コラム
公開日:2018.03.07
従来の高度化成肥料は単肥にしても追肥を行った際に根が傷んでしまい、表面が褐色になってしまったという経験をされた方は多いのではないでしょうか?
土耕栽培、養液栽培などどのような栽培スタイルにおいても植物の根は水分・養分を吸収する重要な器官です。生育促進のために良かれと思って施用した肥料で逆に根を傷めて肥料分はおろか水分吸収まで停滞させるのは本末転倒です。
基本的に根にストレスを与えずに必要な時に必要な量の肥料を供給するのが全てです。その方法は明確ですが順にお話しします。
有機態の肥料が土壌微生物の分解と、いくつもの段階を経て根に吸収されるというように、従来法では最も根にやさしい肥料です。しかし未分解の新鮮有機物であれば有害なガスが出たり、根や作物に有害な面もあります。ぼかしなどある程度分解が進み弊害のない肥料を定植前に土壌に混和し状態を安定させておくことが大切です。追肥にも使えないことはありませんが、常に土壌微生物の活動、地温に左右され、効かせたいときにシャープには効果が望めませんので用途は限られます。
被覆尿素や溶解抑制CDUなど物理的、化学的に肥料の溶出をきわめて穏やかに調節するものです。例えばキャベツなどの野菜セル苗に収穫までの全肥料を混和して定植し、追肥を全く必要としない栽培ほど根にストレスがない肥料です。地温や土壌水分によって肥料の溶出速度が変化し、省力性、生育の安定性が高く栽培初心者の技術の底上げに有効です。
これらは成分含有量が高い反面、袋あたりの価格が高いためにコスト高と誤解してしまうことがありますが、成分あたりの価格は安いことが多く、追肥が不要で安定性が高いなどメリットが多いことを理解できれば有利な栽培技術といえます。
▼代表的な緩効性肥料の一覧
【参考文献:最新農業技術 野菜Vol.7(農文協)】
液肥は、即効性があり使い方を間違えると根に障害が出る肥料です。しかし最近は土耕栽培でも従来の手動や、タイマー制御でなく日射、CO2利用速度、空気の状態を見ながら潅水を兼ねて、こまめに機械的に薄い肥料を施用する技術(潅水施肥)が効果を上げています。ごく薄い濃度のため根にもストレスがなく、必要な時期に必要な量の施用ができ、植物の生育速度が速い環境制御技術の根幹を担う部分として重要となっています。最近では栽培環境(日射など)によって高度な判断のもと、適宜追肥潅水施肥を行う技術も出てきています。
施肥の判断というとやはり追肥の判断、または毎日の「潅水施肥」の量とタイミングを決める材料ということになります。養液栽培では生育促進の「追肥」の意味のほかに濃度ストレスをかけて「生育抑制」の技術としても使われていますが、土耕栽培では単純に「追肥」目的で施肥が行われます。
例えば長期間収穫するトマト、ピーマンなどでは側枝の樹液の硝酸態窒素濃度と、葉色、成長点の強弱を見ながら追肥量の加減を行います。
この様な場合は一度タンクに水をためて微細な空気泡を通すことで鉄を酸化・沈殿させ、その後フィルターで取り除き原水の改善ができます。熊本県で開発された雨水集積設備の利用は最も水質が純粋で、そのまま灌水に使用するにも希釈水として活用するにも有効です。(雨水は純粋な反面、ミネラル含量が少ないため肥効は期待できません。)