コラム
公開日:2018.12.16
ピーマンに比べ苦味や辛みが少なく人気の高まっているパプリカですが、栽培となるとピーマンより難易度が高い野菜です。とくに実の色づきが問題になることが多く、「栽培マニュアル通りに植え付け、枝の仕立てや摘花も行い沢山の実がついたのに、緑色のままで色がつかない」と悩まれている方もいるのではないでしょうか。そこで、今回はパプリカ栽培初心者の方向けに実が色づかない時の対策を中心にお伝えしていきます。ポイントをおさえればパプリカの栽培は決して難しいものではありませんよ。
まずはパプリカの栽培方法をおさらいしましょう。
ハウスの抑制栽培の場合の例
5月に種まき、7月上旬に定植し、9月中旬~11月末頃まで収穫
● パプリカは種から育てることもできます。
● 生育適温は17℃~30℃、夜間は25℃以下を保つようにします。そのため冬期に暖房が焚けるビニールハウスでの栽培が基本となります。
● パプリカは支柱での栽培が基本です。そのため4m以上の軒高ハウスで栽培しましょう。
◆ パプリカなどのピーマン類は、過湿に弱い作物です。水はけがよい土壌を作ります。
◆ 定植1ヶ月前に堆肥と苦土石灰を施して土壌になじませます。元肥は10aあたり窒素20~25㎏、リン酸25~30㎏、カリ20~25㎏程度。はじめに窒素肥料を多く施肥すると尻腐れの原因となるため注意が必要です。追肥で少しずつ調整します。
◆ ハウス促成栽培の場合、夏場の定植となるため地温の上昇を防ぎ、土壌にしっかり水分を保たせます。
◆ 日照不足に注意しましょう。
◆ 開花から収穫までの期間が長いため、栽培後半の長期栽培では草勢維持が重要です。根張のよい株を作りましょう。定植後、生育初期の花は1~3段目を摘花し、草勢をつけます。
◆ 尻腐れの他にも実が黒くなる炭疽病や整理障害にも注意が必要です。
最近では、パプリカ生産者が栽培方法や剪定のコツ、整枝や仕立て方を紹介している動画もあります。実際に栽培している農家の声や栽培現場の様子を見聞きできるため、動画を活用することもおすすめです。
パプリカ栽培が難しいと感じる原因として、青い未熟果を収穫するピーマンに対して、パプリカの場合は完熟果を収穫するので栽培期間が比較的長いということが挙げられます。長い栽培期間中に病気や害虫にやられる、実がついても栄養状態が悪くて色づかない、腐る、といった問題が生じがちです。
パプリカは開花してから実がしっかり完熟して色づき、収穫できるようになるまでに約2ヵ月かかります。収穫まで樹が弱ることなく良好な状態を保つことが大切です。
どんな野菜にも言えることですが、中でもパプリカは収穫までに要する期間が長いので、植え付け時期を守ることが重要です。
適期を外すと病害虫の被害を受けやすくなりますが、被害はそれだけではありません。例えば6月上旬に植える予定が1ヶ月遅れて7月上旬に植え付けたとします。その場合、開花が8月過ぎてしまい、実が育つ頃には日照も減ってきます。完熟までただでさえ時間がかかるのに更に日数を要することになります。下手をしたら完熟せずに、そのまま樹が終わることになりかねません。
ピーマンのように収穫まで2週間とはいきません。実が大きくなってからも色づいてくるまでの1ヵ月は気長に待ち、その間しっかりと管理を続けることが重要です。パプリカの色づき方は赤色種なら緑から赤、黄色種なら緑から黄と変わります。気を付けたいのは赤色種で色づく途中に黄色くはならず黒・茶色っぽい赤から鮮やかな赤に変わります。「茶色っぽくなって腐った」と思って取り除かないようにしてくださいね。
実が完全に色づくまでは、完熟に向かって育っている途中なので沢山の栄養を必要とします。樹が弱らないように定期的な追肥を行いましょう。「色づかないからもう育たない」と早合点して施肥を止めてはいけませんよ。とくに花が落ちて実付きが悪くなってきた場合には、肥料不足や水不足のサインなので見落とさないよう、日頃から樹の状態をしっかり観察・把握していることが大切です。
実がついてから収穫までが長い分、尻腐れが生じる危険が高まります。尻腐れは回復しないので、予防対策としてカルシウム入りの肥料を定期的に与えましょう。専用の葉面散布剤を使用するのもオススメです。それでも尻腐れが多発する場合には、窒素肥料の与えすぎや土壌の乾燥によってカルシウムの吸収が抑制されていないか、肥料の与え方や水やりを見直してみましょう。
パプリカ栽培では、焦らずどっしりと腰を据え、丈夫で健康な樹を育てることが肝心です。実が色づくまで丁寧な栽培管理を続け、綺麗に色づいた肉厚で美味しいパプリカを沢山収穫してくださいね。
※2018.12.26 公開の記事をリニューアル更新しました。
▼参考文献
〇日本デルモンテアグリ株式会社、デルモンテの野菜苗>育て方>パプリカ・ピーマン・シシトウ・トウガラシ
〇2008.タキイ最前線 秋号
https://www.takii.co.jp/tsk/kanri/pdf/2008_03_049.pdf
ライタープロフィール
【haruchihi】
博士(環境学)を取得しています。
持続可能な農業を目指し、有機質肥料のみを使ったトマトや葉菜類の養液栽培を研究してきました。研究機関やイチゴ農園で働いた後、2児の母として子育てに奮闘する傍ら、家庭菜園で無農薬の野菜作りに親しんでいます。