コラム
公開日:2024.03.18
農業への参入を希望する新規就農者は、農地の確保や、技術の習得に時間がかかる場合が多く、早期に経営を安定させることが課題となっています。一方で農業では、これまでの「子に農業を継承する世襲システム」が成立せず、後継者不足が深刻な問題となっています。このような農業の課題を解決する手段として、第三者継承があります。
この記事では、新規就農者が知っておくべき第三者継承のメリットや、マッチング方法、事例などをご紹介します。
農業の第三者継承とは、これまで多かった親から子へ受け継ぐ世襲継承と違い、子以外の人へ受け継ぐことをいいます。農地や施設、機械などの「目に見える資産」だけではなく、栽培技術、販売流通路、ブランドなどの「目に見えない資産」を、新しい農業者へ受け継ぐことです。
新規就農者にとってのメリットは、農業をスムーズに始めやすいことです。新規就農者は、農地や施設などの確保に時間がかかってしまいますが、農地などの有形資産と一緒に、ノウハウや人脈などの無形資産を引き継ぐことで、まったく1から農業を始める場合と比べて、早期に経営を安定させられます。
一方で、まとめて多額の資産を引き継ぐため、多額の資金が必要になるデメリットもあります。移譲者から債務などの負債を引き継ぐ場合もあるため注意が必要です。
実際に継承が成立するまでの、おおまかな流れをご紹介します。
①マッチング(事前研修):事前に移譲者と後継者の適性や相性を確認することが目的で行われます。
②合意書などの作成:移譲者と後継者、双方とも継承に納得できれば、合意に進みます。
③研修:移譲者のもとで、研修生として働きながら、栽培技術から経営ノウハウまで幅広く学びます。
④継承:継承後も、移譲者からサポートを受け続ける場合もあります。
農業経営のマッチング方法はおおむね以下の3つの方法があります。
各県に設けられている「農業経営・就農支援センター」やJAなどで、経営継承の相談に応じてくれます。経営の相談先として税理士や、中小企業診断士など専門家の派遣などを支援してもらえます。
農林水産省の第三者継承の優良事例では、知人からの紹介によりマッチングを行った事例が多くあります。すでにある程度の信頼関係ができているので、失敗が少なく、マッチングがスムーズに進みやすい点がメリットです。
オンラインプラットフォームなどの経営継承マッチングサイト等を利用する方法です。全国各地の、幅広い相手とのマッチングが実現できる点が魅力です。
施設園芸の第三者継承としては、研修していた農業生産法人の紹介でマッチングした事例があります。農地やハウス、機械設備、販路などを継承しましたが、後継者への負担が少ないように、リース契約して減価償却した後、譲渡する方法をとっています。 第三者継承は、移譲者が長年かけて築いた資産を譲るため、失敗を防ぐために後継者との信頼関係が最も重要です。地域農業の活性化につながることから、移譲者だけではなく、行政やJAなどからもバックアップを受けています。
※参照:Yanmar (https://www.yanmar.com/jp/agri/agri_plus/information/011.html)
第三者継承の助成金として、「経営継承・発展等支援事業」があります。後継者が経営発展のために必要な機械導入費用や、販路拡大費用などに、上限100万円の助成金が受給できます。移譲者が、地域の中心的な農業者として市町村から認定を受けた「担い手」であることが要件です。
新規就農希望者にとって、第三者継承は知って損はない知識です。まったくのゼロから農業をスタートする場合と比べて、早い段階で経営が安定しやすい傾向にあります。
第三者継承の流れやマッチング方法を理解して、第三者継承を視野に入れてみてはいかがでしょうか。
▼参考サイト
〇茨城県農業参入等支援センター,第三者継承したい
https://www.sannyu.pref.ibaraki.jp/keisho.html
〇農研機構,後継者不在の家族経営における第三者への事業継承に当たってのポイント
https://www.naro.go.jp/project/results/laboratory/narc/2008/narc08-11.html
〇農機具ランドあぐり家,農業を継承するには?第三者から農業を引き継ぐためのポイントを紹介
https://www.agri-ya.jp/column/2023/03/29/how-to-inherit-farming-taking-over-farming-from-a-third-party/#title2
〇農林水産省経営継承・発展等支援事業(経営継承関係)
https://www.maff.go.jp/j/keiei/keieikeisyou_hatten.html
〇令和5年度農業関係予算 経営継承・発展等支援事業
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【施設園芸ドットコム 編集部】
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