コラム
公開日:2023.02.01
こんにちは、施設園芸.com編集部です!みなさんは北海道積丹町をご存知でしょうか?新千歳空港から車で約2時間。途中観光スポットである小樽を通り、余市のニッカウヰスキー工場を過ぎると積丹半島です。漁師町でもある積丹(しゃこたん)では、新鮮な海の幸が味わえます。夏はきれいな海・積丹ブルーが見られる絶景の積丹町ですが、冬は積雪が多く特別豪雪地帯に指定されています。
今回はそんな雪深い地、積丹町でミニトマトやほうれん草を栽培しながら通年型農業を確立するために奮闘されている、美国園芸(びくにえんげい)の福島さんを取材しました。新しく始めたイチゴ栽培の取組みと雪国の施設園芸用ハウスに注目していきます。
この雪深い地で農業を始めたきっかけを教えてください
私は札幌市の隣にある石狩市出身なのですが、15年ほど前に新規就農したことをきっかけに積丹町にやって来ました。ここは、母方の祖父母から代々受け継いで来た土地です。積丹町(以前は美国町)はもともと畜産が盛んな地域でしたが、みなさん離農してしまい、農家はうちともう一件ほどしかありません。
積丹町はどれくらい雪が積もりますか?
多い時は2m、平均すると1.5mほど積もります。毎日10~30cmの雪が降るので、除雪作業だけで終わるような日もありますね。車の出入りや作業道を確保するのが大変です。
― 大雪でハウスが潰れる心配はないですか?
通常のハウスだと雪の重みで倒壊する危険がありますが、今回新築したイチゴ栽培用のハウスはパイプの径が太く、天井内部からしっかり補強しているため、まず潰れることはないと思います。他のハウス(ミニトマトやほうれん草)は径が細いため、常に雪を下ろして潰れないよう管理しています。
― イチゴのハウスは大きいですね
高さ7mあります。間口12.6m、長さ50mです。ハウスとハウスの間隔を広く空けて3棟建てました。そうしないと両方から雪が落ちてくるので、通路がすぐに埋まってしまい除雪する機械が通れなくなってしまいます。
雪国農業のイイところはどんなところですか?
ほうれん草を栽培していますが、“寒さに当てると甘さが増す”と言われています。今後もっと雪を活かし、雪中貯蔵などもやってみたいと考えています。
いつからイチゴ栽培をされていますか?
2021年の春に試験栽培を始め、本格的にスタートしたのは今シーズンからです。12/25頃に初収穫を迎え、少しずつ実が増えています。1年目なので失敗することもありますが、品質の良いイチゴを作ることが出来ています。
― イチゴの栽培をはじめたきっかけは何ですか?
夏秋のミニトマトをメインで栽培していますが、冬場にも仕事がないと雇用の確保が厳しくなってきたことです。通年で人を雇うために何かよい作物はないかと探していたところ、イチゴ栽培にたどり着きました。品種は「よつぼし」。労働力の配分を考えて種子繁殖型の品種を選び、種まきから植え付けまで自分の手で行っています。今年は特定技能実習生10人+家族での栽培管理を予定しています。
●ミニトマト
3月中頃に種を撒き、雪が降る前の11月中頃まで収穫
●イチゴ
5月末に種を撒き、9月末頃にハウスへ定植。12月末~6月頃まで収穫(予定)
イチゴ栽培ハウスの設備について教えてください。
ハウス内は環境制御装置を導入しているため、暖房機、CO₂(炭酸ガス)、換気など全て自動制御されています。アプリを使えば、いつでもスマホでハウス内環境が見られる上に、遠隔操作もできるため助かっています。
温度管理について
日中はハウス内を17℃設定にしています。土の温度は20℃設定です。地温さえ確保できれば、夜はハウス内を5℃設定にしても、しっかり成長してくれます。イチゴ栽培は地温が大事です。
― 暖房もたくさん使うと思いますが省エネ対策をしていますか?
二重張りの予定だった内張りカーテンを三重にして、保温性を高められるようにしました。
ハウス内にある赤と青のライトはどのように使っているのですか?
赤色のライトは光合成促進のための赤外線ライトです。ここは(日本海側で)日照が足りていない地域なので、日中に点灯させて補光しています。青色のライトはUVBの電球で、うどんこ病などの病気予防のために設置しています。生育向上の効果もあるそうです。UVB電球は夜間(1:00~4:00まで)の3時間だけ点灯させています。 定植してから今日まで化学農薬を散布せずに栽培が出来ています。北海道の冬は寒くて本州より病害防除が少ないと思うので、そのメリットも活かしてなるべく農薬を使わない栽培に挑戦中です。
収益性はいかがでしょうか?
北海道内にはまだ競合が少ないため、収量が獲れれば採算が合ってくると思っています。まずはしっかり収量を取る事ですね。目標はハウス3棟で10トン。1株あたり1キロは収穫できるように取り組んでいます。
販路はどうされていますか?
ミニトマトは(農協撰果施設へ)全量出荷です。イチゴは現在札幌の卸売り業者にお願いしているのですが、いずれはふるさと納税やインターネット・SNSを使いながら、一般のお客様にも直接販売したいと考えています。北海道産イチゴを産地として取り組んでいくことが理想です。
イチゴの栽培ハウスは初期費用0円で導入したとお聞きしたのですがどのようなサービスですか?
Instagramの広告で見かけた『ネクシーズZERO』サービスを利用しました。事業計画を提出し、審査が通ると契約することができます。頭金や初期費用は0円でした。私の場合は7年契約ですが、月額の使用料を支払っていくと満了後に自己所有に切り替わります。
― ハウスを月額にできるというのは珍しいですね。
そうですね、私が就農した時には、新規就農者向けの融資を受けてハウスを建てました。その後も規模を拡大するために金融機関等から融資を受けて増築してきました。今回、月額のサービスを利用するのは初めてですが、自分へのリスクが少ないことがメリットだと思います。良いサービスなので今後も増えていくのではないでしょうか。
ハウス以外にも『ネクシーズZERO』サービスを利用したものはありますか?
暖房機やCO₂発生器、循環扇、潅水システム、栽培システム、環境制御機器、UVライトなどハウス内の設備はほぼ全てです。機器だけ単品で契約もできるので、需要に合わせて選べるのもいいですよね。料金を見ながら自分で必要な設備をカスタマイズできます。
使用中に壊れたらどうなりますか?保証はありますか?
契約中は保証してもらえます。メーカー保証がついている機器や設備もあります。
※ミニトマトやほうれん草のハウスは農業共済に加入
環境制御システムはイチゴ栽培に必須でしたか?
せっかく最新機器を選べるのであれば、環境制御をやってみたいと思い導入しました。今後のことを考えるとやはり時代にあった取り組みも必要だと考え、ネクシィーズさんに相談しながら決めました。まだまだ使いこなせていない機能もありますが、制御を自動化したことで体が楽になりました。
新規就農を考えている人に何かアドバイスはありますか?
新規就農してみて「楽な業種ではないな~」と痛感しています。でも、とてもやりがいがあって面白い仕事なので、ぜひ興味をもってやってみてもらいたいです。今回私はネクシィーズさんのサービスを使わせてもらいましたが、経営面を考えるとこうしたサービスを利用しながら上手く設備を揃える方法もあります。
最後に、福島さんの今後の目標を教えてください。
まずは栽培1年目であるイチゴの道筋をつけていきたいです。夏も冬も売上のベースを同じところまで上げて、安定した通年農業をこの地域で確立させ、次の世代にも引き継いでいきたいですね。
(株)NEXYZ.
「ネクシーズZERO」サービス
一括では購入しにくい設備や機材を初期費用0円で導入できるサービスです。農業用ハウスや環境制御機器など最新の機器・設備をリスクゼロで導入することができます。
今回取材させていただいたのは…
北海道積丹町 (株)美国園芸
代表取締役 福島亜明さん
2007年に北海道積丹町で就農。夏秋はミニトマト、冬春はほうれん草・イチゴをハウスで栽培している。2022年に農業法人を設立。現在は特別技能実習生を雇用しながら通年型農業を目指している。「稼ぎたいと日本に来ているのだから、働かせてあげたい」との思いで始めたイチゴの栽培。まだまだ希少な北海道産のイチゴが、この積丹町から発信されていくことが楽しみだ。
ライタープロフィール
【施設園芸ドットコム 編集部】
農家さんへのお役立ち情報を配信中!
新しいイベントの企画やコラム記事の執筆、農家さんや企業様の取材を行っています。みなさんに喜んでいただけるような企画を日々考案しています♪