コラム
公開日:2018.09.26
GAPとは”good agricultural practice(グッド・アグリカルチュラル・プラクティス)”の略で直訳すると「良い農業のやり方」となります。農林水産省では「農業生産工程管理」と訳しており、「農業において、食品安全、環境保全、労働安全の持続可能性を確保するための生産工程管理の取り組み」と説明しています。
イメージとしては製造業で言うところのISO(国際標準規格)のようなものです。このGAPは2020年東京オリンピック・パラリンピックの「持続可能性に配慮した農作物の調達基準」とされており、近年注目を集めています。
GAP認証を取得するということは第三者機関の審査を受けてGAPが正しく行われていることを証明してもらうということです。
いくつかの経営体(法人・個人)が集まって共同で認証を取得する団体認証と個々の経営体で認証を得る個人認証があります。
標準規格としてのGAPはいくつか種類がありますが、これは業界の事情によるものです。世界に複数のGAPがある背景には「国際基準を自国基準とすることができれば貿易上有利に立つことができるため、自国発のGAPを広めたい」という各国の思惑があります。このためGAP(国際基準)の国際間の争いが発生し、世界的に複数のGAPがある状態となっているのです。現状、国内で認証取得する場合、有力なものが下記となります。
「基準の厳しさ(=認証取得の難易度)」が高い順に並べています。認証取得する目的、現在の圃場の栽培基準などから決定すると良いでしょう。
国際的に最も認知されているGAPです。海外輸出する際の資格と考えると良いです。
日本発の国際基準のGAPです。アジア共通のGAPのプラットフォームと位置付けられています。
日本国内で最も主要なGAPです。
農林水産省のガイドラインに基づき各都道府県で作っているGAPです。
消費者は「環境に優しい方法で栽培され、安心安全な農作物」を食べたいと考えています。直売や自社流通されている農事法人にとっては、認証取得が顧客への訴求力強化につながり、売上増加が見込まれます。また、2020年東京オリンピック・パラリンピック前後でBtoBの販路拡大につながる可能性が高いと言えます。
雇用されている農家・農事法人にとって人材確保は頭の痛い問題ですが、労働安全性についてもGAP認証基準の中に含まれていますので、労働環境が良いことをアピールすることで人材確保にもつながります。
認証を得るには認証機関に費用を払う必要があります。
個別認証を受ける場合の審査費用は10万円から55万円程度で別途審査員の旅費やコンサルティング費用などがかかります。団体認証を受ける場合はこの審査費用を頭数で割ることができます。
また、これらの審査費用に加えて、農薬の保管庫などの認証にあたり設備投資が必要な場合があります。ただし、これらの費用に関して国・行政からの補助金もありますので、上手に活用すればかなり低く抑えることができます。
JA経由で販売しているなど販売活動が不要な場合は、取得しても単価や売上高アップにつながらないという農家もいらっしゃいますが、地域の部会などで東京オリンピック・パラリンピックに向けて団体認証を得ている地域もあります。そのような場合は地域全体で単価アップにつながる可能性もあります。
ご自分にとってメリット、デメリットどちらが大きいか一度考えてみてはいかがでしょうか。
ライタープロフィール
【uen01】
1反のハウスで夏秋ミニトマトの養液栽培(不織布ポットを利用した少量培地栽培)を行なっています。
元営農指導員のベテラン農家指導のもと、様々な実証実験を行いながら生産しております。元金融マンというバックグラウンドを生かして、数字に基づいた栽培及び経営を行なっています。