コラム
公開日:2021.04.20
昨今、食に関する消費者のニーズは変化を続けています。農業の世界でも減農薬栽培や有機栽培が脚光を浴びるなど、安全や健康などへの関心が高まっています。そんな消費者のニーズに答えるため、
「化学系の肥料や農薬の使用を抑えたい」という生産者の方も増えているのではないでしょうか。
そこで注目されているのが、有機物である微生物資材の存在です。連作障害を抑えるもの、ネコブセンチュウに効果を発揮するものなど 販売されている商品は100種類以上にもわたります。
今回は、そんな微生物資材のメリットとその効果について説明していきます。
微生物資材とは、微生物の働きを積極的に利用しようとつくられたもので、土壌改良材の一部に位置づけられています。また、ネコブセンチュウやゾウムシなど特定の病害虫防除効果があるもので、安全性の確認が取れた資材として登録されているものは「微生物農薬」と呼ばれています。
現在販売されている微生物資材の一覧の中では、「VA菌根菌資材」のみが政令指定資材であり、その効果が国により認められています。
微生物資材を使用した土壌改良の最大のメリットは化学物質を使用した肥料や農薬の使用を抑えることができる点です。微生物資材の効果は大きく3つに分けることができます。販売されている微生物資材の多くは地力を総合的に高めるなど、下記の効果を複合的に発揮するとされるものが多いです。
土壌微生物の活性化を図り、土壌の化学性や物理性を改善する
例えば…VA菌
堆肥化過程の分解促進や稲わらすき込み水田を目的とした土壌中での分解を促進する
例えば…酵素等
土壌微生物相形成を促進し、連作障害などを改善する
例えば…放線菌、乳酸菌、バチルス菌、トリコデルマ菌
・土壌内の病原菌を殺す能力は低いため、土壌消毒後に利用すること
・1回の施用では効果が出ず、連用が必要な場合があること
・土壌内の病害を完全に予防できるわけではないので、根菜類には向かないこと
微生物資材は万能なものではなく、目的に応じた資材選定が不可欠です。また、土壌の状態や環境によっては菌の増殖がうまくいかないことも考えられます。適正な環境を整えたうえで、効果的に利用していきましょう。
土壌改良資材(複合微生物資材)「カルスNC-R」/リサール酵産(株)
▼参考文献
〇土づくりにおける微生物活用法とは
https://www.kaku-ichi.co.jp/media/crop/microorganism/take-over
〇微生物資材の産業活用
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shigentosozai/122/1/122_1_1/_pdf
〇土づくりのススメ‐深堀 土づくり考
https://www.yanmar.com/jp/agri/agri_plus/soil/articles/02.html
ライタープロフィール
【畠中駿輔(ハタナカシュンスケ)】
慶應義塾大学卒。28才。
学生時代に東アフリカ6000kmを自転車で縦断。田舎の農村で見た人々の笑顔が忘れられず、銀行員を経て農業の世界へ。2019年日本の農業技術で世界の人々を豊かにするべくタイ北部に移住。
25aの圃場を立ち上げ、現地の方と共にイチゴの高設栽培をしている。