コラム

コーヒー豆のハウス栽培に挑戦!群馬県の「藤岡コーヒーハウス農園」を取材しました

公開日:2024.10.15

コーヒーの主な生産地は赤道周辺の熱帯・亜熱帯地域。中でもエチオピアやブラジル、コロンビアなどが主流で、日本も99%が輸入に頼っています。しかし、地球温暖化による気候変動の影響で栽培適地が減少し、今後世界的にコーヒーの収穫量が減少することが懸念されています。沖縄や鹿児島などの国内産地はまだまだ流通量が少なく、安定供給が難しいことが課題です。
時代と共に流行が変化しやすいコーヒー業界で サードウェーブ(第3の波)と言われる今、株式会社ミツウロコテックは群馬県藤岡市でコーヒー豆のハウス栽培を始めました。運営する 藤岡コーヒーハウス農園 では、遠隔監視制御システムを導入した スマート農業ハウス で、コーヒーの中でも高品質な『スペシャリティコーヒー』の栽培に挑戦しています。
今回は、関東では珍しいコーヒー豆の栽培方法やスマート農業ハウスについて取材しました。

1.ハウスのコーヒー豆栽培について

スペシャリティコーヒーとはどんなコーヒーですか?

(長瀬さん)スペシャリティコーヒーと他のコーヒーの違いは、品質の良さと流通の透明性にあります。生産農家や品種がはっきりしており、栽培から収穫、精製、選別、消費者の手に渡るまでの情報を明確にしていることで、情報の透明性が高まり、信頼性も生まれます。そうすることで、おのずと品質の向上にも繋がり、風味豊かで美味しいコーヒーができるのです。えぐみの原因となる欠点豆が少ないことも、スペシャリティコーヒーが美味しい理由のひとつです。

コーヒー豆は種から育てていますか?

(長瀬さん)苗木を定植して約3ヶ月半になります。沖縄や大阪の農家さんから1年~2年育苗した苗木をいただきました。あわせて、海外のスペシャリティコーヒー農園から調達したパーチメント豆の播種も行っています。芽が成長したら高さ30㎝のポットに植え替えを行います。さらに成長が進み、苗の葉が増えてきたら定植を行います。

現在栽培している品種はティピカ、ブルボン、ムンドノーボ、カトゥーラ、ゲイシャなど。ここは1号農園なので、色々な品種を試験栽培し、今後栽培する品種を選定していく予定です。


あと何カ月で収穫できますか︖

(長瀬さん)コーヒー豆が収穫できるまで、播種から3年~5年といわれています。弊社の農園では、2026年冬ごろの初収穫を目標にしています。

栽培方法はどのように学ばれましたか︖

(長瀬さん)コーヒーは主に露地栽培されている植物で、ハウス栽培をしている農家さんが少ないため、情報も多くありません。国内外でコーヒー栽培を研究・栽培指導をされている三本木一夫先生にご指導いただきながら、ハウス栽培の技術を確立するべく、日々データ収集と工夫を行っています。

2.世界的コーヒー豆栽培の先生が栽培指導!初のハウス栽培に挑戦

どのような栽培管理をされていますか?

(三本木さん)カイガラムシやコナカイガラムシの発生に気を付けています。これらの害虫が発生するとそれに伴うスス病も発生してしまうため、未然に防ぐために毎日鏡を使って葉の裏面をチェックしています。見つけ次第ピンセットで捕獲していきます。


適した気候や栽培環境を教えてください。

(三本木さん)コーヒーは熱帯作物と言われていますが、実際には標高の高い山頂で栽培されているため栽培適温は20~25℃です。夏場のハウス内温度が心配でしたが、遮光率30%の寒冷紗を使用し、循環扇を回したり、側窓を開けて換気を行い対策しています。

地面に潅水チューブを這わせて、1日2回、1株あたり300ml潅水しています。花が咲いてきたら一旦水やりを止め、木にストレスを与えて花芽を促進させます。その後一気に水を与えると3週間ほどで花が咲きます。このハウスには潅水設備があるため、自動で潅水できて便利です。

水に液肥を混ぜて栄養も与えています。葉が黄色になったら窒素分を増やすなど、様子を見ながら濃度を調整しています。 また、花が咲き始めたらK(カリウム)の割合を増やすなど、成長段階によってもNPK(窒素・リン酸・カリウム)の割合が変わります。

地植え栽培と鉢植え栽培の違いはありますか?

(三本木さん)コーヒーは根が重要な植物で、主根は60㎝になります。そのため鉢植えで栽培する場合は大きくて深いポットが必要です。地植え栽培の場合、一般的な栽培密度は縦1.5m、横2m間隔です。しかし、矮性の場合はもっとコンパクトに植えることもできるため、定植本数が増やせるかもしれません。今後、成長の様子を見ながら調査していきます。

栽培指導を引き受けられた理由はなんですか?

(三本木さん)彼らが私の住む関西地方まで訪ねてきてくれました。話を聞くと、コーヒー栽培に挑戦したいとの熱意が伝わってきました。私自身施設園芸分野にも興味があったため、これはぜひ参加したいと思い、今年の春から参加しています。ほ場に来れるのは2~3ヶ月に1度ですが、毎日オンラインで苗木の様子を聞いています。


一番大事なことは、長瀬さんが常駐して毎日1本ずつ、木の状態をチェックしてくれていることです。「作物は農夫の足音を聞いて育つ」といわれるほど、毎日足を運んで観察することが大事なのです。

3.スマート農業ハウスとは?コーヒー豆のハウス栽培

栽培面積、ハウスの棟数や高さを教えてください。

(小野さん)間口7.4m×奥行43.5mの4連棟ハウスで、栽培面積は1,500㎡です。栽培本数は最大で344本になります。(※取材時は284本を定植)

スマート農業ハウスについて教えてください。

(小野さん)現在の日本は、少子高齢化が進み続けると共に就農者も減り続けており、就農者の平均年齢は68歳と高く、廃業により年々耕作放棄地が増えている状況です。ミツウロコグループの事業の1つであるLPガスと電力を用いたIoT 機器搭載のスマート農業ハウスの確立・普及拡大により、脱炭素化そして農作業の負荷軽減・高度化による新規就農促進への貢献を目指しています。


当社が考えるスマート農業ハウスは、自動化による作業員の負担削減、LPガスの利用によるCO2排出量の削減、そしてハウス環境最適制御・栽培品質の向上を目指し、コーヒー栽培のアルゴリズム設計・システムへ実装に向けたコーヒーハウス栽培の普及拡大を企図しています。 また、当社では新規就農者・既存のコーヒーハウス栽培農家様に向けた、ハウスの設計・栽培指導から販売開拓・マーケティング支援までのパッケージ販売の取り組みを目指しています。 現在はパッケージ販売を現実化するために、コーヒー苗木、環境のデータ収集・生育観測・分析のうえ、コーヒー栽培ハウスの設計・仕様、環境制御仕様の最適化を進めている段階です。

遠隔監視制御システムとは?

(小野さん)天窓・サイドの開閉、潅水、循環扇、カーテン、暖房機は、ハウス内の温度と時間を設定することによって自動制御できます。クラウドを使っていつでも・どこでも気温・CO2・湿度・日射量を確認することができ、ハウス内環境の状態およびその変化を視覚的に理解することができます。

4.コーヒー豆栽培を始めたきかっけと今後の展望

コーヒー豆栽培を始めたきっかけは何ですか?

(浜井さん)現在、コーヒー豆は赤道周辺の暖かい地域での栽培が多く、日本も99%が輸入に依存しています。世界的な人口増加や新興国の経済発展に伴い、嗜好品であるコーヒーの需要は拡大している一方で、地球温暖化の影響により、特にスペシャリティコーヒーの栽培適地は減少しています。
また、コーヒー産地は中南米やアフリカなど比較的に経済面で劣る国でもあり、低賃金の労働力搾取問題や児童労働により成立している産業としてSDGsの議論でもコーヒーは第一に課題提起される作物です。私たちはおいしいコーヒーを次世代に繋ぐためにも、自社のエネルギーを使用したスマート農業ハウスでスペシャリティコーヒーの国内栽培に挑戦しております。

今回1号農園を設立した群馬県藤岡市は、ミツウロコの創業者である田島達策の出生地でもあります。かつて群馬県の運送業から発展した弊社が全国へ広がったように、スマート農業ハウスやコーヒー栽培も全国・世界へと広げ、皆様に豊かな暮らしをまた違ったカタチでお届けしていきたいです。

今後の展望を教えてください。

(浜井さん)コーヒーの販路は現在開拓中ですが、当グループはエネルギーや電力などの主力事業だけでなく、エンジニアリングやフーズ、ECなどの多様な事業を展開しております。この多様な経営資源を活用し、ハウスの設計からコーヒー製品の開発・販売までを総合して行うことでシナジー効果を生み出せたらと考えています。

将来的にはコーヒー農園の観光化も目指しており、栽培地域の社会振興への貢献や農業活性化、手摘みから1杯のコーヒーが飲めるまでを体験することで、世界中の人々にゆたかさと繋がりを届けていきたいです。
弊社は2年後に創立100年を迎えます。思いを込めて作ったコーヒーを100周年記念として社員のみなさんと収穫し、一緒に飲むことができたらいいなと思ってます。

取材動画

今回取材させていただいたのは…

藤岡コーヒーハウス農園
(運営:株式会社ミツウロコテック)

群馬県藤岡市でコーヒーの中でも高品質な『スペシャリティコーヒー』を栽培中。※2026年冬頃初収穫の予定


ライタープロフィール

【施設園芸ドットコム 編集部】
農家さんへのお役立ち情報を配信中!
新しいイベントの企画やコラム記事の執筆、農家さんや企業様の取材を行っています。みなさんに喜んでいただけるような企画を日々考案しています♪









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