コラム
公開日:2019.05.03
新規就農者や規模拡大を図っている農家にとってどのような農業用ハウスを建てるかは悩ましい問題です。考えるべきポイントがたくさんありすぎてなかなか決められませんよね。今回は農業用ハウスの種類についての概略と選び方の基準についてご紹介します。これからハウスを建てようと思っている方はぜひ参考にしてみてください。
農業用ハウスは建設に利用される骨材によって種類が分けられ、主に「パイプハウス」「耐候性ハウス」「高性能フィルムを用いた高軒高の温室」「ガラス温室」などがあります。下記は主な特徴です。
一般的に価格は下に行くほど高くなります。
※メーカーによって異なることも多いのであくまでイメージを掴むための参考にしてください。
◆骨材:パイプ
◆特徴:設置が簡単でメーカーの種類も豊富。日本全国に広く普及している。法定耐用年数は10年程度。
◆骨材:軽量鉄骨
◆特徴:台風常襲地帯や積雪地帯向に多い。
◆骨材:鉄骨
◆被覆資材:10年程度張替え不要なフィルム(硬質フィルム)などを使用
◆特徴:一般的にはガラス温室よりかは安価だが、耐候性はガラス温室や耐候性ハウスに劣る場合がある。軒高が高いので夏場に有利。
◆骨材:鉄骨
◆被覆資材:ガラス
◆特徴:法定耐用年数は14年ほどだが、30年以上持つ場合もある。
これらの各ハウスにどのような被覆資材を貼るかも重要になります。
被覆資材には次の種類があります。
安価で透明度が高いのが特徴。
農PO(農業用ポリオレフィン系特殊フィルム)など。農ポリや農酢ビを改良したもの。赤外線吸収剤を配合して保温性能を高めている。
農業用フッ素フィルムが有名。耐候性に優れており、10年程張替え不要なものもある。
プラスチック系素材でできたもの。FRP板やFRA板などが挙げられる。
高価だが光の透過性が高く、耐候性などの観点からも被覆資材として優れた特徴がある。
―昨今の流れ―
気象条件が様々なことから、各地域によって普及しているハウスの種類は異なります。
国内ではこれまでパイプハウスが主流でしたが、例えば南九州では台風被害が大きいため、耐候性ハウスの導入が多くなっています。また、大規模経営の増加により、高度な環境管理ができるフェンロー型のハウス等が導入される例も増えてきています。
―ハウス選びの順序―
まず最初に「①栽培している作物から」どの程度の予算をハウス新築にかけられるか検討します。
その次に「②骨材を何にするか」を決める必要があります。骨材が最もハウス価格への影響が大きいからです。予算的にパイプハウスでないと厳しい場面も多いですが、軽量鉄骨も少し利用することで耐候性を高めたハウス等もあります。地域の気象条件(台風が多い・積雪がある等)を踏まえて最低限どの程度の耐候性が必要か慎重に検討します。
最後に「③被覆資材など」を検討しましょう。
※基本的には被覆資材は後からでも変更することができます。
地域の補助金を有効活用しましょう。行政窓口や近所の先輩農家、農協の指導員やハウスメーカーの営業担当などが補助金情報を持っていることがあります。是非、使える補助金がないか積極的に尋ねてみましょう。
また、近所の先輩農家から中古のハウスを譲ってもらえる場合もあります。その場合、ハウスを自分で建てた経験がある方も多いので、先輩農家から建て方を教えてもらい、ある程度は自分で作業をすることでトータルのコストを安くすることができます。
農業用ハウスの種類についての概略と選び方の基準についてご説明しました。地域のハウスメーカーや行政担当者等、色々な角度からの意見を聞いて選ぶようにしましょう。
ライタープロフィール
【uen01】
1反のハウスで夏秋ミニトマトの養液栽培(不織布ポットを利用した少量培地栽培)を行なっています。
元営農指導員のベテラン農家指導のもと、様々な実証実験を行いながら生産しております。元金融マンというバックグラウンドを生かして、数字に基づいた栽培及び経営を行なっています。