています。みなさんに喜んでいただけるような企画を日々考案しています♪









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