コラム

サンチュが大人気!電気工事会社が挑戦した水耕栽培の方法とは

公開日:2024.12.25

埼玉県北足立郡伊奈町で、2024年8月からサンチュの水耕栽培を始めた株式会社YUHI FARM様を取材しました!CEOの吉本さんは電気工事業を行う雄飛電設の社長として、公共事業やビルの高圧設備を取り扱っています。そのような中、将来を見据えて新しい事業に挑戦したいと一念発起し、新たに株式会社YUHI FARMを設立。サンチュの水耕栽培を始めました。
きっかけは、兵神機械工業株式会社(兵庫県加古郡播磨町)が開催していた水耕栽培の見学会でした。試食した野菜が“とっても美味しかった”ことに感銘を受けた吉本さんは、水耕栽培に挑戦する決心をしました。
今回はYUHIFARMのCEO:吉本様、専務:正木様、兵神機械工業の矢尾田様がインタビューに応えてくださいました。

1.電気工事会社が新規就農したきっかけ

△新鮮なサンチュを手に持つ吉本CEO




なぜ農業を始めようと思ったのですか?

吉本CEO:父親が残してくれた土地があったので、ここで何か新しい事業展開ができないかと考えていました。実家が田んぼをやっていたり、私自身も植物を育てるのが好きで家庭菜園をやっていたり、農業に携わっていたことも要因だったと思います。

なぜ水耕栽培だったのですか?

吉本CEO:水耕栽培には元々興味があったので情報収集していたところ、兵神機械工業さんの見学会があることを知り、専務と一緒に(埼玉から)会場のある兵庫県まで車5時間かけて赴きました。見学したあと、栽培している葉物野菜を試食させていただいたのですが、水耕栽培ではこんなにクセがなく美味しい野菜が栽培できるのか!とびっくりしました。

正木専務:帰りにベビーリーフやサンチュ、ミニセロリなど、色々な野菜をいただきましたので、ホテルに戻ってすぐに食べました。こんなに美味しいんだ!って味に感動しましたね。

△2連棟(合計600平米)のハウス

吉本CEO:しかし、土地が農地ではなかったこともあり準備に2年半かかりました。満を持して今年(2024年)8月にハウスが完成。8/2に定植して、9/20頃から出荷も出来ています。ハウスは2連棟の600平米。片側はサンチュ、もう片方は小松菜やベビーリーフなどを栽培しています。露地栽培とは違って栽培サイクルが早いのも水耕栽培の魅力ですね。

2.サンチュの栽培方法と水耕栽培に必要な設備

△水耕栽培システム「オンディーネ VH」




栽培品目にサンチュを選ばれたのはなぜですか?

吉本CEO:葉物野菜の中でもとくに生産性が良いからです。定植してから1ヶ月、冬場は1.5ヶ月で収穫できます。また、1つの株から何度も収穫できるし、管理の手間がかからない。今はもっと葉を大きくしていこうと試行錯誤しています。

兵神機械/矢尾田さん:2ヶ月間は収穫し続けられますね。しかし、だんだんと葉が小さくなってくるので、2~3ヶ月収穫したら新しい株に替えるがおすすめです。

△収穫中の大きなサンチュ

サンチュの栽培管理について教えてください。

吉本CEO:循環扇と換気扇で温度管理をしています。ハウス内が25℃になったら換気扇が回ります。他には遮光カーテンとサイドの巻き上げ換気を設置し自動制御しています。内張りの保温カーテンは様子をみながら手動で管理しています。 水温は12℃に設定しており、10℃以下にならないようにしています。
夏場は病気が出やすいので防除が必要ですが、これからの季節(冬場)は病害虫の心配が少ないため防除しなくても栽培できます。

ハウス建設から内部設備まですべて兵神機械さんにお願いしました。近所の農家さんたちは手動管理が多い中、すべて自動で管理できる設備だったことに驚きました。

兵神機械/矢尾田さん :手動で管理するためには経験が必要になりますが、自動であれば機械に任せられます。平日は働いて土日休みたいというスタイルにも合わせることもできます。

吉本CEO:でも栽培が楽しくて、毎日ハウスに来ています(笑)初めて種を蒔いたときは、いつ芽が出るのだろう…とヤキモキしていましたが、発芽したときは感動しました。あれはいつ見ても感動します。

△発芽

肥料は何を使っていますか?

吉本CEO:肥料も種もすべて兵神機械さんから仕入れています。こっそり他のサイトやお店も調べてみましたが、結局のところ兵神機械さんから購入するのが一番安かったです。まとめて仕入れているので単価を安く抑えてくれています。

初めて収穫できたときはどんなお気持ちでしたか?

吉本CEO:こんなに生えてくるものか!とびっくりしました。まだ販路も決まっていないのにこんなに沢山どうするの?って(笑)最初の収穫は大変でしたが、あの“感動の味”を再現することができました。家族や知人など周囲の人たちも美味しい!と喜んでくれましたよ。

△成長を確認する吉本CEO(左)と正木専務(右)




どれくらい収穫量がありましたか?

吉本CEO:最初はハウスの片側(1棟)だけ定植しました。 サンチュは収穫量ではなく枚数でカウントするのですが、1人で1日2,000枚くらい収穫しています。多いときは朝8時~夜5時までひたすら収穫しているので、顔が緑色になるんじゃないかって思います(笑)収穫したサンチュはパッキング担当が袋詰めしていきます。現在は収穫1人、パッキング担当1人ですが、収穫数が増えてきたのでもっと人手を増やそうと思っています。

兵神機械工業さんはいつから水耕栽培装置を作っているのですか?

兵神機械/矢尾田さん :弊社は船の部品など船舶関係に携わっている会社です。農業分野の部署を立ち上げたのは15年前。そこから水耕栽培の研究を重ね、設備の販売が始まったのが10年前になります。架台や装置など内部設備は自社、ハウスは外部委託で対応しています。ハウスに水道と電気が通っていれば栽培可能です。

3.焼肉店で大人気!味で選ばれるサンチュの魅力

△YUHIFARMが販売しているサンチュ




販路について教えてください。

吉本CEO:現在はスーパーや焼肉店に卸しています。私と専務は食べることも大好きなので、焼き肉を食べに行ったら「うちのサンチュ使わない?」と営業しています。

正木専務:チラシと試食用のサンチュを5枚ほどお渡しして、「週1~2回納品、最低ロット200枚~からできます」とPRしています。 すると、サンチュを食べた焼肉店の方々が「毎週持ってきてほしい!」と言ってくださり、一気に販路が広がりました。朝どれ新鮮で味が美味しい、そして葉が大きいですから焼肉との相性も抜群です。

吉本CEO:(仕入先とは)昔からの付き合いがあるから急には変えられないと言われることもありますが、あきらめず何回も行こうと思います!

△葉物野菜を見回る吉本CEO




正木専務:お客様から「ベビーリーフを作ってほしい」と言われることもあります。そこで現在、ベビーリーフや小松菜などの栽培も始めたところです。また、次は寿司屋にPRするために芽ネギを試験栽培しています。

兵神機械/矢尾田さん :葉物に特化した栽培装置なので葉物野菜であればなんでも上手に栽培できます。よく生産者様が栽培される品目(数十品目)については自社の試験場で栽培して作った実績とマニュアル、データがありますので、栽培指導も可能です。実際に自社農場のサンチュを兵庫県のスーパーに出荷しているため販売に関するアドバイスもできます。

吉本CEO:兵神機械の栽培担当が博士みたいな人で、とっても詳しいのです。私たちも初めての挑戦ですから、何でも相談できる人がいて安心です。何かあれば兵庫県からすぐに駆け付けてくれて、手取り足取り教えてくれます。バイヤーさんも紹介してもらいました。

△兵神機械/矢尾田さんと打ち合わせの様子




4.焼肉に巻くだけじゃない!この冬おすすめのサンチュ鍋

△画像提供:兵神機械工業株式会社




サンチュの美味しい食べ方を教えてください。

吉本CEO:サンチュをしゃぶしゃぶにすると美味しいですよ!さっとゆがくんです。

正木専務:ニラそばならぬサンチュそば、焼きそばにサンチュいれても美味しかったです。パンにローストビーフとサンチュを入れて、からしとマヨネーズで味付けしたらこれもまたすごく美味しい!実際に栽培してみたことで、色々な食べ方があることを知りました。サンチュは可能性が広がる野菜だと思います。

△画像提供:株式会社YUHI FARM 正木専務




吉本CEO:経営が軌道にのって品目も増えていけば、ハウスの増築もしていきたいです。
つい先日クレソンを作ってほしいという話をもらったので栽培してみたのですが、クレソンがこんなにも美味しい野菜だとは知りませんでした。少し辛いイメージがあるので単体で食べることは少ないかもしれませんが、実はこれもしゃぶしゃぶが美味しいのです。ゆがくだけで食べられるんですよ。こんな食べ方があることを知りませんでした。栄養価もすごく高いです。

もっと食に関心をもってもらえるように「葉物野菜ってこんなにも美味しいんだ!」ということを広めていきたいです。サンチュは焼肉に巻いて食べるものというイメージが強いと思いますが、マヨネーズをかけるだけでも美味しいんです。素材の魅力を発信していきたいですね。

△今後の展望を笑顔で語る吉本CEO(左)と正木専務(右)





今回取材させていただいたのは…

株式会社YUHI FARM
CEO 吉本徹也様(写真上) 専務 正木信一様(写真下)

もともとはバイク仲間であった吉本CEOと正木専務。仲の良いお2人の掛け合いは周囲の人を笑顔にします。
吉本CEOはもともと食べることが大好きだったことと脳梗塞で入院した経験から、食に関して思いが強く「みんなにもっと食に関心をもってもらいたい」と考えています。アパレル関係も大好きで、おしゃれな農作業着は自らがデザインしました。
一方の正木専務は、料理を作ることとお酒を飲むことが大好き。自社で栽培した野菜を使ったレシピを続々と開発しています。また、いつか葉物野菜とお酒のコラボができないかと夢を膨らませているそうです。
埼玉県では珍しい水耕栽培での新規就農。今後の取組みが楽しみです。

ライタープロフィール

【施設園芸ドットコム 編集部】
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