コラム
公開日:2019.07.31
東京都渋谷区に本社を構えるネポン株式会社は1948年(昭和23年)に創業してより71年を迎える歴史の長い会社です。工場は神奈川県の厚木市内で、その広い敷地の中では自社でビニールハウスを建て機器の開発実験を行っています。
ネポン株式会社の創立者の福田公雄さんは日立でディーゼルエンジンを開発していた経験を活かし、製氷と給湯を行う熱ポンプ設備、いわゆるヒートポンプを日本で初めて作りました。
そして熱風炉(油焚温風暖房機)やオートカン(温水ボイラ)など様々な熱機器を開発・販売する中にハウスカオンキ(施設園芸用温風暖房機)が誕生したのです。
元々大規模な商業施設や自動車工場内で使われていた暖房機を転用したため、パワフルな暖房力や高湿度の悪環境にも耐える“高品質のハウスカオンキ”として全国農業協同組合連合会(全農)にも認められ、農協を通して全国に発売されました。累計販売台数は30万台以上(※1)。今でも推定15万台以上(※1)が稼働し、ハウスを大切に温めています。「ネポンのハウスカオンキ」を知らない農家さんはいないのではないでしょうか。
当時の社名「熱ポンプ工業」から文字をとって「ネポン」に改名したのがおよそ50年前。
今ではハウスカオンキなどの温風暖房機の他、施設園芸用のヒートポンプ「誰でもヒーポン」や光合成促進装置「グロウエア」、複合環境制御盤といった環境制御機器、農業ICTクラウドサービス「アグリネット」など様々なハウス栽培用環境機器の製造販売、サービスを展開しています。
(※1)ネポン調べ
▲ネポン 社内
今回の企業インタビューは、ネポン株式会社の製造部:脇嶋課長代理、営業部:中原さんに今年9/1発売予定の【新商品】多段サーモヤコン「NT-381HN」の開発経緯や商品の特徴についてお伺いしました。
目次
9/1発売予定の【新商品】環境制御盤 多段サーモヤコンとはどんな商品ですか?
(中原さん)暖房機の変温管理をするサーモで、従来の「4段サーモヤコン」の段数や機能を増やした新商品です。
省エネを考えたときに“生産性を下げずに燃料費を下げる”という技術が変温管理です。さらに最近では、光合成をスムーズに行うための(増収につながる)変温管理が必要になってきたため、4段から大幅に段数を増やしました。
密封されたハウス内で作物が蒸散すると、ハウス内にはどんどん湿度がこもっていきます。特に暖房機が動かず、窓を閉めている秋口や春先は、高湿度による病気が発生しがちです。
それを解消するためにモヤコン(モヤトリコントローラー)で暖房機を少しだけ運転するといった簡易的な除湿をします。
「変温管理の4段サーモ」と「除湿を行うモヤコン」、温度ムラをなくすため「送風を行うファンコン(ファンコントローラー)」が1つになったものが「4段サーモヤコン」です。そして段数が4段から多段になったのが今回の「多段サーモヤコン」なのです。
商品をリニューアルされた経緯はなんですか?
(脇嶋さん)九州地区で多くの農家さんより「変温管理は8段が主流になってきたので、4段サーモヤコンを8段にしてほしい」とご要望を頂いたのがリニューアルのきっかけです。
(中原さん)近年、光合成促進や環境制御の話が九州を中心に色々な地域で多く出ています。とてもレベルの高い話になっていて、「環境制御をやっている人とやっていない人」が明確に分かれており、同時に制御機器のレベルも高くなっていました。
そこで、「みんなが持っている暖房機で温度管理だけではなく除湿もできたらいいよね」、「温度ムラもなくせたらいいよね」と各地で話が進み、農家さんたちからも「除湿も空気循環もできる従来のサーモヤコンをより効果的に使いたい」との声が大きくなってきたため、今回のリニューアルに踏み切りました。価格もかなりお手頃なので、暖房機で手軽に始められる“環境制御の第一歩”になればと思っています。
-なるほど、農家さんの声から誕生した商品なのですね。
(脇嶋さん)そうですね。
(中原さん)あとは農家さんの声を聞いた営業が「こんな機能があったほうがいいのではないか?」とアイデアを出してくれます。
▲開発経緯を語る脇嶋課長代理(右)
リニューアルによって追加された機能はありますか?
(中原さん)変温管理については段数がたくさん増えたことです。8段+α温度管理ができます。今までの4段サーモヤコンは朝の早朝加温、昼の光合成促進、夕方の転流促進、夜の呼吸抑制といったように4つのステージにわけた「カクカクした温度管理」をしていました。例えば段と段の間を10℃から15℃に上げようとするとガクンと急変化になってしまう。そこで今回、段の間をじわじわっとゆるやかに上げるの“変温移行”という機能が追加になり、実質8段以上の管理ができるため「多段サーモヤコン」になりました。
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1番おすすめの機能はなんですか?
<雨の日設定という機能>がおすすめです。モヤコンは朝方と夕方の温度が変わるときに、温度が高まるまで“バーナーを15分運転して、様子を見てまた15分運転”といった動きをしますが、今まではこれを朝夕の決められた時間帯にやるしかありませんでした。
そこで、設定された時間帯以外にも、特に雨の日など湿度が高くなる日は「雨の日ボタン」を押すと“すぐに除湿運転をする“ことができるようにしました。
Q. 多段サーモヤコンはネポンのカオンキにしかつなげませんか?
A. 他社の暖房機にもつなげます。しかし、ネポンのカオンキをつなげる場合は付属のコードで簡単につなげますが、他社の暖房機へつなぐ場合は 別途圧着作業が必要になります。
Q. 温度センサーの推奨される設置位置はありますか?
A. 2本の室内のセンサーは、温度ムラをなくす目的もあるため、“ハウスの中央と側面”など温度の高いところと低いところに設置してください。その温度差で動くのがファンコンです。
Q. 設定は難しいですか?
A. あらかじめ設定をしてから出荷するため、実際の操作範囲は少ないです。もちろん作物によって変わるので、購入いただいた農家さんに個別でヒアリングをしながら調整していきます。
暖房機といったらネポンさんは有名ですが、長年愛され続けている理由はなんですか?
(中原さん)メンテナンスを大事にしている点だと思います。どんな場所にも迅速に修理に駆けつけるなど、地道にやってきたことを評価頂けたと考えています。やはり暖房機が壊れるのは冬。雪の中でも駆けつけて、それが信用につながっていると思います。また、ネポンの暖房機はもともと工場向けの暖房機だったため、耐久性に優れています。ビニールハウスのように高湿度の環境にも耐えられるように、壊れやすいところは改善しながら、修理や掃除がしやすいといったメンテナンスの手間も考え、改良をしてきました。
-推奨する“暖房機のメンテナンスのタイミング”はいつですか?
(中原さん)メーカーとしてはシーズン前とシーズン後の年に2回を推奨しています。少なくても年に1回はやってほしいですね。耐久性が良いので「やらなくても壊れない」と思われがちですが、安全に使っていただく他、メンテナンスをしないと経年劣化により熱効率が下がっていきます。熱効率が下がると燃費が悪くなり経費もかかってしまうため、そういった面でも是非メンテナンスはしてほしいですね。“定期点検”といって、点検と掃除のセットプランがあるので、ネポンで対応することも可能です。※地域によって異なります。
会社としての今後の展望はありますか?
(中原さん)最近では国連が“2030年までに達成するべき行動計画”としてSDGs(エスデージーズ)などありますが、化石燃料もいつかは尽きるため、ハウスカオンキも一生売れ続けるわけではありません。
農家さんに貢献するためには、こういった制御盤で、農家さんの所得が上がっていくようなお手伝いがしたいと思っています。
私たちは頂いた農家さんの声を基に商品作りをしています。より手軽に簡単な環境制御から始めてもらい、収益につなげてもらう。そして次のステップとして統合制御などより高度な環境制御をやってもらって、また収益が上がる。そういった農業の好循環を作っていきたいですね。
●環境制御盤 多段サーモヤコン(型式:NT-381HN)定価¥128,000(予定)
2019/9/1発売予定
夏場は油配管の事故が多いので注意してください。
暑さで油が膨張し、その圧力によって配管が壊れたり油が洩れたりします。(※配管の弱いところから熱膨張します。)最近では逃がし管がついていますが、古いハウスの場合付いていないケースもあります。
今回取材させていただいたのは…
ネポン株式会社 営業部
中原 雄太さん
「農業は本当におもしろい!」と好奇心に動かされるまま「興味をもったら勉強をする」モットーに現場の意見集約や展示会の運営、カタログチラシをデザイン・作成など様々な業務をこなし、若い力で会社を支えている。海外の営業も担当する中原さんはその好奇心と行動力からウズベキスタン大使と交流も作ってしまうほど。チャレンジ精神の強い勉強家だ。
趣味:2人の子供を育てること
施設園芸.com編集部より
ライタープロフィール
【施設園芸ドットコム 編集部】
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