コラム
公開日:2018.08.29
農家の収入は栽培する品目(米、野菜、花き)や栽培方法(施設園芸、露地)により大きく異なります。
今回は施設園芸農家(野菜)を中心に、農家の収入がどのくらいになるかというイメージと専業農家として生計を立てるためのポイントをご紹介します。
施設園芸(野菜)農家の収入を「農業所得」といいます。
平成28年の農林水産省統計調査では、全国の施設園芸農家の平均「農業所得」は約550万円となっています。
この農業所得は下記の計算式で算出されるもので、法人の「利益」や会社員の「収入」に該当します。
農業粗収益−農業経営費=農業所得
施設園芸農家平均:約1,280万円−約729万円=約550万円
法人:売上高−費用=利益
【参考:平成28年の農林水産省統計調査】
ただし、この統計は様々ある野菜の品目をひと括りにした数字ですので注意が必要です。
平均作付け面積は、約44a(4,411㎡)と相応に高い数値となっていますが、この面積での栽培は家族経営だけでは難しく、パート等の雇用が必要となる規模感です。
では、農業所得平均の年収550万円を目指すには,
40aもの大規模な面積が必要不可欠なのでしょうか。
新規就農時の規模は小さくても大丈夫です!
筆者の経験則では、多くの新規就農者は10a程度から経営を始めているように思います。また、農業とは別の安定した収入源を確保しながら新規就農して半農半Xで生計を立てている兼業農家の方がいますし、農業次世代人材投資資金(旧:青年就農給付金)という年間150万円の補助金を得られる制度を活用しながら徐々に規模拡大を目指している若い農家さんも沢山います。
経営が不安定な新規就農時に生計を立てるための対策として、「農業外の収入源の確保」「補助金制度の活用」の2点がポイントとなります。
半農半Xとは?
自分や家族が食べる分の食料を自給し、残りの時間は「X―エックスー」として、自分のやりたいことに費やすという半自給的な小さい農を営む生活スタイルです。
特に20代~40代が関心を示していると言われています。
先輩のベテラン農家さんでも40a以下の規模で安定した経営を行なっている方が多くいらっしゃいます。そのような農家さんはみんな儲かる仕組み作りに励んでいます。安定して儲かる仕組みとして下記のような共通点=ポイントがあります。
直売所をうまく活用したり、直接飲食店と契約して、自分で単価をコントロールすると良いです。また、自分で売り切れないものは市場に卸したり、ネットで情報発信するなどして、売れ残りが無くなるように工夫しましょう。
ビニールハウスや栽培作物について、共済や保険に入るなどして、リスク管理の意識を高く持ちましょう。JA共済では「農業リスク診断活動」を実施しており、ホームページから簡単にリスク診断を行うことが出来るので、ぜひ試してみてください。
他に、果樹栽培であれば「観光農園化する」などの方法もあります。露地栽培でのぶどう狩りやみかん狩り、とうもろこし狩りなどは、集客の際に天候の影響を受けますが、ハウス栽培であれば天候を気にすることなく集客できるのでオススメです。
農業で生計を立てる上で経営規模はあまり重要ではありません。ご紹介した「小規模で安定した収入を得るために必要な新規就農時のポイント」、そして「ベテラン農家が実践しているポイント」を是非参考にしてみてください。
ライタープロフィール
【uen01】
1反のハウスで夏秋ミニトマトの養液栽培(不織布ポットを利用した少量培地栽培)を行なっています。
元営農指導員のベテラン農家指導のもと、様々な実証実験を行いながら生産しております。元金融マンというバックグラウンドを生かして、数字に基づいた栽培及び経営を行なっています。