コラム

カミキリムシの種類と特徴~作物を守るためにできる対策~

公開日:2023.07.12

農作物を栽培している方にとって厄介な存在であるカミキリムシ。最近では外来種による被害も確認されていて、果樹を栽培する方にとっては特に注意が必要な状況です。そこで本記事では、農作物に被害を与えるカミキリムシの種類と特徴、駆除方法についてご紹介します。

1.作物を枯らす!カミキリムシの生態

カミキリムシは、コウチュウ目カミキリムシ科に分類される昆虫の総称です。成虫の見た目は長い触角が特徴で、体の色や大きさは種類によって異なります。昆虫好きの方の中では愛好家が非常に多く、人間にとって毒性はありませんが、農業に従事している方にとっては作物を枯らす厄介な存在です。 成虫の活動時期は5~10月とされていて、初夏から秋の間に樹木の中に産卵します。幼虫は生まれてから成虫になるまで幹の中に生息し、その中を食害しながら成長していくのが特徴です。

△カミキリムシが穴を開けたときに出した木のカス(イチジクの木)



木の周辺に「フラス」と呼ばれる木くずのようなものが落ちていたら、カミキリムシに寄生されているかもしれません。幼虫による食害が進むと、枝が枯れたり木の中に空洞ができることも。そのため、強風時の倒木などにも気を付ける必要があります。成虫になると葉や新梢の表皮などを食べますが、種類によって寄生の仕方や好む樹木に違いがあります。

2.農作物を食害するカミキリムシの種類と特徴

カミキリムシとひと口に言っても種類は多く、日本では約750種類が生息していると言われています。ここでは、その中でも農作物に被害を与えるカミキリムシの特徴と生態について見ていきましょう。

クワカミキリ

クワカミキリは、クワやイチジクの木の害虫として知られています。体長は36mm~45mmと大型で、成虫による食害も大きな問題となるのが特徴です。これは「後食」とも言い、羽化したばかりの成虫が交尾や産卵のために樹皮などを食害することを指します。食害された枝は枯死することもあり、大きな被害をもたらすことがあるでしょう。

ゴマダラカミキリ

ゴマダラカミキリは、カンキツ類やクリ、ナシといったさまざまな樹木を食害します。体長は25mm~35mmと中程度の大きさです。クワカミキリと同様に、成虫も枝や葉などを食害をします。 日本では昔からいる在来種ですが、最近では中国が原産の「ツヤハダゴマダラカミキリ」が日本でも見られるようになってきました。

ウスバカミキリ

ウスバカミキリは、北海道から鹿児島まで広く分布しています。体長は30mm~55mmと、カミキリムシの中でも大型な種類です。腐りかけた部分のある木によく発生し、リンゴやナシなどの老木に寄生します。木くずはあまり出さないとされているため、食害に気づきにくいのが特徴です。

クビアカツヤカミキリ

クビアカツヤカミキリは、数年前から日本各地で確認されるようになった特定外来生物です。 モモやサクラ、プラムなどバラ科の樹木に寄生します。見た目は、首の部分が赤くなっているのが特徴で、体長は20mm~40mmと中程度の大きさです。クビアカツヤカミキリが食害した木の周りには、大量のフラスが排出されます。

3.カミキリムシの駆除と対策方法

大切な農作物をカミキリムシから守るためにも、被害を見つけたらすぐに対策を行うことが需要です。ここでは、被害を発見したときの駆除方法や予防対策についても紹介します。

捕殺

農作物の近くにカミキリムシがいるのを見つけたら、必ず捕殺してください。また、木の周辺に木くず(フラス)のようなものが落ちていると、その中にカミキリムシの幼虫がいることがあります。フラスが出ている場所が侵入口なので、針金など細長いものでつついて幼虫を潰しましょう。また、カミキリムシの成虫は地際部に産卵する傾向があります。作物周辺の地際をきれいに除草しておくことで、早期発見が可能になります。




農薬散布

カミキリムシの成虫に対して殺虫効果を持つ薬剤を散布するのもよいでしょう。その場合、エサとなる植物を介して効果が発揮するので、作物全体にまんべんなく薬剤を散布してください。




ネット

予防策としては、成虫を寄せ付けないようにネットを巻くのも効果的です。できるだけ目の細かいネットを使用し、地面とのすき間がないようペグなどで固定します。これは、羽化した成虫を捕獲するのにも役立ちます。すでに木の中に幼虫がいることがわかっている場合は、定期的にネット内に成虫や産卵された形跡がないか確認することも重要です。




伐採

カミキリムシによる食害がひどい場合、伐採することで被害を最小限にできます。伐採した木は放置せずに、焼却して適切な処分をしてください。






今回は、カミキリムシの生態や対策方法について紹介しました。カミキリムシによる農作物被害を防ぐためには、なによりも早期発見・早期対策が大切です。日ごろから作物をよく観察し、被害を最小限に抑えるよう努めましょう。

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▼参考サイト
〇住友化学園芸「防除方法 カミキリムシ (成虫)」
https://www.sc-engei.co.jp/resolution/pestanddisease/photolist/details/1216?showtab=2
〇佐賀県果樹試験場 病害虫研究担当 係長 衞藤 友紀「カンキツのゴマダラカミキリ防除対策」
https://www.pref.saga.lg.jp/kiji00322997/3_22997_241817_up_21bviij2.pdf
〇神戸市「外来種「ツヤハダゴマダラカミキリ」」
https://www.city.kobe.lg.jp/a66324/kurashi/recycle/biodiversity/tsuyahada.html
〇和歌山県「ゴマダラカミキリ」
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/070100/070109/gaiyou/002/byougaichuzukan/kamikiri/kamikiri.html
〇岐阜県森林研究所「ケヤキ造林地におけるクワカミキリ被害について」
https://www.forest.rd.pref.gifu.lg.jp/rd/ikurin/9702gr.html”

ライタープロフィール

かくやさゆり
種苗会社で培った経験と知識を活かしライターとして活動。 家庭菜園とアウトドア遊びが趣味の半農半ライターです。農業を中心にアウトドアをテーマにしたメディアでも執筆中。









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