コラム
公開日:2019.04.10
テレビや雑誌でもよく見かける脱サラ農業。ストレス社会から解放されて自由になれる!おいしい野菜が食べられる!自然の空気を吸ってのんびり田舎暮らし!と成功体験に憧れますが、実際問題「失敗したらどうしよう」「本当に上手くいくのかな」と不安になりますよね。
そこで今回は、40代で脱サラを検討している方に向けて、実際に脱サラ就農した方の話をもとに「後悔しないためにするべき10のこと」をご紹介します。
独立してのんびり農業を夢見る方が多いですが、現実的に考えると最も心配なのは収入です。農協の安定基金制度など、収入を安定させる支援制度はありますが、やっぱり不安なのも事実です。まずは農事法人に転職し雇用される形で就農することも検討してみましょう。
実家や親戚が農業を営んでいれば後継として就農することが考えられますが、身内が農業を営んでいなくても、後継者不足の農家さんのところに弟子入りして継ぐという方法もありますので検討しましょう。この方法は設備類の初期費用を抑えられる可能性が高いです。
お若い方はいわゆる50代のアーリーリタイヤを検討するのも良いかもしれません。令和元年に調査された、平成30年新機種運用調査によると、新しく自営農家になった方は約4万人で、年齢別にみると50歳未満が23.1%、50歳以上が76.9%で、多くの方が50代になってから就農されています。
現在の仕事を50代までつづけ十分な貯蓄をすることで、就農した際「貯蓄切り崩し+農業収入」で収入の不安は減少します。60代になれば「年金+農業収入」になるので年金までの期間を生活できる貯蓄があれば収入の問題は解決できる可能性が高まります。焦らずに検討してみましょう。
40代50代では独身か家庭がいるかで大きく異なりますが、いずれにせよとにかく就農前に貯蓄しましょう。資金は多く準備するに越したことはありません。
いくら稼げれば成功か、成功(失敗も)を収入でイメージしておきましょう。理想を追い求めて失敗する農家は多くいます。後悔しないためにも収入がいくら必要なのか、家族のライフプランに基づいて検討しましょう。中高生の子供をお持ちの40代ご夫婦で新規就農した例では、夫が就農、母は看護師(正社員)という組み合わせで収入を安定させていました。
個人事業主も同じですが新規就農者は収入が安定しないので、クレジットカード等の審査に通り辛い傾向にあります。サラリーマンの内に作っておきましょう。
クレジットカードと重複しますが、自動車ローンなど職場や職種で金利が変わるローンは、必要であればサラリーマンの時にしておいた方が徳な場合が多いです。
サラリーマン時代のネットワークは大切です。個人農家として新規就農する場合は個人事業主として独立するということを意味します。脱サラ後も味方になってくれる人間関係を築きましょう。
先輩農家のブログやSNSをフォローし、情報収集行ったり横のつながりを作りましょう。様々な農家の方が栽培のリアルな様子を更新されています。
最近では農業関連の動画を配信している農業系YouTuber(農チューバー)の方が、栽培方法や農機具の操作方法などの動画を配信しているのでぜひチェックしてみて下さい。
農家さんだけでなく、企業や農林水産省、農業大学校などもSNSやYouTubeチャンネルを開設していますので、覗いてみてはいかがでしょうか。
また、情報収集を行うだけではなく、情報発信も行いましょう。ブログやSNSなどのフォロワーはビジネスを生み出す無形資産です。就農前から情報発信をして、自分のファンを作る努力をしましょう。SNS経由で販売している個人農家は多くいます。
「あの作物をこんなライフスタイルで作りたい」と考えている就農者はもっとビジネス視点を持つ必要があります。実際には儲かりやすい作物とそうでない作物があります。儲からない作物を一生懸命作るより儲かる作物を作って、稼げるようになることが先決です。リスクのある作物はそれから取り組んでも遅くは無いでしょう。農業経営に関する本や書籍が多く出版されていますし、ヒントになる記事もありますので確認してみましょう。
以上、「後悔しない10のこと」をご紹介しました。いかがでしたか?
人生一度きり!思い切った挑戦も必要ですが、家計が回らなくなっては元も子もありません。
しっかり準備をして、人生設計を立てた上で“新しい農家人生”を踏み出してみるのも良いかもしれません。
▼参考文献
〇平成30年新規就農者調査,農林水産省 大臣官房統計部
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sinki/attach/pdf/index-4.pdf
ライタープロフィール
【uen01】
1反のハウスで夏秋ミニトマトの養液栽培(不織布ポットを利用した少量培地栽培)を行なっています。
元営農指導員のベテラン農家指導のもと、様々な実証実験を行いながら生産しております。元金融マンというバックグラウンドを生かして、数字に基づいた栽培及び経営を行なっています。